謝罪
ジークさん達が戻るまで、あまり話は進まなかった。キャニーさんのトーク力を実感する。そして、残った従者のみなさんは、私の事情を察したのか、キャニーさんから後々何か言われたのか、私の名前を聞くことはなかった。
それから少したち、頃合ということで、私は夕飯作りを始めた。
従者のみなさんには食料と薪になる小枝を集めに行ってもらっている。
その場にはアリアさんと私が残っていた。
すると、アリアさんが突然謝ってきた。
「………ごめんなさいね。」
「ぇ………。」
「私たち、あなたにたくさん迷惑をかけているわ。」
「だ、だいじょうぶ……気にして、ない。」
それから少しの間、2人の間で沈黙が続いた。
(き、きまずい!)
私はその沈黙が苦しくて、ちらりとアリアさんの表情を伺った。アリアさんは口をキュッと引き締め、眉を寄せている。
その表情を見て、昼間のアリアさんと別れる前の事を思いだし、私は慌てて謝罪し返した。
「昼間……」
「え?」
「……お昼……逃げた、の……ごめんなさい……」
「そっ、それは気にしなくても良いのよ!」
「……」
私は勢いよく返されたアリアさんの返答を受け、次に何を言えば良いのか思い浮かばず、お肉を切るための小刀を握り締めた。
またもや沈黙が流れ、顔を伏してしまった。
横を流し目で見てみると、アリアさんもどうしようかと慌てているようだ。
(アリアさんが謝って、私も謝って、えぇっと、このあとは………あっ!!)
そんな気まずい一時が続くなか、私はある天才的な思いつきをした。
「お、お昼のこと……さっきのこと……お、おあいこ」
「え?」
「どっちも、謝った………だから、おあいこ………ダメ、です、か?」
「おあい、こ………」
すると、アリアさんは呆気に取られた顔をしたあと、困ったような笑顔を浮かべてた。
それを見た私は、了承を得たものだと思い、微笑み返した。
その後も会話は続く。
ひとまず、だ。もうアリアさんと私の間に沈黙も、気まずい空気も流れていなかった。
それから半刻もたってもいないだろう頃に、食料を探していた人たちが帰ってきた。私はその従者のみんなから、集めたきのこや木の実を受け取る。
1人は見回りをしていたが、残りの5人で集めたからか、結構な量が収穫出来たようだ。
しかし、やはりと言うべきか、まぎわらしい見た目の、毒を持ったものが混ざっていた。
私はそれらを選別していく。
私には3年間培ってきた経験があるから、そこそこの鑑識眼があると思う。
(時々間違えるけどねっ)
この生活が始まった頃は大変だった。
舌がピリピリしたり、お腹をくだしたり、笑いが止まらなかったり。色々な毒物を食べてしまったが、致死に至るものに当たらなかっただけ、幸運だと思う。
そんな事を考えながら、私は仕分けたキノコをスライスし、お肉とともにあえた。それに加え、みなさんが拾ってきた木の実を魔法で発生させた風圧ですり潰し、ふりかけ、加減を見てから木の皿に乗せていく。
今回作ったのは、野ねずみのお肉だ。香草で臭み消しをしているとはいえ、本当はホロホロ鳥を振る舞いたかったが、保存食の残量も考えて妥協した。
ただ、みなさんは評判が良かったので良しとする。
その後、皆さんから食事のお礼として、クラッカーをもらう。久しぶりの穀物の味に、私は舌つづみを打った。




