グリンディア ~エピソードゼロ~
これは、グリンディアがオズワルドと出会う前の話。
――マイハーマ村は、古の魔王討伐に参加した伝説の魔法使いの子孫、クリティン・ピピンが治める地。魔法の頂きを目指す者たちが修行に訪れる、秘境の村だ。季節は春、村には新しい命が芽吹き、穏やかな風が吹いていた。
「最近、村の様子が変なんじゃよね」
ピピンは弟子のケスミーに話しかける。家の窓からは柔らかい陽光が差し込み、春の暖かさが広がっている。ケスミーはその言葉に耳を傾けながら応じた。
「変?どういうことでしょうか?」
「お主も気づいておるじゃろう?グリンディアの魔力が強すぎて、村人たちが妙にもてはやしておる。それが、最近ちと過熱しすぎておるんじゃ」
ケスミーが耳を澄ますと、外から村人たちの賑やかな声が聞こえてくる。外には、村人たちが集まり、グリンディアを囲んで何かを差し出していた。
「確かに…外が騒がしいですね」
「グリンディア様!美味しい果実が取れました。どうぞお召し上がりください!」
「グリンディア様!私は焼き菓子を用意しました!」
「うむ、ありがとうな♪」
グリンディアは笑顔を浮かべ、村人たちは口々に「グリンディア様!ありがたき幸せ!」と叫び、彼女を崇め奉っている。
「こりゃどうにもならん…。ケスミーや、魔法学校の資料を集めてくれんか?」
「かしこまりました。」
――ピピンの家に戻ったグリンディアは、渡された書類を見て驚きの声を上げた。
「えー!ワシに魔法学校に入れって?なんでじゃあ!」
「だって、このまま村におったら、お主は駄目な人間になってしまいそうじゃから」
「駄目な人間になんてならん!」
グリンディアはソファーに寝転び、先ほど村人から貰った果物やお菓子をぼりぼり食べながら反論する。ピピンは軽くため息をつき、話を続けた。
「いや、もうすでにその兆候が…」
ピピンのため息が部屋に響き、グリンディアは少し恥ずかしそうに顔を伏せた。
「お主の魔力はワシからみても途方のないものじゃ。魔法の知識も、ワシが教えられることはもうほとんどないじゃろう」
「でも、最高の魔法使いと名高いお祖母様に習うことがなかったら、魔法学校で学ぶことなんてないじゃろ?」
グリンディアの反論にピピンは微笑を浮かべ、優しく答える。
「魔法を学ぶんじゃない。世間を知ってほしいんじゃ」
「世間を?」
「そうじゃ。この村は狭すぎるし、魔法に偏りすぎておる。もっと広い世界を見てくるんじゃ。」
「広い世界を…?」
グリンディアは考え込んで答えた。
「確かに…広い世界を見てみたい。でも、お祖母様と離れるのは寂しいなあ」
ピピンは微笑んで答える。
「なあに、移動ゲートを作ればすぐ戻ってこれるじゃろ。それにお主が本気でホウキを飛ばせば、どこにおっても30分あれば戻れるわい。」
「ふふ、それもそうじゃな」
「淋しくなったらいつでも戻ってくれば良い。お主はワシの可愛い孫娘じゃからな」
ピピンはグリンディアをそっと抱きしめた。
「お祖母様…」
グリンディアは微笑み、村を出る決意を固めた。
広い世界へ飛び出し、やがてオズワルドとの出会いが待っていた。




