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第2の世界

今までとは違う世界線での梨々奈と早苗の様子を描いています。


《第2の世界》


「この世界は1つしかないと思いがちでしょう。勿論、生きていられるのは1つの世界だけです。しかし、もう1つの世界線があります。全く同じではない似た世界。」

黒板になにか書きながら一生懸命説明してるのは出張に来た大学の先生。

担任は1番後ろから眺めてるだけ。

早苗奏斗の視線には加藤梨々奈が写っている

キーンコーンカーンコーン

結局加藤だけ見て終わった。

「おいおい、奏斗。また加藤さんの事見てたのかよ。」

「あー小鳥遊。別に見てねーよ」

授業が終わって寄ってきた小鳥遊とじゃれている間に梨々奈はずっと席をたち、鞄を持って廊下に出ていった。

帰ったのかもしれない。

「加藤さんってなんか幽霊みたいだよね」

「声聞いたことある人いる?」

「男子としか話さないんじゃない?」

加藤がいなくなった瞬間、クラスの女子が悪口をコソコソ言ってるのが耳に入った。

「おいおい、女子って怖いな」

小鳥遊はわざとらしく身震いをしながらつぶやいた。

「でも小鳥遊は女子と仲いいだろ」

「まぁ、イケメンの宿命ってやつ?」

「おまえな」

呆れてため息が出てきた。

確かに小鳥遊は学年で1、2を争うイケメンだ。

小鳥遊と話している間も梨々奈のことが気になった僕はせわしなく帰る準備をした。

「あ、じゃー僕は梨々奈を追いかけてくるわ。またな、小鳥遊」

「おぅ」

小鳥遊に挨拶を交わしてからダッシュで廊下を駆け抜けた。

サッカー部のエースの僕の足にかかれば普通に歩く女子に追いつけるわけで。

「梨々奈待てよ」

駅に着きそうな梨々奈を発見したのだ。距離的にすると後20mだが、改札に入るのを阻止するため叫ぶように呼んだ。

もし電車に乗られたら梨々奈と話すチャンスを失うかもしれない。そう考えたら今までうっとうしかった学校から駅の距離に感謝すら感じた。

突然名前を呼ばれた梨々奈は体をびくっと反応させながら恐る恐る振り向いた。

僕を見た途端目を大きく見開いた。

「あ、早苗くん。どうしたの?」

「一緒に帰ろうと思って」

「ごめんね。先帰ろうとして。ありがとう。」

特に約束はしていないが、何も言わなかった罪悪感からなのか梨々奈は申し訳なさそうな顔をした。

しかしそれはすぐに満面の笑みに変わった。

待ちわびていたはずの笑顔だったはずなのに違和感しか覚えなかった。

思い返せば昔はもっと純粋に笑っていたのに。

梨々奈が変わってしまったのは去年。高1の時から。

正確に言うと中3の時から徐々に変わっていってしまった。当時はそれにも気づかなかったのだが、もし早く気づいてあげられれば何か変わっていたのかな。

そんな公開を持ちながら梨々奈の横顔を眺めていた。

昔の梨々奈は明るくて常に笑っていてクラスの中心にたっていた。

早苗のことも『奏斗』って呼んでいたし、よく一緒に帰ってた。

今の小鳥遊のように男女ともに囲まれて告られることも少なくなかった。

もう昔の加藤に戻ることは無いのではないか。そんな不安もこみあげてくる。

「ねぇ、梨々奈。学校楽しい?」

ふと、口からこぼれてしまった。

「うん、楽しいよ」

加藤はまた満面の笑みで答えてた。

しかし、僕はその回答が偽りということも気づいていたのかもしえない。

自己保身のために気づかないようにしていたのかもしれない。

高校に進学してから梨々奈が笑顔を見せるのは2人で帰る時だけ。

学校では一切笑わなくもなっていった。

女子の間では幽霊と称されている。根暗な梨々奈は格好の悪口の対象になってしまっている。

それを女子に言い返す勇気もなくて見て見ぬふりをしている僕もある意味共犯者だけど。

次に続ける言葉も見つけられず、なんでもいいから話そうと試みた。

「そっか。もう下の名前で呼んでくれないの?」

急になんでこんな質問をしだしたのか早苗自身にも分からない。

だが、このタイミングで聞かなければいけないと思った。

エビデンスはない。直感だ。

「奏斗。って呼ぶの久しぶりだね。なんか昔を思い出す。」

そう言ってほんわか笑った。

理由に関しては濁らされた気がするが、それよりも名前で呼んでくれたことが嬉しかった。

そして僕に向けられたその笑顔は作り笑顔では無い。久しぶりに本物の笑顔を見た気がする。

「そっちの方がいいよ。可愛いよ。」

「なんか照れるよ。でも、ダメなの。」

「え?」

その理由を聞く勇気は僕にはなかった。しかし、後々考えるとこの時に聞かなければならなかったのだ。

「あ、もう駅ついたよ。私、寄るところあるからじゃーね。今日はありがとう。」

何かをごまかすように少し早口で言いながら椅子から立ち上がりリュックを背負った。

「お、おう。また明日学校でな。」

その動作に圧倒されたかのように僕は挨拶しか出来なかった。

閉まるドアの隙間から見えた梨々奈は何故か悲しそうな表情に見えた。



第三話をお読みいただきありがとうございました。

今までとは違う世界での梨々奈は大幅に性格が違っていましたね。

この二つの世界は同じ時間軸で進んでいるので比べながら読んでくれると楽しめると思います。

次回もよろしくお願いします。

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