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第6話 缶コーヒーを

「芸術って言えば、沙友理さんに改めてお願いしたいことがあるんだけど?」


「え〜、まだ何か有るのかな?芸術って言われたら断れないじゃないのよ!」


「うん、もし良ければなんだけど、沙友理さんに僕のためにヌードモデルしてほしいんだ。」


「いいけど、また何で?」


「えっ、良いの?!」


「何でか教えてくれればね!」


「ん〜、マンネリかな?刺激が欲しいんだ。」


「……………………由香里ちゃんに飽きたって事かな?」


そう、幼馴染で腐れ縁の由香里には定期的にヌードモデルを頼んで写真撮影したりデッサン描いていたんだけど、被写体としてマンネリになったように感じてきたんだよね。

あえて言えば、『恥じらい』を感じられなくなったというか?

日々成長する身体を感じられるのは嬉しかったんだけどね。


「飽きたって事じゃないんだけど、沙友理さんの身体を知ったら、由香里では物足りないって思っちゃったんだ。」


「由香里ちゃんとは、どこまでの『関係』なのかな?」


「プロポーズして、断られて、それなのに恋愛相談している内に初体験の練習相手に指名されて、由香里に彼氏が出来てからはセフレだね。」


「へぇ〜、プロポーズかぁ。いつ、プロポーズしたのかな?」


「兄貴と沙友理さんが婚約した直後ですね。アッサリと、躊躇なく断られました。」


「そっかぁ〜、あの激しい行為は、由香里ちゃんと『体験』している事なのかな?」


「由香里とは、もっと激しいですよ。モデルしてもらう条件の一つになってるしね。彼氏では、物足りないらしいですから。」


「『さっきのアレ』より激しいんだ………由香里ちゃんのその『物足りない』って気持ち、よ〜くわかるわ〜?」


「沙友理さんも、兄貴では物足りなかったんですね?僕は、由香里しか『知らなかった』からよくわからないんですけど。

女の人って、恋愛と肉体関係は、別物なんですかね?」


「うん、そうよ。克也君、この次はもっと激しくお願いね!」


「はいっ!じゃ、皆んな待ちくたびれてると思うから、名残惜しいけど帰りますね。」


「うん、連絡するから、またお願いね。」


沙友理さんに引き寄せられて唇を重ねると、ふと、何かに気がついたように、


「克也君、チョット待ってて!」


「?なんですか?」


台所に向かってすぐに帰ってきた沙友理さんの手には、缶ボトルの無糖コーヒーが。


「これ、今飲んでいって!」


「はい、これでいいですか?」


キャップを開けて、すぐに飲み干して、


「ところで、何で缶コーヒーなんですか?」


「シャワー浴びても、うがいして歯を磨いても、お口の中に『私の匂い』が残っていたから、それを誤魔化す為だよ〜?」


「そうなんですね、ありがとうございます。でも、判るものなんですかね?」


「今の、由香里ちゃんの話を聞いたからね。彼女の性格を考えれば、この後彼女と『濃厚接触』したら、絶対に気がつくわよ。もし追求されたら、私の胸を借りて悔し泣きしてずぶ濡れになったからシャワー使わせて貰ったって言えば誤魔化せるわよ。」


……………………誤魔化さなくても、良いような気がするんだけど?

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