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プリン裁判

作者: せおぽん

4時限目が始まる頃から、皆がソワソワしている。今日の給食には、プリンが出るからだ。


担任の私でも、ソワソワするのだから彼らの期待は相当たるものだろう。


プリンの食缶を運ぶ給食当番もどこか誇らしげで、まるで貴重な財宝を運んでいるようだ。


配膳の列に並ぶ生徒たちにプリン担当の給食当番はまるで宝物を渡すかのようにプリンを渡す。ところが、生徒の列が短くなり出すとプリン担当の彼の顔はくもりだし、悲痛な表情になりだす。


最後尾に並んでいた私を前に、彼は泣きそうな顔で私に訴えた。「先生のプリンが足りません」


「あ、先生は大丈夫だよ」こんな事もあるだろうと、私は答えた。あとで給食室に問い合わせれば良いことだから。


「駄目です」学級委員長の青葉さんが声を上げた。「きっと、誰かがプリンを盗ったんです」しまった。正義感の強い彼女の事を忘れてた。彼女は正義感が強いのは良いのだけれど、思い込みも強い。さらに彼女は最近の子にしては頑固すぎる。


「おいおい、また青葉かよ」と給食帽を被った山瀬くん。

「なによ。給食当番のあなたが犯人なんじゃないの」

「馬っ鹿じゃねーの。お前は成績は良いけど、頭悪いよな。プリンなんか盗るもんか。俺は、お前ん家みたいな貧乏じゃねーし」

青葉さんの大きい瞳に、みるみる涙が溢れ出す。


山瀬くんの言葉に、クラス中がヒートアップする。

「山瀬くんひどいよ。青葉さんに謝んなよ」

「青葉こそ、山瀬を泥棒って言っただろ。謝れよ」

こうなってしまったら、女子対男子のクラス戦争の勃発である。


私は私の未熟さを嘆いた。


その時、ガラリと教室のドアが開いて、給食婦の方がピョコリと顔を出す。


「ここ、6年3組? ごめんね。おばちゃんクラスを間違えちゃって。プリン1個足りなかったでしょ?」

「あ、わざわざすいません」と言って私はプリンを受け取る。彼女は救済の天使だ。


クラスの喧騒が止んだ。青葉さんはグスグス泣いていて、山瀬くんはバツが悪そうに何やらブツブツ言っている。


少しして、山瀬くんが大きな声をあげた。「先生が悪いと思う人は、手を挙げてー」


生徒皆が、一斉に手を挙げた。青葉は遅れて小さく手を挙げた。


私は生徒全員の顔を見廻してから、「先生が悪いよな」と言って、私も手を挙げた。

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