表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/25

第23話 ルナの配信

夏から渡されたノートPCとマイクを机に並べながら、ルナはため息を吐いた。


「……結局、質を伸ばすにも“母数”がいる」


彼女はキーボードを叩き、配信アプリを立ち上げる。

画面にはカメラ越しの自分。けれど化粧もドレスもつけず、ただシンプルなシャツ姿。


「キャバ嬢×マーケティング論」

タイトルを入力し、配信開始のボタンを押した。


最初は、コメント欄が真っ白だった。

ただ自分の声だけがマイクに拾われ、冷たい蛍光灯の下に響く。


「売上は 顔でも愛嬌でもありません。

キャバクラだって普通のお店と同じ。

お客が何人来て、ひとりがどれくらい頼んで、どれくらいの頻度で来てくれるか。

掛け算すれば答えが出る。

ラーメン屋も、カフェも、結局この式で動いてる。

違うのは、売ってる“商品”がシャンパンかラーメンかってだけ。」


ぽつり、とコメントが流れた。


〈……なにこれ〉

〈キャバ嬢が数式語ってる?〉


ルナは構わず続ける。

数字の話、統計学の話、そして「夜の街は実験場だ」という言葉。


〈営業で応用できそう〉

〈マーケやってるけど普通に面白い〉

〈もっと続けて〉


少しずつコメントが増えていった。


黒服の佐川がスマホを覗き込みながら言った。

「月子ちゃん、いいね全然増えてねぇな。外した?」


ルナは手を止めずに答えた。

「……見てるのは、いいねじゃないです」


「は?」


「アクセス頻度です」

ルナは画面をスクロールしながら指で示した。

「このアカウントは二回。こっちは四回。

 “数字が増えない”ように見えて、同じ人が何度も来てる」


黒服が眉を上げる。

「リピーターってことか」


「はい。名前を覚えてもらってる証拠です。

 水面下では、ちゃんと成功してます」


黒服は煙草を咥え、少し笑った。

「……地味に怖ぇな。数字の見方が違うわ」


数は多くない。だが、明らかに“濃い”層が集まりつつある。


その後、客入りが変わった

「月子さんいますか?」

「…ええ、私ですが」

「配信見ました。」

「私の配信を?」

「はい、俺…営業やってるんですけど

月子さんのマーケティング参考にしたら売上が上がって。

少しですがお礼代わりに来ました。なんていうか…その。

いつもありがとうございます。」

「…こちらこそ、ありがとうございます」

「すげ。早速、顧客にしたな。」

佐川が横槍を入れてくる

「いえ、たまたまです。あくまで成功の一つ。

私はこれからも粛々と配信を続けます」



ルナは閉店後、コメントをチェックする。

「…なにこれ」

その中で、一つのユーザーネームが目についた。


〈ルナさんは特別だ。誰よりも頭がいい。

あなたの言葉は真実だ。〉


「……熱量が異様に高い。」

他の視聴者が「面白い」と書く中で、そのコメントだけは「崇拝」に近かった。


【現在ステータス】

資金:232万円

残り:768万円/270日


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ