実情
(……どうしよう。)
女性からアリアと名乗られたが、自分の名前を名乗り返せない。
まだ母親に面倒を見られていた頃。
その時は母親に名前を呼ばれたことが無いため、自分の名前が分からなかった。とは言ってもそれは愛情がないだとか、そう言う訳ではなかった。
施設に兄妹で聞いた所、赤ん坊の頃はまだか弱く、名前をつけてしまうと様々な気を呼び寄せ耐えられないだろう。という事で、名前は首が座った頃に付ける習慣があるらしい。だから私にはまだ名前がなかった。
施設では似たような境遇の子達が複数いたため、名前は付けられずに番号で呼ばれていた。
それはさすがに自分の名として名乗りたくはない。
という訳で、女性、もとい、アリアさんが名乗ってきたのにも関わらず、自分から名乗り返すことが出来ずに、無言になってしまった。
しかし無言の空間には耐えられず、他の質問を返すことにした。
「あの、なんで……森、いた…の?」
「あー……それはね、こっわいおじちゃん達に追いかけられちゃってね。」
「ひっ…!」
「あっ!で、でも大丈夫よ。ここには悪いおじちゃんも来れないわ!」
まだ人が近くにいるのか。アリアさん相手にここまでテンパっておいて、これ以上他の人に対応する気力も勇気もわかなかった。
だから、ここまで来れないというワードに安堵する。
「えっと……これから、どう、するの?」
「うーん、そうだなぁ、私の仲間が来てくれるまで、待つしかないし……」
そこて、アリアさんが目覚める前に考えていたことを提案した。
「そしたら、ここ……いる……良い、よ」
「ほんと!ありがとう!」
そうして、アリアさんの滞在が決まった。
前回に反して、逆に短くしすぎました笑