第17話 約束
知恵さんと、明日のデートの予定を打ち合わせする。
自分に好意を持ってくれている異性と、会う約束をするのがこんなに楽しいと思えるなんて、自分でも意外だった。
「克也さん、楽しそうですね?」
「『楽しそう』ではなく、楽しいですよ?」
「………………………………………何故、疑問形なのですか?」
「………………………………………言いながら、チョットだけ、迷ってしまったからです。」
言ってから、失敗したかなと気が付いて。
「………………………………………由香里さん、ですか?」
正直に答えるかどうか迷ったけど、誤魔化すのは不誠実だろうと思って首を振って肯定しておく。
「………………………………………今だけ、私だけの事を、考えていただけないでしょうか?」
「承知しました。他に何処か、行ってみたい所はありますか?」
「初めてなのですから、お洒落なホテルの予約をお願いします。ラブホテルでの初体験は、嫌ですよ!」
………………………………………それって、デートの約束とは言わないよね。
「………………………………………それ以外で、リクエストをお願いしても?」
「むしろ、それだけでお願いしたいですね。この機会を逃すと、もう二度と無いような予感がしますので。」
そんな事は、無いと言い切れないのが、辛いところだな。
迷いを断ち切るために、少し冷めたコーヒーを一口。
知恵さんも、同じくカフェオレを口に含んでから、さりげなくトンデモ発言が飛び出す。
「それに、私、明日なら『安全日』ですから、好きなようにしていただいて良いですよ。」
「………………………………………安全日は、絶対では無いですよ。もっと自身を大事にしたほうが」
「『アフターピル』も用意しましたので、絶対ではありませんが心配ご無用ですよ。なんなら、これらからでも覚悟は出来てますから、いかがですか?」
ニッコリと笑顔を振りまくかのように僕に向ける知恵さん。
返事をしあぐねていると、二人のスマホがブルブルと同時に震えて。
「ん〜、残念、詰めきれなかったわね。後で時間をとってくださいますか。」
「ええ、喜んで。」
来た時と同じように、二人で手を取り合って会計を済ませ階段を上って。
こらからどんな話が飛び出すのか、由香里にとって悪い話でない事を祈りながら、アトリエのドアを開けた。