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提案2



「ジーク!何勝手に暴走してんのよ!」


 キャニーがジークに詰め寄る。


 今は、薪と食料集めを、キャニー、ジーク、アイザック、オリビアの4人で、見回りも兼ねてしていたところだ。


 カーターとライアンは、盗賊がいないか、帰路の調査をしている。

 きっかけが、アリアの茶番だったとはいえ、主人の命令は守らなければいけない。アリアの体裁もある。


 食後、その2人を抜いて仕事をこなしていた4人だが、移動してから5分程たったころ、突然キャニーが怒り出した。


 今いる場所で騒いでも、拠点からこちらを伺い知ることはない。一応、キャニーも我慢していたようだ。


「先にアリア様には許可はとっている。」


「なっ!」


「すまない。話そうと思ったのだが、タイミングが掴めなかった。」


「なっ、ならとっとと話しておきなさいよね!」


 そう言ってキャニーはそっぽを向いてしまった。だが、納得はしたようだ。


 すると、オリビアがため息をついてから言う。


「たぶん、知らなかったのはキャニーだけよ。」


「えっ!なんでみんなは知っているのよ!?」


「昨日、焚き火の近くでジークがアリア様が話していたのを聞いた。」


「聞いていたのか……」


 少し恥ずかしかったジークは、口をへの字の形にした。


「まぁな、昨日はなかなか眠れなかったからな。クマとの戦闘もあったしな。………ガサツな約1名は爆睡してたが。」


「っ〜〜〜〜!!!」


 割り込んできたアイザックはジークの肩に肘をかけ、流し目を送る。

 その約1名は顔を真っ赤にさせていた。


「もぉっ!知らないんだから!このひょろひょろ男!」


 そう言ってキャニーはズカズカと先を行く。


「アイザック。………待ってキャニー。」


 オリビアは、アイザックを咎めるように見たあと、キャニーを追いかけた。


 残されていた2人は互いの顔を見合わせると、ふっ、と笑う。


「しかしまぁ、良かったな。」


「?」


「サファイアの嬢ちゃんが見つかって、だよ。」


「あぁ………」


 アイザックは頭をポリポリかきながら反対の手でジークの肩を組んだ。


「ジークもカッコ良かったぜ?……俺がなんとかする。だっけか」


「アイザック」


「すまんすまん!」


 ジークの古くからの友人は、肩をほどき、けらけらと笑いながら歩き始めた。


「…………本当に、良かった。」


 ジークも少女に思いを馳せながら、その後を追いかける。






「は、はっくしゅ!」


「あらあら。レヒト様の御加護がありますように。」


「あ、ありがとうございます……。」


 他のみんながそれぞれの行動をするなか、することもなかったので、私はアリアさんに童話を聞いていた。


 日用品の制作だとか、いつもの日課だとか、一応やることはあったのだが、先ほどのジークさんの後にそれらは手が付かない。


 そこで、朝の話以外にも、様々な話をしてもらっていたのだ。


「うーん、ジークか誰かがあなたの話をしているのかしらね。」


「うん………。」


 2人で座っている倒木の上で、足をプラプラされる。


(こっちの世界でも、噂をされているとくしゃみがでる、って言われてるんだなぁ〜)


 そのまま、先ほどの童話の話に戻る。


 数刻たち、思い出せる童話をあらかた語り尽くしたのか、アリアはうーん、考え込んでしまう。


「ところで………今後、どうするのか決めた?」


 突然の質問に驚きつつも、返す。


「………まだ。」


「そう………」


 朝、ジークさんから提案された話を聞いているのだろう。


 だが、お昼近くにまで迫るほど時間が経とうと、なかなか決まらない。


「さっきもジークが言っていたように、不安がないように努力するわ。もちろん、私もよ。」


「あり、がとう……ございます。」


 その言葉はきっと信じて良い。アリアさん達の人柄からも安心できる。


 でも、他の人達は分からない。遅れた、しかし魔法などといった未知の力があるこの世界で、誰もかしくも良い人とは限らない。

 

 非合法な施設が存在していたんだ。前世の頃よりも、悪い人たちは世間に多くいるだろう。


 その事を考えると、街は、どうしても安心出来なかった。


 悶々と考えていると、アリアさんが新たな一案を出てきた。


「うーん………そうだわ!体験期間っていうのはどうかしら?」


「体験?」


「えぇ。1度、街ですごしてみるの。そこでの生活が良かったら、そのまま私たちといることにして、もし嫌だと思ったら、ここまで戻ってくれば良いわ。その時は、私たちが責任を持ってここまで送り届ける。」


 ぽかーんとアリアを見上げる。


 よくよく考えてみれば、その案はとても魅力的に思えた。


「それに…………ひとつ、聞いていいかしら。」


「?」


「あなたは……もと人体魔力実験の被験者の1人よね。」


「!!!!!!!」


 ()()()()()()。そのワードに大きく肩がはねた。


(ジークさんだけじゃなくて、アリアさんも知っているの!?)


 昨日ぶりに、大きく心臓が波打っているのを感じる。


 とてつもなく逃げてしまいたい気持ちに襲われる。


 しかし、アリアさんの事だ。彼女が悪い人間では無いのを私は知っているし、何か意図があるかもしれない。


 そう思った私は、吹き出す汗を我慢しながら、コクリと頷いた。


「お、驚かせてしまったようね!ごめんなさいね。」


 ふるふると頭を振る。


「えっとね、落ち着いて聞いてね。3年前の事なのだけれど────」


 そこから私は3年前の救出作戦の概略を聞いた。アリアさんが生まれたアーウェン男爵家は力をもっていること。その家の騎士団で、救出作戦を決行したこと。そこにジークさんやアイザックさんが参加していたことも聞いた。そして────


「そして、救出作戦の結果、2人の子供が保護されたわ。赤髪の子と、黒髪の子よ。名前はリーナとヒューイと言うわ。」

 

 リーナとヒューイ。姉として慕っていた少女と、施設の中で最年少のヒューイだ。


 その事を知った私は、心の底から喜びが溢れるのを感じた。


(────生きていたんだ!!)


 2人の生存に、安堵した。


「それでね、今、リーナはアーウェン男爵家で、ヒューイは親戚の伯爵家で保護しているのよ。……だから、あなたも1度、アーウェン男爵領にきて、2人に会わない……?」


 私は勢いよく頷いた。


 先ほどの体験期間の提案も、2人との再開の提案も、なんて素敵な事なのだろうか!


 そしてジークさんの施設との関係の謎が解決した。


 私は、他のみなさんが帰ってくるまで、興奮を抑えられなかった。





 その日、私はこっそりと洞窟に戻り、必要ものと、そう出ないものを仕分けた。


 そして、いつもの料理を振る舞い、ジークさんにアリアさんが考えてくれた条件つきで提案に乗る事を伝えた。ジークさん達は、その返答に喜んでくれたようだ。


 そして、夕飯を食べ終わったあと、胸の高鳴りを感じつつ、就寝した。

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