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「うっ……ここはどこだ?」

 

俺は後頭部を抑えながら自然と体を起こした。

 

どれだけ眠っていたか分からないがその強烈な眩しさに俺は目を細めた。気配からして周りに何人かいるかは理解できたがそれ以上は頭が処理に追いつかない。

 

ぱっと見た瞬間目の前に広がる光景に対して一言申すとしたら、この光景は非常なほどに眩しかった。


「勇者様。お目覚めになられましたか」

 

目の前に寄り添うにして優しく声をかけている少女に俺は疑問を抱いた。

 

勇者? それは俺のことを言っているのか。だったら違う。

 

視界が少しずつ明瞭になり、それに連れて目の前にいるその人は俺と同い年ぐらいの少女。着ている白いドレスと煌びやかな装飾からして普通の少女ではないだろう。さらに背後にそびえるように立ち並ぶ異様な光景からして、より強くそう思わされた。

 

背後にいるのは頑丈そうな鎧を身に着け、頭には顔すらも把握できないような鉄兜を装着している。更に言うならば、その鋼鉄軍団の前にその代表ともいえそうなその人達からは送られる視線からしていいようには見られていないだろう。


「俺はどうなったのかわかるか?」

 

この状況を何も考えもしていなかった俺の口から出て来てしまった言葉は、まるで友達と会話するような言葉であり、その言葉にいち早く反応したのは鋼鉄軍団の前に君臨するかのようにいかにも怖そうな女性であった。


「貴様っ! エクレシア様にその口の利き方は無礼だろう! 今すぐにその場を降りて首を差し出せ! そうすれば楽にあの世へ送ってやる」

「ちょ、ちょっと待て!」

 目の前にいる少女はどうやらエクレシアというらしい。

 

 それにこれだけの人数に囲まれているのと、服装からして相当な立場の様だ。


「オルハさん落ち着いてくださいよ。あの召喚された青年も驚いているでしょう」

「おまえは黙っていろ!」

 

烈火のごとく激昂しているオルハと呼ばれる銀髪の女性に、隣にいた帽子に羽をつけた青年が声をかけてなだめているがどうやら収まる気配がない。


「オルハ、落ち着いて。勇者様が怯えているでしょ」

「し、失礼いたしました。しかしながら、私などの視線で怯えるとなるとやはり期待をそれほど持てないかと………………」

「……………オルハ、誰だっていきなり怒鳴られたらビックリするでしょう」

「失礼いたしました………………」

 

エクレシアの諌める声に先ほどの怒りはなんだったかと思える程、オルハと呼ばれた女性は冷静を取り戻した。

 

 なんとか危機を脱したいようだ。それにしても、どうやら俺の前にいた少女はここの王城の様だが、さっきから言っている勇者様とはどういうことだ? 


それにここはどこだ。俺はどうしてここにいる。

 

何も思い出せない。脳内はとっくに困惑してしまっていたが、それでも俺は出来るだけ落ち着いているような声音を出す。


「ありがとう。で、これはどういう状況だ?」

 

「そのことについては後程説明いたしますので、先に失礼しますね」

 

エクレシアはその白くて細い指を俺の額に当てて、何かを確認しているかのように小さな声で呟いている。


「勇者様の名前に性別、年齢は……あら、私と同い年のようね。それで肝心の能力は……え⁉」

 

 どうやら、俺の能力を鑑定してその力に驚いているのか。



その絶叫にも近いその声に後ろにいた騎士たちがざわざわと声を上げると、さっきほど激昂していたオルハが再び先ほどよりも苛烈に激昂する。


「お前っ‼ 今すぐにその場所から降りろ‼ エクレシア様に何かしたのであれば許さんぞ‼」

 

オルハは剣を抜いて俺に切っ先を向ける。


「おい! 待て! 俺は何もしていないぞ」

「そうですよ! ここで剣を抜いちゃダメですよ! オルハさん!」

 

青年が静止を求めるが、その声は激昂したオルハには届かない。


「黙れ! もしも何かあったらどうするんだ! おいっ! 誰かあいつをひきずり下ろして私の前に持って来い!」

「ですが、あの場所には我々は近づけないので動くことが出来ません!」

「チッ! くそっ! だから制約は嫌いなんだ! エクレシア様! すぐにお離れ下さい!」

 

なにかあったようだがどうやらこの場所は安全地帯のようだ。

 

そのことに俺は少しだけ安心したがそれは一瞬だけだった。


「大丈夫ですよオルハ。私はこのゴミに何かされることはありません」

 

え? ごみって……。

 

先ほどまで俺の事を勇者様と言って慕っていたエクレシアは、急に冷たい眼差しを向け俺を突き返すように右肩を押して離れた。


「オルハ。私は絶望というものをどれだけ味わえばいいのかしら。あーあ。せっかく大金を使ってまで子の召喚術を手に入れたというのに出てきたのはただのごみ…………そんなのあまりにもひどいじゃないの」

 明らかな失望の言葉、落胆する表情からは同情すら出来ないほどのただならぬ気配を感じさせ、周囲は言葉を失った。

 

静かな足取りでそのまま台座から降りると、オルハから受け取った布でまるで汚いものがついていたかのように指を入念に拭く。


「そうでしたか。失礼ながら現れた時から私には不要な気配はありましたが、どうやら間違っていなかったようですね」

「ふふ、それなら早く言ってよ。そうしたらあんなゴミに触れることなんてしなくてすんだのだから」

「失礼いたしました。その代わりにあの男の断末魔を聞かせてみせましょう」

 

クスクスと二人が笑い始めるとつられる様に周りにいた者達も笑いだす。

 

俺はその異様な光景と同時に急に空気が凍り付いたように冷たく感じ、呼吸すらままならなくなっていた。さっきまで状況が理解出来ていない俺だったが、この状況が危機的状況だということは本能が理解していた。


とにかく今は逃げなくてはならない。と。


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