学校クラス最強の男!?ジェリコとの魔法勝負!
エルフィールは、静かな図書室にオズワルドを呼び出していた。窓から差し込む柔らかな光が、彼女の厳しい表情を際立たせている。
「話って…なんだい?」オズワルドが少し緊張した様子で問いかけた。
エルフィールは少しため息をついてから、冷静に言った。
「オズワルド、アナタがジェリコに魔法力勝負で勝てるわけがないでしょ?彼はクラス1の魔力値を持っているんだから。」
オズワルドはその言葉に反応せず、しばらく黙り込んでいた。エルフィールはその沈黙に焦りを感じ、さらに言葉を続けた。
「だいたい、いくらグリンディアさんが高名な魔法使いの一族だからって、なんでも言うことをはいはい聞いてアナタにプライドはないの?」
すると、オズワルドは静かに顔を上げ、淡々と答えた。
「プライドなんて…あるわけないじゃないか…」
「!」エルフィールは驚き、彼を見つめた。
オズワルドは続けた。「魔力値が最低の僕が、この学校でプライドなんて持てるわけがないよ。」
エルフィールは息を飲み、言葉を失った。
「それに、グリンディア様は…変わった方だけど、優しいし、初めて僕に学校で居場所を作ってくれたんだ。」
「居場所…?」エルフィールはその言葉に戸惑いを隠せなかった。
「だから、ここで引き下がるつもりはないよ。」
そう言い残し、オズワルドは図書室を出て行った。エルフィールはその背中を、複雑な表情で見送った。
――放課後、魔法闘技場には生徒たちの緊張感が漂っていた。クラスメートたちは息を呑んで見守り、グリンディアもその中に座っていた。
そして、マシュ先生が審判として立っていたが、彼女は不安そうな表情を浮かべていた。
魔法力勝負のルールはシンプルで、どちらかが「降参」するか、魔法闘技場から落ちたら負け。
また、もしどちらかがダメージを受けても回復できるように、回復魔法が得意なエルフィールと他の数名の生徒が待機して準備をしていた。
「では魔法力勝負をこれより開始します。怪我しないように、どちらも無理はしないでくださいね?」
マシュ先生は二人に声をかけた。
オズワルドとジェリコは向かい合っていた。ジェリコは余裕の表情でオズワルドに挑発的に言った。
「オズワルド、よくここに来たな。でも、勝つのは俺だ!」
オズワルドは何も言わず、ただジェリコを静かに見つめていた。
「さあ、終わらせてやる!」ジェリコは両手に炎を集めながら、自信満々に笑った。
「俺の本気の炎で一発で吹き飛べ!」
ジェリコがファイヤー魔法を繰り出そうとした瞬間、彼の体に何かが当たった。
「いてええええ!」ジェリコは突然の痛みに叫び声を上げた。
「な、なにが…?」マシュ先生は驚き、状況を把握しようと目を泳がせたが、混乱した様子だった。
「なんだこれ…足に何かがが当たったぞ!」
ジェリコは戸惑い、足元を見つめた。そこには、冷たい氷の塊が転がっていた。
オズワルドは無言で次々に氷の塊をジェリコに投げつけた。
「いたああああ!何をしてるんだ、お前!氷を投げてるのか?これは魔法勝負だぞ!」
ジェリコは混乱しながら叫んだ。
――前々日、河原でグリンディアとオズワルドは特訓をしていた。
「オズ、氷魔法はできるか?」グリンディアが尋ねた。
「はい、一応できますが、僕の魔力ではせいぜい果物くらいの大きさの氷を作るのが限界です…。」
オズワルドは申し訳なさそうに答えた。
「それで十分じゃ。氷を作ってみろ。」
オズワルドは氷の塊を作り出した。それを見たグリンディアはにやりと笑い、
「その氷をオズのデタラメな身体能力で思いっきり投げつけるのじゃ!」と指示した。
――オズワルドはさらに氷をジェリコに向かって投げつけた。ジェリコは防戦一方だった。
「ひ、ひどい!これは反則じゃないのか!」ジェリコは必死にマシュ先生に助けを求めた。
マシュ先生は、焦った様子で手元のルールブックをめくりながら言った。
「えっと…これは…問題ないみたいですね。魔法で作ったものを投げつけることは禁止されていないみたいです。」
「なんだって!?」ジェリコは叫びながら、さらに氷を投げつけられた。
「グッ…いたい…いたすぎる…」
観客席から、グリンディアの高らかな笑い声が響いた。
「うふふ♪これぞワシがオズに授けた秘策じゃ!」
ジェリコは痛がりながら、防御する暇すらなく氷の攻撃にさらされた。
「もう、もう無理だ…」彼はついに膝をついて叫んだ。
「降参だ、許してくれ…」
「えっと…ジェリコ君の降参により、勝者はオズワルド君です!」
マシュ先生は勝負の結果を宣言した。
観客席のクラスメートたちはしばらく呆気にとられ、静まり返った。
誰もがジェリコの圧倒的な勝利を予想していたのだ。それがまさか、オズワルドの勝利で終わるとは誰も思っていなかったのだ。
――勝負が終わり、オズワルドとグリンディアは一緒に帰り道を歩いていた。
グリンディアは満面の笑みを浮かべ、オズワルドの背中を軽く叩いた。
「オズ、よくやったな!ワシの秘策が役に立ったじゃろ?」
オズワルドは少し照れくさそうに笑いながら答えた。
「はい…グリンディア様のおかげです。本当に、ありがとうございました。」
二人が校舎から校庭に差し掛かろうとしたその時、隣のクラスの生徒がオズワルドに声をかけてきた。
「あの…オズワルド君!」
オズワルドは驚いて振り返った。「え?君は…隣のクラスの?」
その生徒は少し恥ずかしそうにしながらも、真剣な眼差しで言った。
「さっきの勝負すごかったよ。僕は君のこと見てて勇気をもらったんだ。僕も魔力値が低いけど君みたいに頑張らないとって思ったんだ。本当にありがとう。それと勝利おめでとう。」
オズワルドは不意を突かれたように驚いたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「あ、ありがとう。そんな風に言ってもらえて嬉しいよ…」
その生徒は小さく頷いて、オズワルドと別れた。
――夕暮れの光が校門を照らし、オズワルドとグリンディアは並んで歩いていた。
「オズ…良かったなー。」グリンディアが優しく語りかけると、オズワルドは立ち止まり、ぎこちなく微笑んだ。だが、その目には涙が溢れそうになっていた。
「僕…グリンディア様のおかげで少し変われた気がします…今まで何もできないと思っていた僕でも、何かできるんだって…本当に…ありがとうございます…」
彼の声は次第に震え、涙が頬を伝って落ちていった。
オズワルドはついに堪えきれず、膝から崩れ落ちた。
「ううう…」嗚咽を漏らしながら、彼はその場に泣き崩れた。
そんなオズワルドを見て、最初はうろたえていたグリンディアだったが、彼をそっと抱き寄せた。
彼女は優しく彼の背中に手を回し、頭を撫でながら言った。
「オズ…泣かないで大丈夫。あのね…オズは本当に優しくて良い奴だと思う。オズが作ってくれるお菓子は、とっても美味しいよ♪だからそんな気持ちにならないで…」
彼女は、優しく続けた。
「それにオズにはワシがいるじゃないか。もしオズをいじめる奴がいたら、このワシが懲らしめてやるから、何も心配いらないぞ♪」
グリンディアの言葉に、オズワルドは泣きながらも少し笑みを浮かべた。
その笑顔は、彼の心の中で大きな支えを感じた瞬間だった。グリンディアの温かさに包まれ、彼は少しずつ落ち着きを取り戻していった。
グリンディアは、心の中で考えた。
(ワシは超天才だから、学校で学ぶことなんて何もないと思っていたけど…きっと学ぶことはたくさんあるんだな…)
そんな二人の姿を、エルフィールは遠くから静かに見守っていた。
彼女はオズワルドに一言賛辞を伝えるために近づこうとしたが、今はそのタイミングではないと感じ、足を止めた。
そして、そっと離れた場所から、オズワルドがグリンディアに抱かれる光景を見つめていた。




