第7話 興味なし
歌舞伎町 Q.E.D.
18:00開店
昼間は存在感を消していたその店に、ふいに光が宿った。
赤い絨毯の階段に柔らかい灯りが流れ落ちる。ルナの体験入店が始まった
「本日から入りました。【月子】と申します。
お隣いいですか?」
「あー…うん。いいよ」
ネクタイをゆるめた中年客は、目の下にクマを抱えたままグラスを傾ける。
スーツは仕立ての良いものだが、座り方は投げやり。
「どちらから?」
「言わないとダメ?」
目線はスマホの画面から外れない。
興味も、期待も、まるでない。
ルナは言葉を失った。
「…お客様隣いいですか?」
そう声をかけたのはこの店のNo.3春だった。
黒服の佐川が店長にいう
「店長まさか体験入店の子にNo.3を当てたんですか?」
「今日出勤のトップと客の奪い合いをさせる。
勝てたら採用。負けたら不採用。
これがQ.E.D.のルールだ」
店長は静かに笑った。
「…さぁ"頭"しかない新人の嬢ちゃん
No.3相手にどうする」
春が隣に座った瞬間、空気が変わった。
その笑顔だけで、男の視線が揺れる。
ルナの心臓が 跳ねた。
——これが、彼女の初戦。
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