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戦闘

 ちょっとアリアさん語りの文が多かったのですが、主人公は少女の方です。(汗)

 ということで今回は少女視点で行こうと思います。

────恥ずかしい!


 先程聞かれた名前の質問に対して返せなかった。

 名前がないという事実がどうしても恥ずかしい。


 胸の内で荒れた感情にまかせてひた走るが、少したってから落ち着く。

 今度は1人置いてきてしまったアリアに対して、申し訳なく思う気持ちでいっぱいになった。

 

 しかし、このまま戻るのも気まずい。


「うぅ〜〜〜〜、もぉっ!」


 堪えきれず、木の幹をける。しかしビクともしない。その事に腹立つ。


「………っはぁ。」


 そのまま、私は申し訳なさと気まずさを抱えながらとドボドボと森の中を歩いていた。




 それから5分ほどたっただろうか、いつぞやのうさぎの巣穴ら辺まで差し掛かった時だった。


 森の様子が、いつもと少し異なることに気がついた。


 自分の進行方向より先の方から鳥が一斉に飛びだったのだ。

 それに加え、小動物達は全く表に見られず、巣穴の中に隠れている。


 私はその異変に、周りを警戒し、常備していた小刀に手をかけ、ゆっくりと歩いてた。


 どうやら、先日アリアさんと出会った方面から、鳥達は飛んできたようだ。

 すぐ側にある、うさぎの巣穴も、沈黙を保っている。

 

 しかし、その沈黙に反して、歩を進める度に、

カキン、ドンッと剣が振られる音、そして何かとの戦闘音が大きくなっていった。そして、わずかにだが、血の匂いもしてきた。


 私はその物騒な状況にデジャブを感じずつ、音の発生源に慎重に近づいて行った。


「右にいけ!」

「前衛さがれ!」

「罠の設置終わりました!」

「よし、そちらへ誘導するんだ!」


 茂みに隠れ、その戦闘を覗き込むと、1匹の大熊と4人の男性たちが戦っているのがうかがい知れた。


 新たな人々が現れたことにより、体がまた、フルリと震える。

 音からして、誰かしらいるのは分かっていたが、恐怖心は勝手に込み上げてくる。


 しかし、息も多少苦しくはなったが、ここ数日間アリアさんと話していた経験のおかげですぐに落ち着くことができた。


「ふぅ………。」


 改めて男性たちを見直す。


(今は暖かくなってきたばかり。冬眠を終えたクマに出くわしたのね。これじゃあ、追い払うのも、逃げるのも無理でしょうね……。運が悪いわ。)


 男性たちの不幸に嘆きつつ、そのまま、戦闘の様子を観察する。


 よく見ると4人の男性以外にも、人がいるようだ。後方で負傷している女性が1人おり、その治療のためにもう1人の女性が手当をしている。


 ただ、完全にその状況はひっ迫しているわけではなさそうだ。

 4人の連携は上手いものだし、怪我の手当も十分になされている。


 このままいけば、クマが押し負けるだろう。


 しかし、なんという悲運か。


 その人たちはとことん不幸体質のようだ。負傷者を介抱している女性の後ろからもう1匹、クマが出没した。


「うしろぉお!!!」


 戦闘を終えかけた男性たちのうち1人が気づき、声を張り上げたが、介抱に集中していた女性は気づかない。


(────いけない!)


 応戦しているクマのことや、距離のこともあり、男性たちでは間に合わない。


 そう思った私は茂みから飛び出した。


 心臓がバクバクとする。


 しかし、その不安を押しのけて私は手元に魔法で作った炎をまとわせる。


(落ち着け。やたらめったに打ってたら、魔力は暴発してしまう。それに女性に魔法が当たってしまうじゃない!)


 狙うは一撃。最小で最大の結果をもたらす魔法を打たねば。


 私は狩りで弓を引く時の、あの緊張感と集中力を感じながら、炎を小さく、小さく、圧縮させた。


「ヒッ……!」


 女性は自分を取り巻く状況にやっと気がついたのだろう、目を見張っている。


 クマが起こしていた体をを倒し、腕を振ろうとした瞬間。


(──────今っ!)


「こんにゃろぉおっ!!!!」


 私は手のひらで圧縮させた炎を、風魔法を応用して強く打ち出した。


 その反動で私自身も後方に吹き飛ばされてしまう。自分の小さな体では、その威力に耐えられなかったようだ。


 茂みのなかに突っ込み一瞬目がチカチカとしたが、気を抜けないと思い、すぐに立ち上がり状況を確認する。


 どうやら、魔法は上手くクマに当たったようだ。それに、私と同様、クマも魔法の威力でおかげか、前傾姿勢から後ろに倒れ込んでいた。


 それを確認した私は、詰まっていた息を吐き出し、脱力した。


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