表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/55

変化



 森をでて、一刻も経っていない時。みんなで林道を歩いて居ると、ガヤガヤという音が聞こえてきた。


(────人がいるっ!)


 思わずそばにいたジークさんの裾をぎゅっと握る。若干心拍数が上がった。


 ジークさんは、私が何に反応したのか気がついたのだろう。少しあゆみを遅め、こちらを見てきた。


「……大丈夫だ。アリア様を守る、俺たちの仲間だ。悪い奴らじゃない。」


「……」


 その言葉に、コクリと1度頷いたが、湧き出す恐怖心が収まる様子はない。

 マントを握っている手に力が入り、目線は足元に縫い付けられた。


 しかし、そうやってドボドボと歩いていると、突然、一瞬の浮遊感を感じた後、私は空を見上げていた。


「大丈夫だ。」


 背中をトントンとさすられる。


(────まさか私、抱っこされているの!?)


 足をバタバタさせるが、空をきる。


 そのまさかのようだ。


「わっ、私……抱っこ……歳、ちがっ…!」

 

「はは、すまんすまん。」


 私はもう、抱っこされる歳じゃない、と伝えたのにもかかわらず、ジークさんは下ろしてくれない。


 恥ずかしくて、ジークさんの胸元を必死に押し返して抵抗してみたのだが、ビクリともしない。


(前世じゃあ、私は15歳なの!思春期まっただかりよ!)


 前世も合わせ、人生初である男性に抱かれる体験に、私はより羞恥心を感じ、顔に熱が集まるのを感じた。


 だが、ゆっさゆっさトントンと、歩く振動と背中をリズム良く叩かれる事には、心地の良さを感じていた。


 ジークさんは引いてはくれなさそうだ。私は抵抗をやめ、ジークさんの足音を聞きながら、されるがままにした。

 すると、ジークさんが話しかけてきた。


「まだ、怖いか?」


「ぁ………」


「大丈夫か?」


 そういえば、突然の抱っこで忘れかけていたが、この奥には人がいるんだ。


 そう思ったが、先ほどまでの恐怖心も不安も、少しは残っているものの、あまり感じなかった。


「ちょっと………大丈夫、です」


「そうか、それは良かった。」


 ゆっさゆっさトントン。


(抱っこって凄いのね……)


 そのまま私たちは、他の待機していた騎士たちと合流した。




────アリア・アーウェン────




 足に疲労を感じつつ、アリアはあゆみを進める。


 周りを見渡すと、右側には木々が、左側には背の低い草がまばらに生えた地面が続く。奥の方には、元いた山とは違う山々が、うっすらと見えた。


 そろそろ、合流地点に差し掛かるだろうか。


 アリアはそう思い、視線を前に戻すと、1人の少女と少年が先を歩いているのが見えた。


 その2人を観察すると、どうやら、突然少年が少女を抱えたようだ。アリアは驚きを感じる。


「あらあら、あのジークがねぇ……」


「ほんと、あのジークが!ですよねぇ…」


 そのつぶやきに便乗してきたのは、アイザックだ。


 彼はジークの昔からの友人で、救出作戦にも参加していた。彼は騎士団に残ったが、ジークの事を誰よりも心配していたのを、アリアは知っている。


 アイザックは頭をポリポリとかきながらアリアの横に並ぶ。


「いやぁ、ここ最近は落ち着いてきたとはいえ、当初の落ち込み具合は凄かったですしね。あいつの性格を考えると、抱っこなんて考えられませんよ。」


「そうねぇ……この機に、ジークも以前の元気を取り戻して欲しいものだわ。」


「いや、あの頃の生意気坊主っぷりは大変ですよ。以前に戻られたら大変ですよ!」


「ふふ、確かに、あの時のイタズラばかりしていたジークは大変だったわ。」


 ケラケラとアイザックは笑う。

 だが、アリアがアイザックの表情をうかがうと、それは決してジークをバカにしている様子はなかった。


 むしろ、少年の変化を心のから喜んでいるようだ。


「……あなたも、肩の荷が降りるんじゃないかしら?」


「え?」


「3年前のジークがした捜索の時は、作戦の隊長のあなたはほれに付いていけなくて悔やんでいたけど、ずっと彼を気にかけていたじゃない。」


「………はい」


「あなたも一息つけるんじゃなくて?」


 アイザックがまた頭をポリポリとかく。頬は少し、赤らんでいた。


 いつも、飄々としているからか、こういった自分の話をされるのが、気恥しいのだろうか。


 アイザックは、それ照れを振り払うように言った。


「……まぁ、彼女の存在が、いい影響を及ぼしてくれるのを願うしかないですね。」


 だが、その言葉を、アリアは否定する。


「あらアイザック、それは違うわよ?」


「どういうことですかい?」


「彼女には幸せになってもらいたいってジークが願っているんだもの。彼女が何をしてくれるか、じゃなくて、彼女に何をできるのか。それを考えていかなければならないわ。」


「あぁ……」


「だから、ジークも私達も願うだけじゃなくて、頑張らないとね」


「そう、ですね……」


 再び視線を前に戻し、ジークの背中を見つめた。


 彼女の存在は様々な変化を、私達にもたらすだろう。


 その変化が良いものか、悪いものかは分からない。


 だが、ジークの様子を見るに、きっと大丈夫だと、アリアは予感していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ