1-12 勇者
「落ち着きました?」
「うん...ごめん」
「俺の胸で良ければいつでも貸しますよ。マレクにだけ特別です」
「ふふ」
ひとしきり笑った後、少し真剣な面持ちになるモルテ。
「刺客から聞き出しました。俺達を襲ったのは魔族でした。そしてその親玉にいるのはハイスという魔族です」
「ハイス?」
「彼のことは知っています。彼の後ろに誰がいるのかもね」
「それって...」
「恐らく魔神です」
「!!!雪崩を起こしたのは僕の力を危険視して排除しようとしたってこと?」
「恐らくは」
「じゃあ僕がここにいるのもバレてるってことだよね...」
「...それについては心当たりがあります。大丈夫。必ず守ります」
「う、うん...あと僕を狙うならわざわざ雪崩を起こす必要ってあったのかな?」
「これも推察になってしまうのですが...魔神は勇者の力がどれだけ凄まじいか知ってたんだと思います。広範囲の災害レベルでなければ倒せないと踏んだのでしょう」
「それでこんなみんなを巻き込む行為を...」
拳を握りしめる。
「モルテ。僕決めたよ」
覚悟を決めた様子のマレクを見てモルテの表情が曇る。
(やめろ。やめてくれ)
「僕がやらないといけないと思うんだ」
(その言葉を聞いたら、俺は――)
「魔神を止めよう」
「っ...」
「このまま僕のせいで他の人まで大変な目に遭うのは嫌だ。僕もみんなの力になりたい」
(ああ...あなたはどれだけアイツに似て――)
「マレク。1つだけ約束してください。無茶だけはしないこと。勇者の力を持っているからと言って勇者になる必要はないんです。頑張らなくてもいいんです。逃げてもいいんです。自分の気持ちにだけは素直になってください」
「うん。大丈夫。ありがとう」
(俺もいい加減過去から進まなくては...マレクの横に並び立つために)
モルテも覚悟を決める。前へと進むために。




