闇の王と魔法少女の宿命!?そしてひと握りの勇気
あらすじ:学校で「最弱魔法使い」と呼ばれるオズワルドは、ひょんなことから最強の魔法少女・グリンディアの従者となりグリンディアはその後、オズワルドの家に居候することに。そんな二人の日常には、毎日のように少し奇妙な出来事が舞い込んでくるのだった。
グリンディアとオズワルドは、祖母ピピンの家に戻ってきた。
村の広場でピピンの誤解から始まった婚礼の儀式は、宴会に姿を変え、笑いと喜びのうちに幕を閉じた。ピピンの家のリビングには、宴会後の賑わいとは一転した静寂が広がり、外では夕方の風が木々を揺らしていた。
ピピンが深く腰掛け、切り出した。彼女の瞳は厳しくも優しい光を湛えている。
「その魔物たちには心当たりがある。話せば長くなるがのう……その前に、グリンディアの強大な魔力パワーの秘密を今こそ明かさねばなるまい。」
ピピンの言葉に、オズワルドの眉がぴくりと動いた。
「え?ワシの魔力に秘密なんてあったの?」
グリンディアは首を傾げながらも、どこか興味津々だ。
「グリンディアの絶大な魔力は、確か150万くらいじゃったっけ?」
ピピンがさらりと言うと、グリンディアはあっさりと答えた。
「確かそのくらいじゃな。」
そのやり取りに、オズワルドはむすっとした顔をしていた。
(僕が魔力値500未満で悩んでるっていうのに、この二人はどれだけ高次元な話をしてるんだか…)
ピピンは椅子を軋ませながら語り続ける。
「グリンディアのその魔力はワシやお前の両親から受け継がれたものではない。」
「な…なんじゃと…?」
グリンディアは驚きに目を見開いた。
「そもそも人類の中で魔力がかなり高いといわれたワシだって、せいぜい18万くらいじゃし、ワシの娘であるお主の母親も大体同じくらいじゃった。」
「じゃあワシの魔力は…一体…?」
ピピンは深いため息をついた。
「グリンディア…お主の大魔力と、お主の両親がいなくなってしまった事には深い関わりがあるんじゃ…」
「な…なんじゃと…?」
重い空気の中、ピピンは語り始めた。
「お主の両親は魔法の研究に熱心じゃった。中でも召喚魔法について深い造詣があったんじゃ。」
その言葉に、オズワルドは初めてグリンディアと出会った時の光景を思い出した。川原で見た黒い手の魔物。その時の恐怖がよみがえる。
「だが…召喚魔法の研究を続けた結果、お主がまだ赤子の頃に二人は偶然にもとんでもないものを召喚してしまった。」
「とんでもないものとは…?」
グリンディアの声はかすかに震えていた。
「ワシにも正体は分からん。だがあれはこの世のものではなかった…。ワシはあれを“闇の王”と呼んでおる。」
「闇の王…?」
ピピンはうなずいた。
「その闇の王は…グリンディア…お主の身体を依り代としてこの世界に顕現しようとしたのじゃ。」
「な…な…な…なんじゃ…と…?」
グリンディアは青ざめた顔で震えている。
「お主の両親とワシは、その闇の王の出現を阻止しようとしたが、歯が立たぬ相手じゃった。」
グリンディアは声を震わせながら言った。
「お祖母様ですら敵わないなんて…」
ピピンは苦しげに目を閉じ、静かに語り始めた。
「だが…お前の両親はお前を守るために、命がけで闇の王の召喚を止めたのじゃ…」
その言葉を聞いた瞬間、グリンディアの目には涙が溢れ出した。
「お母さん…お父さん…」
ピピンは静かに続けた。
「その結果、お主の両親は闇の王の召喚を止める事には成功したが…闇の王に連れていかれてしまったのじゃ。」
グリンディアの嗚咽が部屋に響く。
「ううう…お母さん…お父さんが…」彼女は膝を抱え込み、涙をこぼし続けた。
ピピンはゆっくりと彼女の肩に手を置き、優しく撫でた。
「そして…闇の王の強大な魔力を身に宿したのがグリンディア、お主じゃ。」
その言葉に、グリンディアは震えながら顔を上げた。
「そんな事があったなんて…ワシ…」
ピピンは彼女をそっと抱き寄せるように撫でながら言った。
「今まで秘密にしていてすまなかったのう…事が事だけに、お主が大きくなってから伝えようと思ったのじゃ…」
ピピンは視線をオズワルドに向ける。
「そして今、話せる理由がもう一つある。それは君じゃ、オズワルド君。」
唐突に名前を呼ばれ、オズワルドは目を丸くした。
「ぼ、僕…ですか?」
ピピンは微笑みながら頷いた。
「君のようにグリンディアを心から支えてくれる人間が現れるのを待っておったのじゃ。」
驚きで言葉を失うオズワルドを見つめながら、グリンディアはぽつりと呟いた。
「オズ…」
ピピンは真剣な表情に戻り、声を低くして言った。
「お前たちの前に現れた魔物…それはきっと闇の王の手下じゃろう。長い間動きがなかったが、闇の王はこの世界に現れるための依り代として、今もなおグリンディアを狙っているのかもしれんのう。」
その言葉に、オズワルドの頭に一つの記憶がよみがえった。
「そうか…あの魔物が言っていた『あのお方』とは…闇の王の事だったんですね…」
ピピンは頷き、オズワルドの手を握りしめた。
「君の手を握った時にわかった。君には特別な力がある。どうかグリンディアを守ってやってくれ。」
その言葉に、オズワルドは目を見開いた。
「僕に特別な力…?」
心の中で自問する。
(最弱の魔法使いと呼ばれる僕に、そんな力なんか本当にあるんだろうか…)
しかし、彼の心に迷いは一切なかった。手をぎゅっと握りしめ、決意のこもった声で言った。
「わ…わかりました!僕になんか…一体なにができるか分かりませんが…僕はグリンディア様の従者です。僕の全てをかけてグリンディア様をお守りします!」
ピピンとケスミーは満足そうに頷き、涙に濡れた目でグリンディアはオズワルドに抱きついた。
「オ…オズ…ワシは…ワシは…」
彼女の体をそっと抱きしめ返しながら、オズワルドは静かに言った。
「大丈夫です。僕は…ずっとグリンディア様の従者です…僕があなたを必ずお守りします。」
グリンディアの涙は、少しずつ安堵の表情へと変わっていった。
物語は、新たな決意とともに進んでいく。




