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ヒューイとの再開


 夕飯の時まで、アーウェン男爵家から持ってきた本を読んで暇をつぶした。


 中身は植物図鑑だ。挿絵と注釈で分かりやすく描かれていた。


(うわっ!エレキドリルって食べすぎるとお腹を壊すだって?やっぱり本当に毒持ちだったんだ…)


 今調べているのは、今まで自分で採取して食べてきた植物たちだ。ベットの上で足をパタパタ揺らしながら読んでいる。


「きれい……」


 ペラペラとページをめくっていると、1枚の挿絵に目が着く。

 青色と白色の紋様が綺麗なパンジーのような花だ。


「えーっと、ピムン……薬に、なる?魔力があるドジョウ、で育ち、数種類の薬草と、チョウゴウ、すると……」


 少々突っかかりながらも声にだしながら読む。

 実は最近は、この練習のおかげで言葉を長めに話せるようになってきた。

 これも語学の勉強一環である。


「セイショク、場所は…湖のほとり……で、北方の寒い地域……でよく見られる。」


 北方の湖のほとりにあるとは。ドルワル王国は北方に位置する国だし、オーダム伯爵家の本館のすぐ側には確か湖があるはずだ。


 伯爵家に滞在している間に、ヒューイと探検しに行って見たいと思った。


(あ……でもヒューイは勉強で忙しいんだっけ)


 後で本人かフレドルさんに聞いてみよう。そう心の中にメモした。


「フェリス、呼ばれた。そろそろ夕飯に行くぞ。」


「ぁ……はーい」


 ガチャリとドアが開くとジークさんがそう言いながら入ってきた。

 そうか、もうそんな時間か、と思いながら外を見るとすでに空は暗くなっている。チクタクとなる時計の針も7時頃を指していた。


 本を片付けベットから降りる。


 とうとうヒューイとの再開だ。緊張で胸が強く鼓動するのを感じた。






「ピムンですか?」


「はい……」


 廊下を歩きながら、案内をしに来たフレドルさんに先程図鑑で見かけたピムンの話をしていた。


 ちなみに使用人ではなく、執事であるフレドルさんが来てくれるのは、冒険者と言えどもジークさんがいるかららしい。


 ジークさん凄いのかと改めて思う。


「確かその花は本邸の近くの湖の近くにございますよ。」


「本当ですかっ!」


「えぇ……」


 声を小さくしていって、フレドルさんは思案げに視線を落とす。


「どうしました、か?」


「いいえ。何でもございませんよ。先程の話ですが、ピムンが咲いているところは進入禁止区域でして。使用人に採らせておきましょう。」


「えっ!」


 しかし、フレドルさんはやんわりと微笑みながらそう言った。進入禁止区域とは危険な場所なのだろうか。


「だ、大丈夫なんですか?」


「はい。自然保護のためですので、多少なら大丈夫です。ですが、子供であらせるお嬢様が行くには厳しい場所ですのでお任せ下さい。」


「はい…」


 少し肩を落とす。そうかいけないのか。

 

「今後は冒険者として生きていくんだ。その時に探せばいい。」


「…うん」


 そう言い、隣を歩いていたジークさんは頭を撫でてきた。


(いつかは見れるよね……)


 そう思いながら少しの間歩いていると、1つの部屋の前までたどりつく。


 ついにヒューイとのご対面の時が来た。


「では、ごゆるりとお楽しみくださいませ。」


 そう言ってフレドルさんは扉を押し開いた。




 ゆっくりと開く扉の間から、部屋の中が伺える。そこには大きな机と椅子が並んでいた。椅子には女性が1人、


━━━━そして黒髪の少年が1人。


「ねぇちゃん!」


 私よりも少し小さい黒髪の少年は、座っていた席から立ち上がるとこっちまで来て抱きついてくる。


「ヒュ、ヒューイ……?」


「うんっ!!」


 私はゆっくりとヒューイの背中に手を回す。

 するとヒューイから抱きしめる力が強まった。


「無事で良かった……会いたかったよ」


「僕も……」


 そのまま少しの間、ヒューイの温もりを堪能していると、椅子に座っていた女性から声が上がった。


「やぁーん!感動の再開!素敵ねぇっ!」


「あっ」


 そちらを向くと、紫のシンプルなドレスに、白の毛皮を首にまきつけた女性が頬に手を当てにこやかにこちらを見ていた。20代ほどだろうか。


(か、完全に忘れてた…)


 慌てて抱擁を解き、身につけていたスカートの端をつまみ上げる。

 おねえちゃんとしてヒューイにはしっかりした所を見せたい。


「ご、ご挨拶遅れました。すみません、フェリスです。」


「あらぁ〜、お邪魔しちゃった?ごめんなさいねぇ。」


「い、いえ。」


「それは良かったわぁ〜。ゆっくりしていってね。ジークちゃんもよっ!」


「はい。ありがとうございます。……ちゃんはやめてください。」


「何よジークちゃん、照れちゃって〜!」


 その女性は抑揚を激しくつけながら話をした。ニコニコしながら話しているが、勢いの圧が凄い。ジークさんの言葉もまるで無視している。


(す、すごい人だな。ジークさんとは知り合いなのかな……。にしても……)


 何たるボッキュンボンなのだろうか。


 自分の胸を見下ろす。だが7歳児である私は当たり前だが絶壁だ。しかし、赤ん坊の頃に見た母親も平均かそれより少し小さい。


 将来には期待できなさそうだ。


「フェリスお嬢ちゃん!初めまして、この家の伯爵夫人、エイダ・オーダムよっ!よろしくねぇ〜」


 立ち上がってそう言ったエイダさんはドレスの端を掴み、上品にお辞儀をした。

 今、この人は夫人と言っただろうか。


「は、伯爵、夫人ですか?」


「えぇ、そうよ〜。それが何かぁ?」


 確か、来る時に聞いたが、伯爵家夫妻は40代だと聞いた。

 しかしエイダさんはとても若々しく、そうは見えない。


「……お美しい、ですね」


「やぁーん!褒められちゃったわぁ!お上手ねぇ〜。ありがとう!」


 そう言ってエイダさんはピョンピョン飛び跳ねる。

 ヒューイを見ると、ふぅと息を着いていた。

 何だか、貴婦人と言うよりは、JKのようなテンションで、本当に貴婦人なのだろうかと疑問に思ってしまう。


「あら?ちょっと失礼な事考えてな〜い?」


「えっ!いいえっ!」


「ふふ、じょーだんよ?あら、食事が冷めちゃうわ!席に着いてちょうだい?」


 鋭い。一瞬ピリリとした空気が流れたが、すぐに笑ったエイダさんに席を進められた事で元の穏やかな雰囲気に戻った。

 何だか掴みどころのない人だ。


「お姉ちゃん、ごめんね……でも、変わってるけど、いい人だよ」


「う、うん。そっか」


 席に移動する間際、ヒューイからコソッと言われた。わざわざフォローするとは、しっかりとした弟だ。


(思ってたより、全然元気そう。良かったぁ)


 ヒューイを改めて見ると、少し自分よりかは背が低いが、仕立て良い服を着て、健康そうだ。右腕には紫の宝石をあしらった腕輪までしていて、オーダム伯爵家でも大切にされている事が分かる。


 来る前に感じた嫌な予感は外れていたのだ。

 その事に、私は安堵した。

あれ?ヒューイ、元気そうですね。(ニコリ)


ちなみにですが、フェリスの年齢は7歳。ヒューイは6歳です。

ヒューイはフェリスより1年遅れで施設に入ってきたんですね。

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