幸か不幸かおかしな事件
人によっては不快に思うかもしれません、ご了承ください
夜の闇も深く、誰もいない筈の学校の教室に、一人の少女の姿があった。
年齢は十代前半、特に目立った容姿でもなく、普段からクラスに埋没していそう。
だが――彼女はふ、ふふ……、ふはははははと笑い始めると、徐に制服のポッケから禍々しいオーラを放つ飴を取り出し、口に入れた。
「あ、あ゛あーーーーーッ‼︎」
夜の校舎に、この世の終わりかの様な絶叫が響く。
少女は苦しみだし、彼女の肌はぶくぶくと膨らみ出した。
やがて、茶色と紫と深緑と――様々な絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたかの様なドス黒いマーブル模様が服ごと彼女を包み、次の瞬間、チョコにキャンディーにマカロンに……――お菓子の身体をした怪人が現れた。
毎度毎度、怪人が現れるたびにどこからか現れる『世界の平和を マモルンジャー』も、夜は休業中だ。
いかにもな姿をした怪人を倒す者は、ここにはいない。どうなる、学校……っ!
宇宙の果ての何処かで、人々に恐怖を思い出させ、絶望に叩き落とすをモットーとした『株式会社・地球シンリャク』の幹部が「やったれーっ!」と叫んだ。
それに呼応……したのかは分からないが、お菓子怪人は教室中に『ものをお菓子にするビーム』を撃ちまくった。
翌日。とある月の十四日。
朝一番に教室に辿り着いた男子は驚いた。
生まれてから家族からしかチョコを貰えなかった自分の机に……チョコが入っている……!
何故か包装されることなく剥き出しで入っているが――そのせいで教科書を突っ込んで潰しかけたが――机の中は埃や汚れ一つなく綺麗なので問題はない。
その後、続々と登校してきた男子らは歓喜した。
「え、マジか……天国……え、俺死んだの?」
「ドーナツ! ドーナツって『あなたのことが好き』って意味らしいぜ!」
「うっま! ……なんでカップケーキだけちゃんとカップに入ってるんだろうな?」
……おそらくカップに入れておかないとそれがカップケーキだと判断できないからでは……。
毎年女子からチョコを貰えることを期待して、お菓子の意味を調べていた哀れな男子の努力も報われた。
一部グミが入っていて嘆いた人もいたが……。
(いや誰も誰が作って置いたかわからないモノをホイホイ食べるなよ……)
お菓子の正体が、怪人のビームを受ける前は机に入っていた消しカスや練り消しだったということを知るのは、いつの間にか登校していた目立たない女子と昨夜一部始終を監視カメラで見ていた警備員のオッチャンだけである……。
警備員のオッチャン、呆気に取られただろうなぁ……。あと、地球侵略出来る! と思っていただろう幹部も……。
感想とお星様どちらかだけでも募集中。