冥界からの新たなる挑戦者!?不死身の男バロル!
グリンディアはクリスマスが過ぎると、生まれ故郷のマイハーマ村に戻り、年越しを過ごした。
村では祖母ピピンと身の回りの出来事について様々な話をしたという。ピピンも冥界について詳しい知識を持ち合わせてはいなかったが、古文書を片っ端から読み漁り、何か手掛かりを得ようとしていた。
それから一ヶ月、何事もなく過ぎ去り、もしかするとこのまま平穏が続くのではないかと思われた。
だが、その時は突然に訪れた。
いつものようにオズワルドとグリンディアは魔法学園ギョウダァから二人で家に帰る途中、川原に差し掛かった。
「オズーーー!今日はどんなお菓子を作ってくれるの?」
グリンディアが明るく尋ねる。
「そうですねーーー…今日はクルミクッキーにでもしましょうか。」
オズワルドが微笑みながら応じると、グリンディアは目を輝かせた。
「わぁ!楽しみ!」
しかし、その瞬間、グリンディアの表情が一変した。
「んっ…?」
川原には見慣れぬ者がいた。火を起こし、肉を焼きながら食事を取っているその男は、青白い肌に重厚な黒い鎧を纏い、ただならぬ威圧感を放っていた。圧倒的な魔力が周囲に漂い、空気が張り詰める。
「オズ、少し下がっていろ。」
グリンディアは警戒しながら男に視線を固定し、近づいた。
その男も二人に気づき、声をかけてきた。
「おっ…やっと来たか。はじめましてだな。俺の名はバロル。不死身のバロルって呼ばれてる。」
グリンディアは鋭い目つきで問いかける。
「お主は…”闇の者”だな?」
「闇の者?なんだ、それは。」
「こっちが勝手に呼んでるだけじゃったな…お主、冥界から来た者か?」
バロルは肩をすくめて答えた。
「まあ、そんなとこだ。」
「因果が無いと…冥界からは出られんはずじゃが…?」
「以前、誰かがここに異次元ゲートを作ったんだろ。それを無理やりこじ開けたらしい。俺は詳しく知らねえがな。」
グリンディアは歯噛みしながら呟いた。
「くっそ…そんなことが出来たのか…」
バロルは周囲を見渡しながら呑気に言った。
「それにしても…こっちの世界は面白いな。食い物は美味いし、見たことないものがたくさんある。もうこっちに住もうかな。」
その発言に、オズワルドは恐る恐る口を開いた。
「あの…普通に話せるようだから聞きますけど…もうこんなことは止めてもらえませんか?」
バロルはニヤリと笑った。
「それは出来ない相談だ。俺には”王”の命令があるからな。」
グリンディアは真剣な表情で続けた。
「その王とやらは…何が狙いでワシを連れて行こうとしてるんじゃ?」
「知らん。」
「知らんのかい!」
「王の命令は絶対なんだよ。だから、お嬢ちゃん、悪いが一緒に来てもらうぜ。」
「絶対に嫌じゃ!お主も他の者と同様に排除する。」
「そうでなくちゃな。力づくで行かせてもらう。」
バロルが魔力を解放すると、空気が震え、周囲にただならぬ気配が立ち込めた。
グリンディアは指を丸め覗き込むようにして、バロルの魔力値を測った。
(コ…コイツ…)
「オズ…隠れていろ。こ…こいつ…魔力値が50万くらいある…ワシ以外にここまで魔力値のある奴は初めてじゃ…」
「ご…50万ですって…?」
「落ち着け!ワシは3倍の150万じゃ。油断しなきゃ負けん。オズ、ワシは本気で戦うから、離れて隠れていてくれ。」
「わ…わかりました…僕では足手まといになりますものね…」
オズワルドは少し離れて木陰に隠れた。話を聞いていたバロルは怪訝そうな顔をしていた。
「はっ?150万だと?」
グリンディアが魔力を込めると、周囲の大気が揺れ始めた。
「くっ…本当に150万あるな!俺の3倍か。さすがに王から力をもらってるだけはあるな。」
「わかったじゃろ!お前じゃワシには勝てん!とっとと帰れ!」
「でも、勝負はやってみなくちゃわからねえだろ。」
(はっ…?コイツ、びびってない!?)
「俺は自分より魔力値の高い奴と戦うのは初めてなんでな。全力でやるぞ。」
「こっちも全力で行かせてもらうぞ!!」
二人は睨み合い、ついにグリンディアが先手を取った。
「ビッグファイヤーボール!」
巨大な炎の球がバロルに直撃する。
「ぐ…ぐああああああ!」
オズワルドは木陰から顔を覗かせ、叫んだ。
「やった…!グリンディア様の勝ちだ!」
しかし、バロルは大ダメージながらも立ち上がり、笑みを浮かべた。
「くっそ…いてえな。だが、俺は不死身のバロルだ。これしきで倒れるわけねえ。」
グリンディアの表情が険しくなる。
「なんじゃと!?…こいつ、本当に”不死身”か!」
不死身のバロル—その名が示す通り、彼は魔力が尽きぬ限り何度でも復活する能力を持ち、冥界において敗北を知らぬ存在だった。
戦いの火蓋が切って落とされたばかりだった。




