魔石と新たな謎
「まぁまぁ、もうこんな時間だなんて。」
あれから長い時間話し込んでいた。昼過ぎに来たはずなのに、窓から差し込む光はすでに茜色だ。
「そうですね、僕らはここら辺で。ありがとうございました。」
「ありがとう、ございました」
ジークさんの声に応じて立ち上がる。
今日は楽しかった。それに加え、まだまだ話したいことはある。また来たい。
そう思いながら帰りの準備をし始めると、右腕がグイッと引かれた。
振り返ると、リーナが顔を赤らめている。
「どうしたの?」
「……ね、ねぇ!今日、お家に泊まっていかない!?」
「!!」
「あぁ、それはいい案だね!泊まっていきなさいな!」
バッと後ろを振り向き、ジークさんを見つめる。ジークさんは目を瞑ってうーんと唸ったあと、ゆっくり頷いた。
「そう、ですね、そちらが良ければ。僕は領主様にこの事を報告をしに行かねばならないのですが、それでも大丈夫ですか?」
「あぁ、任せてください」
扉からおじいさんが入ってくる。どうやら牧畜の仕事は一旦終わったようだ。
「はい、よろしくお願いします。明日の昼に迎えに来ますね。」
「あいさ、分かりました!」
そうして私のお泊まりが決まった。
(はじめてお泊まりに誘われた!)
今までで1度もお泊まりという経験はない。そのワードに胸が高まった。
それに、リーナと二人になれたら、兄弟たちの事情の事が聞きやすい。
私の一日はまだまだ終わらなそうだ。
その後、ポクポクと美味しいスープとパンをいただいた。昨日と比べたら素朴だが、リーナとおばあさん、おじいさんと食べる夕飯は会話が弾んでとても楽しかった。おばあさんは明るく、おじいさんは口数は多くないが優しかった。
その後、リーナから家の中を紹介され、明日は牧場を紹介してくれると約束した。
リーナの部屋に戻ると湯浴みをした。布で体を拭く。
リーナの寝巻きをかりて二人一緒にベットに入った。
ベットの中でも会話が始まる。そこで私はずっと気になっていた質問をした。
「ねぇ……施設、ヒューイ以外の兄弟たち、どうなったの……?」
「……」
するとリーナは俯き黙ってしまう。
その姿をじっと見つめていると、リーナはポツリと話し始めた。
「……施設の仕掛けが動作したの。」
「仕掛け?」
「あれ?あぁ、フェリスは受けてないよね。」
そう言うとリーナはスルリと服をずらして方を出した。
そこには小さな縫い目がついた切り傷の跡があった。
「何それ?」
「これはあいつらが魔法の使えない子供に付けた魔石のあとよ。」
「ませき……」
魔石は文字のごとく、魔力を持った石だ。生物の死骸に稀に付着している。
ちなみに魔物は生きた状態でも体内に大きな魔石を保有しているという。
男爵領に来る道中に倒したグリフォンにもあったらしい。
その魔石だが、よく魔術の触媒として使われる。
「その魔石が、どうしたの?」
「えっと、あいつらが私たちに付けた魔石は術式が刻まれていて、私たちの魔力を吸い取っていたの。」
「えっ!すっごく危ない、でしょ?」
「まぁ、4年もやってたから、行き詰まってたんじゃない?だから、私たちを魔石にしようって考えたに違いないわ」
生物は生命活動のために魔力を活用している。逆を言えば、この世界の生命は魔力が無くなると死んでしまう。
それなのに魔力を常時吸い取る魔石だなんて、危険だ。
「おねえちゃん、だ、大丈夫なの!?」
「うん、今はもう取ったから」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。傷跡は取り出した跡だったのか。
「えっと、それで、3年前のあの日、騎士たちが兄弟たちが施設の中に集めてね。外に出てって言ったのに、騎士たちは保護って言って外には出してくれなくてさ。」
「そ、それで……」
「うん。魔術師のヤツらが施設を動かして魔石に溜まっていた魔力がなくなって。それで、みんな……凄く、苦しそうだった。」
「……」
「私とヒューイは外にいたから大丈夫だったんだけどさ。」
2人して俯く。
つまり、魔術師たちによって生命活動を維持していた魔力がある魔石から魔力が抜けたことで子供達は死んでいった。リーナとヒューイは外にいたため施設の仕掛けの影響を受けなかった。
ジークさんとアリアさんが返答を濁した理由が分かった。
兄弟たちが苦しんで死んでいっただなんて言えないだろう。
そこでふと思う。
「抜き取った魔力、どこに、行ったの……?」
「え?そこまでは考えなかったなぁ……分からないや。」
「そ、そう……」
(あれ?そしたらその魔力はどこへ行ったの?抜き取ってもそのままだったら消えちゃうし……。)
魔力はエネルギーだ。生物や魔石などのよりしろが無ければ霧散してしまう。
わざわざ仕掛けを作ってまで入念にしたはずなのに、抜き取って終わりだとは思えない。
ただ、3年前の事件は2人を保護して終わったはずだ。それ以上何かが作動しただとか、魔術が発動した、などはなかったはず。
だが、先程述べたとおり、魔力は依代が必要だ。
何も起きていないとなれば、魔石か何かにひとまとまりにされているはず。
もし、それが本当なら、子供たちの命で作られたその魔石はまるで、
────賢者の石
「!」
そこまで思い至った時、全身がゾワっとした。前世で語られた賢者の石は万物に通じると様々な厄災を引き寄せていた。
今まででの考えは自分の仮定で勝手な妄想だ。
だが、もしそれが真実だとしたら。
まだそれが存在していたとしたら、とんでもない事ではないか。
「どうしたの?」
「ぁ………何でもない」
黙って考えていると、リーナに心配さんてしまった。
だが、今幸せに生きるリーナにこんな不安になるような話をする訳には行かない。
(あぁ、ジークさん達もこんな気持ちだったのかな…)
ジークさん達が兄弟たちのことを話したがらない理由が本当の意味で分かった気がする。
「うーん、そろそろ寝よぉ……?」
「そうだね。」
そう言ったあと、リーナは目を閉じて眠ってしまった。
私もそれに追従して眠ろうと思ったが、目もつぶってもなかなか眠れない。頭の中が先程のことを考えてしまうのを止められない。
そこでふと思い出した。
────魔術師達は全員自殺した。
(使う人がいなくなっちゃうのに、全員死んだ……?そんなの有り得る?それだったら……)
まさか、魔術師達に生き残りがいるのではないか。
私は施設での事件がまだまだ続いている、そんな気がしてならなかった。
3年前の救出作戦での不可思議な謎が解けましたね。
しかし新たな謎が浮上してきました。
この事が今後、どうなっていくのでしょうか。




