グリフォン
────ハルビン・コックス────
(────魔法!?)
突然動きを止めた少女が何をするかと思えば、少女の体内で魔力の変動が起きているのに気がつく。
この世界の全ての生物は、魔力を持っている。
生命活動において、魔力ほど有用なエネルギーはないからだ。
しかし、魔力の危険性故か、魔力を多く持つものはあまりいない。そして、その中でも魔力を扱えるのはほんのひと握りだ。
使えるものの1部は魔術使いとなるのだが、魔法使いなんて、国内に5人いるかどうか。
ハルビンは、魔力をあまり持っていないが、王国の海外進出や、革命の中のいくつかの戦局で、その存在を感じ取れる程にはなっていた。
「ハルビンさん……あっち、何か、いる。」
「え?」
少女が森の奥の方に指をさす。魔法を使って知ったのだろう。子供の戯言だと無下にはできない。
「それは、何がいるんだ。」
「何か……分からない。でも、人間、違う。………数匹……いる。」
獣だろうか。そうであったら、見回りをしているハルビンが様子を見て、追い払わないといけないだろう。
「………そうか、分かった。私が確認してこよう。おじょっちゃんは、馬車にまで戻っておいてくれ。」
少女はコクリと頷き、もと来た道に引き返していった。
それを見送ったハルビンはゆっくり、少女の指さした方向へ移動した。
(あの少女は、なに者なんだ……)
警戒しながら歩きつつも、頭では先ほどの少女の事を考える。
森で保護した孤児だと聞いた。慈悲を持ち合わせるアリア様なら、自分と同じ馬車に乗せるのも分かる。
だが、先ほどの魔法はどうやって身につけたのか。
それに加え、10歳もいかない子供にしては、こちらの話をしっかりと理解し、返答し返してくる。
ただの子供では無い、ハルビンは少女に対して違和感が拭えなかった。
ハルビン達の主君がいるアーウェン男爵家は様々な功績を上げてきた。3年たった現在でも、そんな彼ら彼女らを妬むものは多く、たびたび襲われる。
そんなアリアの元に訪れた少女。
(じょっちゃんは誰かに害をなすようには思えないが……)
小さな少女を疑ってしまっている自分に対する良心の呵責で苦しく感じる。
(そんなわけがない、だが────)
「クゥェエエエエエエ!!!!」
「!!」
動かした足を止める。突然響いた鳴き声に動揺しつつも、ハルビンは剣に手をかけ、目を凝らした。
(────グリフォンだと!?)
そこに佇んでいたのは1匹の雄々しき獣。自分の倍はあろうかという巨体で、その黄土色の目は、覇気を感じる。
1人では到底かなわない。幸い、こちらにはまだ気づいてない。
ハルビンは汗が額をしたたるのを感じたが、急いで本隊を避難させるべく、移動しようとした。
(今回はグリフォンと遭遇しないよう、迂回したはずだろ!?どういう事だ!………まて、確か報告ではグリフォンは番だと────)
「グルグルグル………」
「!」
後ろからした音に急いで振り向く。そこには、もう1匹のグリフォンがいた。そちらは完全にこちらを捉えている。目の瞳孔は広がり、興奮状態にあるのが分かる。
(やべぇ、どうやって本隊に伝えりやぁいいんだ……いや、俺はここを切り抜けられんのか……?)
ごぐりと喉をならす。ハルビンは、突如陥ってしまった事態に、血の気が引いていくのを感じていた。
この小説って、バトルものですかね……?
しそて魔法が使えることが即バレしてしまいました。笑