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遠視

「ふぁぁ……おはよぉ〜〜」


「おはよ……」


「あれ?寝不足?この後外に行くんだから、どうにかしてよね!」


「うん……ふぁ」


 翌日の朝。リーナに起こされた。

 昨日は魔力の行方を考えていたら全然寝付けなかった。

 寝不足でまぶたがものすごく重い。


 目をゴシゴシ擦っていると、リーナから服を渡された。

 袖の端に花の刺繍が入った黄色のワンピースだ。リーナのなので少しブカブカする。





「リーナ、こっち!!」


「ま、まって……」


 朝食を終えた私は、リーナから村の案内をしてもらった。

 ここは誰それの家。ここはかくれんぼに良い。ここはこーゆー花が咲く、と色々と教わった。


 そして案内、もとい探検が終わったあと、私は昨日言っていたエレキドリルの生息地の特徴を教えることになったのだ。


 ということで現在、私達は村外れにある森の中にいる。


「はぁはぁはぁ、フェリス、歩くの、早すぎよ……」


「あ、ごめん。」


 だが、森での経験の差でか、時々置いていきそうになってしまう。思ったよりも時間がかかりそうだ。


(これ、昼までに戻れるかな……)


 ジークさんが迎えに来るのは昼頃だ。日の高さをみればまだ時間はありそうだが、このペースだと間に合うか危うい。


(ずるだけど、しょうがないよね……)


 そう思い音魔法を使う。すると、左側からザァーと水の流れる音が聞こえる。


 以前いた森でエレキドリルを見つけた時はいつも川のそばだった。それも上流の方によるほどある。


 本当は、一つ一つ森の特徴を見て、川を見つけて探したかったが、時間の都合上、魔法を使用してしまうのはいたし方ない。


「おねえちゃん、こっち」


「う、うん」

  

 リーナを引き連れて移動する。そこには想定通り川があった。


「ふぅ、ここまで山奥に来たのは初めてだよ……」


 リーナが額の汗を拭いながら言う。だが、私はすでにエレキドリルを探し始めていた。


「おねえちゃん、こっち」


「え!う、うん…」


 その後も私はリーナを連れ回した。





「あーダメ、もー動けない、つーかーれーたー!!」


「ご、ごめんね…」


 それから半刻経った現在、手元にはいくつかのエレキドリルが収まっていた。相変わらず毒々しい色合いだ。


(早く見つけたくて全然おねえちゃんのこと考えなかったな……反省反省)


 時々私は周りを忘れて行動してしまう節がある。今回もリーナの事を気遣えなかった。


 前世の事も含めれば私の方が精神は年上なのに、どうしても最近の自分は子供っぽい。


「まぁ、いっぱいエレキドリルが取れたしね!私はおねえちゃんだから許してあげる!」


 リーナにはそう言って頭を撫でられた。


 自然と笑顔が浮かぶ。

 そのお姉ちゃん風を吹かすのは3年前と変わらない。こういう寛容な所が、兄弟たちに慕われていたのだ。


 そして疲れた喉を潤わそうと思い、隣で流れている川の水をすくう。魔法で水を出してもいいが、澄んだ川の水の方が美味しく感じるのだ。


 そこで、ふと気づく。


「川の水、魔力、いっぱい、ある。」


 その川の水には沢山の魔力が含まれていた。


 こういう魔力を含んだ物は稀にある。最たる例は魔石で、後は林のなかの1本の木だったり、山の頂点にある岩だったり。以前住んでた森でも1回だけ見たことがある。


 生物の死骸から魔力が溶けだしたのかとか、魔力溜りがあるのかとか想像はするが、理由はよく分からない。


「え?なになに?この水凄いの?飲めるの?」


「うん、そういうこと。飲める。」


 そう言うと目を輝かせたリーナはごくごくと手ですくって川の水を飲み始めた。


 別に魔力を含んだものを服用しても害はない。媒介がないか、私のような魔力の扱いに慣れた人でなければ、体内には取り込めないのだ。

 凄いと言っても、リーナみたいな者にはあまり意味は無い。


「ちょっと、5分くらい、良い?」


「ん?まぁ、よくわかんないけど良いよ」


 リーナの許可を得る。私は、ずっとやりたかったことをやろうと思った。


(今ならできるかな……)

 

 そう思い、私は川の中に手を浸して慎重に魔法を行使する。


 その魔法の内容は遠視だ。

 ヒューイの特徴的な魔力がないか探すのだ。


 ヒューイの現状は夢のせいでとても気になっていた。


 もちろん、男爵領から伯爵家までは遠いい。成功するかどうかは賭けだ。

 

 この遠視という魔法は普段からできる訳では無い。元々範囲を探知する魔法は魔力を多く消費するのであまり遠くまで察知することは出来ない。

 その種類にもよるが、遠視の魔法は射程範囲が短い。


 だが、この川の大量な魔力を利用して見ればその距離も大幅に広げることができる。

 今回は伯爵領と方向も決まっているので、無駄に魔力を浪費させることも無い。


 そう考えている間にも、ぐんぐんと景色の情報が流れてくる。大した情報ではないので、直ぐに頭から切り捨てる。

 まだまだ伯爵家までは遠い。この川の魔力を使い切っても届くかどうか。


(あと……ちょっと……)


 魔法を使い始めて5分経った。伯爵家までは後少しだ。


『バチッ』


「わっ」


 だが、上手くいっていると思った時、突然バチっと魔法がきれてしまう。



「ん、どうし……って、どうしたの!?」


 するとそのつぶやきに反応してこみちらを見たリーナが肩を掴んできた。

 何かと思い、その視線をたどったらツーっと私の鼻から鼻血が出ている。


「ぁ……大丈夫」


「やっぱ山登り疲れちゃった?はいハンカチ!えっと、上向いて上!」


「う、うん。大丈夫だよ……ありがとう」


 リーナからハンカチを渡され上を向かされる。相変わらずのおねえちゃん気質だ。


 どうやら体に負担をかけすぎたようだ。だが、私は鼻をつまみながらも先程のことを考える。


 途中で魔法が消えるのは分かる。ここから伯爵家までは距離があるし、途中で魔力が足りなかったりコントロールを失ったりしまうだろう。


 だが、先程の魔法の消え方は不自然だ。


 不吉だ。ヒューイの事に関してはいつも何か問題が起きている。


 嫌な予感をヒシヒシと感じた私な、そこでヒューイの現状を知っているであろうリーナに聞くことにした。


「おねえちゃん……」

 

「どうしたっ!?どっか痛いの!?」


「あ、それは大丈夫。えっと、ヒューイって今どうしてる?」


「ヒューイ?元気にしてると思うよ?」


「えっ」


 予想とは違う言葉に驚いた。でもアリアさん達のことを考えれば、問題があればすでに解決しに動いているだろう。


「えっとね、伯爵のこうい?で、ヒューイとは文通をしてるのよ!魔法のこととかは気にせず過ごしてられるんだって!」


「……よかった。」


「うん!帰ったら手紙、見せてあげるよ!」


「ありがとう」


 そこまで言うなら大丈夫なのだろう。


 その後私たちはそこでの休憩を済ませ、森をでた。

 家に戻ってからリーナに手紙を見せてもらうと、確かに文字からは元気に過ごしていることが伺える。

 程なくしてジークさんが来た。支度をすませた後に男爵家への帰路につく。


 たくさんの楽しいことができた。だが、私は馬車の中で釈然としない気持ちだった。

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