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再開

 馬車がカタカタと音を鳴らしながら揺れる。


 現在、私はジークさんとともに、施設の時の姉であるリーナに会いに行っていた。


 リーナはジークさんに聞くと、救出作戦の後、アーウェン男爵家の領民である牧畜農家のご夫妻に引き取られたそうだ。

 ヒューイは魔法が使えるということで伯爵家に引き取られたが、リーナはただの少女だ。

 だが、その正義感溢れる少女には施設で何度も助けられていた。


 そんな事を考えながら窓の外を見ると、そこには広大な草原が広がっていた。葉に着いた朝露に太陽の光が反射していてキラキラと光っているように見える。


 更に奥を見ると、いくつかの家が集まっているのが見える。今日の目的地がある村だ。


(あそこにおねえちゃんが……)


 今日はリーナに聞きたいことが山ほどある。


 3年前の救出作戦の後はどうなったのかとか、今の生活はどう過ごしているのかだとか、好きなことは?好きな食べ物は?など思い浮かぶ質問は様々だ。


 それに加え、気になることが2つある。


 ひとつはヒューイの事だ。最近度々見るヒューイの夢は悪夢だ。ただの夢だとは分かっているとはいえ、不安に感じる。


 そしてもう1つはリーナとヒューイを除く施設の兄弟たちの事だ。

 何故彼ら2人しか生き残れなかったのだろうか。

 

 ジークさんやアリアさんに聞くとその原因は何故かはぐらかされた。

 絶対に何かある。当事者としてはとても気になる。

 ジークさんに聞けないのであれば、同じ当事者であるリーナに聞こうと思った。


 そんな事を考えていると、ジークさんから声がかけられる。


「着いたぞ。」


 いつの間にか馬車は止まっているようだ。視線を窓からは前に戻すと、ジークさんは既に立っていて、馬車から降りていたところだ。


 それからジークさんはこちらへと手を差し伸べてきた。


「うん……」


 その手をとり馬車を降りる。


 これから、リーナに会えるのだ。楽しみに思いつつ、何だか不安だ。


(私の事、覚えてくれているよね?)


 ジークさんの手をギュッと握り返しつつ、私たちは歩き始めた。


 




 それから半刻も経たないうちに、遠くに赤い屋根で白壁の家を見つける。その奥には動物の鳴き声が聞こえる建物があった。厩舎だろうか。


 どんどんと近づいていくと、その家の前に1人の少女が庭の木にもたれかかって寝ていた。


 赤くて長い髪の毛に筋が通った鼻筋。少しつり上がった目じりと眉は勝気な姿を想起させる。


(おねえちゃんだっ!!)


 その姿は、3年前よりも少し大人びた、しかしまだあどけなさが抜けていない。


 私はジークさんを置いて駆け出した。


「おねえちゃん!!!」


 声を張り上げると、寝ていた少女はパチリと目を覚まし、こちらを見てきた。その顔は驚きに染まって、口を開けながらポカーンとしている。


(あれ?やっぱり覚えてないの………?人違いなんてないよね?)


 その反応の薄さに先程考えた事がよぎった。

 立ち止まりリーナを見返した。


「うぅ………ぅあ……」


「!…………うぐっ」


 たっぷり10秒ほど見つめ合うと、立ち上がった少女の目には涙が浮かぶ。


 それに驚いていると、逆にこちらまでかけよられ、突然抱きしめてきた。

 その体は震えていて、涙がポロポロと落ちてくる。


「ぅぁぁああああ、うぐっ、いぎでっ、いぎでだっ、よがったぁぁあああああ!!」


 その少女はそのまま声を上げて泣く。


(あぁ、良かった……やっぱりリーナおねえちゃんだ。)


「……また、会えた……良かった………」


 そう言いながら、自分より頭1つ高い背中をポンポンと撫で付ける。


 私は涙を浮かべながら、久しぶりの再開に歓喜した。





 その後、少女が泣き止んだ後、私達は家から出てきたおばあさんにリビングまで通されお茶を出された。


 リビングにはおじいさんが1人いて、柔らかな声でリーナに良かったな、と声をかけ外へと出ていった。どうやら牧畜の仕事をしに行くらしい。


 安心した。どうやら優しそうな人達だ。


「あのね、おばっちゃん!この子が私の言ってた妹だよ!」


「ふふ、会えて良かったねぇ。お嬢ちゃん、このお菓子は好きかい?」


「ありがとう、ございます。」


 差し出されたクッキーを手に取る。甘くはないが、ほどよい小麦の味が美味しい。


「元気そうだな。」


「うん!ジークさんも久しぶり!」


 いただいたクッキーをサクサクと食べながら2人の会話を聞く。

 2人は面識があったようだ。


「ねぇ!森の中ではどんなものを食べてたの?」


「んぐっ。えっとお肉、あと木の実……キノコ。」


「森には甘いハチミツっていうのがあるんでしょ!どうだった!!」


「うーん、蜂、刺してくる。食べれなかった」


「えぇっ!それじゃあ、それじゃあ、エレキドリルは!あれ、なかなかないのよ!」


「騎士の人、一緒に食べた。おいしかった!よくある場所、特徴ある。それは────」


 突然質問をふられてむせつつも答えていく。

 久しぶりの姉との会話は取り留めのないものばかりだが楽しい。あまり口数がない私でも、今日ばかりはスラスラと言葉が出てきた。


 こちらが様々な質問を考えていたように、あちらも聞きたいことがいっぱいあったのだろう。


(あぁ……久しぶりに凄く楽しいなぁ)


 私は永遠にこの時間が続け、と願った。



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