これが漢のデートだ!不器用な情熱!フレアの奮闘!
あらすじ:学校で「最弱魔法使い」と呼ばれるオズワルドは、ひょんなことから最強の魔法少女・グリンディアの従者となりグリンディアはその後、オズワルドの家に居候することに。そんな二人の日常には、毎日のように少し奇妙で楽しい出来事が舞い込んでくるのだった。
秋の陽射しが穏やかに降り注ぐ川辺で、フレアはせっせと食材を準備していた。川で釣り上げた新鮮な魚、森で見つけた栗やキノコが綺麗に並べられている。
「さあ、食べてくれよ!」とフレアが威勢よく勧める。
「そんなには食べられないわよ。でもこの魚、本当に美味しいわ」
とエルフィールは感謝を込めて微笑む。
「採れたてだからな。頑張った甲斐があったぜ!」とフレアは少し得意げに返す。
「うん、本当にありがとう。すごく素敵な時間だわ」
最初はどうなるかと不安だったエルフィールだが、フレアの真っ直ぐな努力を目の当たりにしていると、自然と心がほぐれていく。
「よし、次は見せたいものがあるんだ!」とフレアは急に立ち上がった。
「見せたいもの?」と首を傾げながらついて行くエルフィール。
草原を歩くと、フレアは口笛を吹いた。それに応じるように、遠くから巨大なトラのような動物がゆっくりと現れた。その姿を見てエルフィールは目を丸くする。
「あれ…何?すごく怖そうだけど…」
フレアは得意げに説明を始めた。
「あれは一角ライガーだ。俺たち狩猟一家では、女性にカッコいいところを見せるため、あいつと戦って勝利し、その角を捧げるのが習わしなんだ!」
「え、ええっ?それって本当に必要なことなの?勝ったことはあるの?」
「ない!けど今日こそは勝つから見ててくれ!」
と笑顔で叫ぶフレア。
「やめて!絶対危ないって!」
と止める間もなく、フレアは一角ライガーに向かって突進していった。
「うおおおお!!」
「ガゥッ!」
戦いは一瞬だった。フレアは見事に吹っ飛ばされ、地面に転がる。立ち上がった彼の顔は焦りでいっぱいだ。
「無理だ…逃げるぞ!」と叫ぶフレア。
「ちょっと!何やってるのよ!」
と困惑しながらも、エルフィールは必死で後を追う。
なんとか一角ライガーを撒いた二人は、木陰で息を整えた。
「本当に何考えてるのよ!」と怒り心頭のエルフィール。
「ごめん…角を渡せなかった」としょんぼりするフレア。
「いらないわよそんなもの!それにしても、どうしてわざわざあんな危険なことを…」
「エルフィールが喜ぶと思って…」
「喜ぶわけないじゃない!」
フレアは頭を掻きながら「そっか…ごめん」と小さく呟いた。
ふっとため息をついたエルフィール。「もっと普通でいいのよ?」
「普通か…わかった!」と力強く返事をするフレアだったが――。
その後、フレアは懲りずにエルフィールを驚かせようと奮闘する。
谷でいきなりバンジージャンプを披露し、火の輪をくぐるパフォーマンスを始めた。
しかし、そのたびにエルフィールは困惑するばかり。
そんな二人の様子を、草陰からこっそり見守る影があった。
「な、なんじゃこのデートは…」とグリンディアが額に手を当てて呟く。
「グリンディア様…覗き見なんてやめましょうよ…」と隣に立つオズワルドが小声で諫める。
「ワシがアドバイスした手前、見届けねばならんじゃろ!」
「そ…そんなもんですか?というかそもそもどうやってこの場所を見つけたんですか?」
「フレアの髪を一本引き抜いておいて魔力探知で追ってきたんじゃ」
「…たまに怖いです、グリンディア様…」
夕暮れが迫る頃、エルフィールは気まずそうに笑いながら口を開いた。
「ははは…えっと、そろそろ帰るわね」
「そっか…じゃあ最後に、プレゼントがあるんだ」
とフレアが鞄から取り出したのは、七色に輝く石だった。
「綺麗…これは?」と目を輝かせるエルフィール。
「虹色石って言って、ここら辺の洞窟でたまに採れるんだ。エルフィールが喜ぶと思って探してきた」
「本当に綺麗…ありがとう、大切にするわ」
少し照れたように頭を掻くフレア。
「今日はデートしてくれてありがとう」
「…なんだか凄かったけど…記憶には残ったわ」
「へへへ…そうか。…あのさ、俺…エルフィールのことが本当に好きなんだ」
突然の告白にエルフィールの頬が赤く染まる。
「えっ、なによ急に…」
「だからだから…これからも、デートしてくれたら…嬉しいな」
肝心な場面で奥手になるフレアを見て、エルフィールはくすっと笑った。
「考えておくわ。でも妙な動物と戦ったりするのは絶対やめてね!」
フレアの不器用な情熱に、エルフィールは少しだけ心が温かくなるのを感じた。
その様子を見守るグリンディアとオズワルド。
「ふむ…ズレてはおるが、フレアの熱い想いだけは素敵じゃ♪」
「はぁ…そういうものなんですね」とオズワルドはため息をついた。
「そうなの! オズも勉強しないとダメ!」
「は、はい!」
そうして草原に秋の夜風が吹き抜ける中、フレアとエルフィールの距離はほんの少しだけ近づいたのだった。
その夜、魔法学園フーナバのリュート校長は、執務室で頭を抱えていた。
机の上には学園対抗戦の資料が山のように積み重なり、疲労の色を隠せない彼の表情がそれに追い打ちをかけている。
「くっそー! あのグリンディアって子が対抗戦に出てきたら、我が学園に勝ち目なんてないじゃないか!」
机を叩きながら吐き捨てるように言うリュート校長。しかし、叫んだからといって状況が好転するわけでもなく、苛立ちが募るばかりだった。
彼はふと、事前に取り決められた対戦ルール書を手に取り、無心でページをめくり始めた。どこかに策がないかと目を走らせるうちに、とある一文に目が留まった。
「こ…これだ!」
思わず身を乗り出すリュート校長。その顔には、勝利への一筋の光を見出したような興奮が浮かんでいた。




