「わんこケーキ」でクリスマス!?スイーツが繋ぐ聖夜の魔法
クリスマス前日のオズワルドの家。
部屋の隅では、居候のグリンディアが分厚い本を広げ、楽しそうにページをめくっていた。
その足元では、黒い毛並みのペット犬ケルベロスがしっぽを振りながらじゃれついている。
「へ~♪ クリスマスってこんな感じなんじゃな~♪ 素敵♪」
グリンディアは頬杖をつきながら本に目を落とし、何度もページを戻しては微笑んだ。
「ワッフ♪」
ケルベロスが楽しげに声をあげると、グリンディアはその頭を撫でた。
「ケルベロスもクリスマス楽しみ?」
「ワッフ♪」
「うふふ♪ いい子じゃな~♪」
暖かな部屋の中で、クリスマスへの期待が膨らんでいく。
次の日の朝。朝焼けの道を、オズワルドとグリンディアは学校へと向かっていた。
「んっ?」
グリンディアがオズワルドの背負う大きな荷物に目を留めた。
「オズの荷物、多いなあ。」
「ははは。グリンディア様に初めてのクリスマスを楽しんでいただこうと思って、色々用意してるんです♪」
オズワルドが微笑みながら答えると、グリンディアは一瞬目を丸くし、次に照れたように目を逸らした。
「そ…そっかあ…それにしても多いね。」
「小麦粉も運んでるので重いんですよ♪」
「こ…小麦粉?」
グリンディアはオズワルドが何を企んでいるのか気になりながらも、そのまま学校に到着した。
昼休み、グリンディアは仲良しのスカーレットと食堂でランチをとっていた。
しかし、目の前の食事にはあまり手をつけず、何かを考え込んでいる。
「グリンディア、どうしたの? 珍しく悩んでるじゃない。」
スカーレットが心配そうに声をかけると、グリンディアはフォークを止め、ため息をついた。
「オズがクリスマスの準備をしてるらしいんじゃけど…なんか変なんじゃ。」
「何が変なのよ?」
グリンディアは困った顔で説明を続けた。
「小麦粉や沢山の食材を持ってきてて…」
「ふふ♪ グリンディアがケーキをたくさん食べられるように、用意してくれたんじゃない?」
「はっ…! 言われてみると…確かに!」
グリンディアは突然顔を輝かせ、初めてのデートでオズワルドが美味しい食べ物を探して連れ歩いてくれたことを思い出した。
「初デートの時に沢山美味しい物を食べさせてくれたんじゃけど…今回もそのパターンか…?」
「いいじゃない♪ 食いしん坊のグリンディアにピッタリね♪」
しかし、グリンディアは真剣な表情を浮かべる。
「クリスマスについて本で読んだけど、もっと本みたいな感じがいいんじゃー!」
「もう、贅沢ねえ…」
グリンディアは腕を組んで考え込んだ。
「ひょっとして…わんこ蕎麦みたいに止まる事なく、ケーキをワシに次々と出し続ける…『わんこケーキクリスマス』か?」
「なによ、わんこケーキクリスマスって…」
スカーレットは呆れ顔で首を振る。
グリンディアは放課後、オズワルドとともに所属するスイーツ部の部室に足を運んだ。木製の扉を開けると甘い香りがふんわりと漂い、彼女は思わず目を細めた。
「オズー♪ きたよー!」
明るい声で呼びかけると、部室の奥からオズワルドが満面の笑みで顔を覗かせた。
「グリンディア様♪ お待ちしていました。」
テーブルの上には色とりどりのケーキやクッキー、それにティーポットとカップがずらりと並べられている。その光景にグリンディアは目を輝かせながらも、少し困惑気味に眉を寄せた。
「オ…オズ!こんなにたくさん用意してくれて嬉しいけど、ワシは普通のクリスマスで良いよ! わんこケーキクリスマスじゃなくて!」
「へっ…?わんこケーキクリスマスって何ですか?」
オズワルドがきょとんとした表情で尋ね返す。その時だった。
ガラガラ、と扉が開く音が響く。
「ここね。」
入ってきたのは長い黒髪を揺らすリシアだった。彼女に続いてレオンが肩をすくめながら入室する。
「リシア姉ちゃん?」
「お待ちしていました、リシアさん。」
オズワルドが微笑んで迎えると、レオンがにやりと笑った。
「オズワルド、ありがとうな♪ おかげでこうしてリシアと…いや、美味しいケーキを楽しみに来たぜ!」
「もう…」リシアがレオンを軽く睨む。
さらに賑やかな声が続く。
「よーー! オズワルド、きたぜ!」
部室に飛び込んできたのはフレアだった。その後ろからは、微笑みを浮かべたエルフィールも続く。
「お誘いありがとう、オズワルド。」
さらに、優雅な笑い声が部屋を満たした。
「おほほ♪ お呼ばれに預かりますわ。」
金髪を巻き上げたスカーレットと、その従者マーカスも姿を現した。
「フレア?エルフィール?スカーレット姉ちゃんまで!? どうして?」
驚きっぱなしのグリンディアに、スカーレットが申し訳なさそうに告げる。
「ごめんね、グリンディア。実はオズワルド君がサプライズにしたいって口止めされてたの。」
「じゃあ…この大量の食材を持ち込んでたのもそのため?」
オズワルドが誇らしげに頷いた。
「はい。みんなで楽しいクリスマスのお茶会ができるように準備しておきました♪」
グリンディアは目を丸くしたあと、ふっと笑顔を見せた。
「なんだー! 先に言ってよ! ワシてっきり、わんこケーキクリスマスかと思ってたんじゃ…!」
スカーレットが思わず吹き出した。
「だから何よ、わんこケーキクリスマスって…!」
オズワルドは微笑みながらケーキを切り分け、皆に配り始めた。
「さあ、ケーキが焼けました♪ 皆さん、どうぞ召し上がってください。お茶もありますよ。」
「はーい♪」
賑やかな声が響く中、クリスマスのお茶会が始まった。色とりどりのスイーツと香り高いお茶に囲まれて、笑顔が絶えないひとときだった。
お茶会の後、オズワルドとグリンディアは彼の実家に戻った。
「ただいまー♪」
「ただいま!」
迎えたのは、にこやかな表情のオズワルドの両親だった。
「おかえり、オズワルド、グリンディアちゃん。さあ、クリスマスのお祝いを始めましょう。」
父親も朗らかに笑う。
「ご馳走がたくさんあるよ。」
「わっふ!」
ケルベロスがしっぽを振って駆け寄ってきた。
「わーー! 楽しみーーー!」
クリスマスの暖かな雰囲気に包まれたその時間は、グリンディアにとってかけがえのないものだった。
(家族と過ごすクリスマスって素敵じゃな♪)
彼女はふと隣にいるオズワルドを見つめ、頬を赤く染めた。
(そしていつか…オズと…2人でクリスマスを一緒に…♪)
メリークリスマス♪
(クリスマスって…楽しそうね…うふふ♪)
しかし、そんな幸福な時間の裏側では、闇の世界が不気味な動きを見せていた。
冥界と呼ばれる場所。不気味な古城の一室に三人の男女が集まっている。
紫色の長い髪と深紅の瞳を持つ美しい女性、リリスが微笑む。
「新たな因果は中々発見できないけど、代わりに面白いものを見つけたわ♪」
黒髪の男が目を細める。
「ほう、なんだ?」
「異次元ゲートの残留波よ。これがあれば、地上に行くのもそう難しくないわ♪」
巨漢の男が豪快に笑う。
「ふははは。次は俺の出番だな。」
不気味な空気が部屋を満たし、闇の者たちは再び動き出す。




