第13話 No.4の配信
─赤い絨毯の上に、スポットライトのような光が降り注いでいた。
夏の配信は、開店直後の店を一瞬で舞台に変える。
「突拍子もないように見えるけど、
声の大きさ、目線、服の色。カメラワークを意識してる...」
そんなルナを横目に夏はカメラを向けた。
「今日はね〜、新人ちゃんを紹介しちゃうよ!」
カメラがこちらを向いた瞬間、ルナの心臓が跳ねた。
「この子が月子ちゃんでーす!」
画面の向こうで、文字が一斉に流れる。
〈誰?〉
〈普通すぎ〉
〈水商売でこの顔はないだろw〉
笑い混じりのコメントが雪崩のように流れ込む。
それはSNSのただの文字列のはずなのに、刃物みたいに胸に突き刺さった。
控えの壁際、黒服たちが小声で囁いた。
「……また始まったな、夏の新人潰し」
「前の子、あれで辞めたろ。月子はどうするかね」
夏は笑顔を崩さない。
「ねえ、みんな見世物小屋って知ってる?
ほら、私の子役時代のドラマで出てきたやつ〜。あの女優さんとそっくり〜」
〈でた天然発言〉
〈草〉
〈天才の切り口〉
〈夏ちゃんおばか可愛い〉
「月子ちゃん何か一言頂戴」
笑い声が画面の向こうで爆ぜる。
ルナの手が小さく震えた。
──それでも、目を逸らさなかった。
「……私は、一年以内に1000万稼ぐためにここに来ました」
一拍の沈黙。
次の瞬間、コメント欄が荒れる。
〈無理ゲーだろ〉
〈逆に応援したい〉
〈1000万稼げたら伝説〉
〈いやでもアリかも〉
夏の笑顔がわずかに固まった。
カメラの死角で、ルナは静かに息を吐いた。
「はいどうも〜!ゲテモノ枠…じゃなくて新人枠の月子ちゃんでした〜!」
夏はそのままルナに背をつけて配信を続ける。
(……データは取れた。この反応は使える)
【現在ステータス】
資金:12万円
残り:988万円/355日




