闇のささやき!?美少女委員長がみた本当の未来
夜の闇が薄れ、朝が訪れる。だがエルフィールの一日は悪夢から始まった。
「はっ…夢…?」
エルフィールは荒い呼吸を整えながら目を覚ます。額にはびっしりと汗が滲み、シーツが肌に張り付いていた。
「なんて夢を見たんだろう…」
自分の呟きに答える者はなく、窓の外から聞こえる小鳥のさえずりが、嫌に現実感を強調していた。
その数時間後、学園の教室ではいつものように賑やかな声が響いていた。
オズワルドはグリンディアの隣にぴったりと付き従い、昨日と同じように彼女の警護にあたっている。
「オズ…もう大丈夫だから…そんなぴったりくっつかないで…ワシ恥ずかしい…」
グリンディアの頬がうっすらと赤く染まる。
「油断大敵ですよ。グリンディア様。何が起きるかわかりませんし、引き続きしっかり警護させていただきます。」
オズワルドは真剣な表情で頷き、少しも離れる気配を見せない。
「うん…わかった…」
グリンディアはため息をつきながら、小さな声で応じる。
そのやり取りを目にしたエルフィールの胸中には、抑えきれない感情が湧き起こった。嫉妬。妬み。彼女自身もそれが明確にわかるほどだった。
(オズワルド…私との付き合いの方が長いのに…それに…学校で困っている時にはいつだって助けてきたつもりなのに…)
心の中で抑えきれない思いが渦巻く。
その瞬間、昨夜の悪夢の中で聞いた声が脳裏によぎる。
(そうよ。グリンディアさえいなければ、オズワルドと結ばれるのはアナタだったのよ。)
エルフィールはハッとして周囲を見回す。だが誰もそんな言葉を口にしていない。
(くっ…アナタは何者…?)
その問いに答えるかのように再び声が響く。
(私はアナタに力を貸しに来たの。ただ簡単な話よ…グリンディアがどこかへ行ってしまえばいいの。)
エルフィールは声にならない叫びを飲み込むように目を伏せた。その時、親友のレイチェルが肩を軽く叩く。
「エルフィール…!?どうしたの?ボーっとしちゃって。」
「あれ…ご…ごめん…なんでもない…」
レイチェルは首を傾げたが、深追いはしなかった。
「それにしても、最近のグリンディアちゃんとオズワルド、本当にすごいわね。あの二人って、なんだか特別な感じがするよね。」
「そうね…」
エルフィールの声は力なく、上の空だった。
「もうフレア君にしておきなよ♪ イケメンだし魔力もすごいし、彼でいいじゃん♪」
「そ…そうね…」
レイチェルの無邪気な笑顔が余計にエルフィールの胸を締めつけた。
「エルフィールにはオズワルドなんかよりもっと釣り合う相手がいるわ♪」
「うるさいなあ、もう!!!」
突然の怒声に教室が凍りついた。エルフィールは自分の声に驚き、顔を赤らめながら俯く。
「…ごめん…私…今日なんかおかしい…一人にして…」
「わかった…。ごめんね。」
レイチェルは戸惑いながらもその場を離れた。
(私…どうかしてる…。)
エルフィールは唇を噛み締め、うつむいた。
下校時、エルフィールは家から迎えに来た馬車に揺られていた。
木々の間から差し込む夕日が車内を暖かく照らしているが、エルフィールの心は晴れないままだった。
「私、最低だ…八つ当たりなんかして…」
「何を言ってるの?エルフィール。アナタは悪くないわ。」
その声に驚いて隣を見ると、いつの間にか謎の美女が座っていた。流れるような紫の髪に冷たい微笑を浮かべた彼女は、目の前にいるはずなのに現実感がない。
「アナタ…昨日から…何者なの…?」
「私が誰かなんてどうでもいいじゃない…私はアナタの力になりに来たのよ。」
彼女が静かに手を伸ばし、エルフィールの頭を撫でる。すると突如として、エルフィールの意識がどこかへ飛ばされるような感覚に襲われた。
映像が脳内に浮かび上がる――背中に黒い羽を生やしたオズワルドが、空中で何者かと対峙している。
エルフィールの声が聞こえる。
「オズワルド…私が…アナタの…魔王の奥さんにでも何でもなってあげるわよ…!」
「エルフィール…本当に…?」
「本当よ!だから負けないで…勝って一緒に帰ろう…!?」
映像が終わり、エルフィールの意識は元の馬車に戻る。
「な…なによこれ…!?」
隣の美女は冷ややかに笑う。
「何を見たのかしら?今見せたものは未来の可能性の一つ。グリンディアが現れなかったら、きっとそれが本来の未来だったのよ。」
「本来の未来…?」
「そう。グリンディアさえいなければ、それがきっとアナタの未来だったの。簡単な話よ。グリンディアがいなくなればいいの。」
エルフィールの心に暗い影が落ち始めた。




