キャニーさん
久しぶりの従者との出会いにアリアは驚き、そして喜んだが、彼女のこともあり、いったん元いた場所に戻ることにした。
その場所を確認した従者のうち、1人は他の従者たちを呼びに行った。ただ、彼女を驚かせないよう、少し離れた場所で待機しておくように伝えた。
その場にはアリアと少女、そして従者の女が残った。
「アリア様……彼女は……?」
そう質問してきた従者に、アリアは森に入ってからのことを話した。
(誰か話してるの……?)
私は、2人の声が聞こえてきたことにより、目を覚ました。
いまだにジンジンするまぶたをあげ、状況確認をする。
どうやらもう夜のようだ。私は毛布がかけられていて、頭を何かに乗せている。
良くは分からないが、
(ぬくい、ぬくいぞ!)
暖かい。最近は外で寝るようになって寒かったのだが。
久しぶりのその温かさにそのまま2度寝をしようかと迷い、モゾモゾした。
「あら、起きたの?」
すると、頭上からアリアさんの声がした。
(あ、頭のぬくいものは、アリアさんの膝か。)
その事に気づき、そういえば自分は泣きじゃくって眠ってしまったことを思いだす。
恥ずかしくて顔に熱が集まるのを感じた。きっと外から見たらゆでダコのようになっているだろう。
私は二度寝の誘惑にあらがい、起き上がる。
そういえば、なんでこんな事態になったのかと、すこし混乱している頭で考えた。
「あ、おはよう。」
するとアリアさんとは反対隣りから声がした。
「ぁっ!」
ここまでのいきさつを思い出し、とっさにアリアさんの方に身を寄せる。
そのまま振り返ると、昼間に会った女性がいた。
その女性はショートのクリクリの茶髪に、メガネをかけていた。目がまん丸でツンとした鼻が特徴的だった。三角形の短い眉がなぜだろう、下がっている。
「びっくりさせてごめんなさいねぇ。あ、あと、アリア様を助けてくれてありがとう。」
ゆっくりコクリと頷くと、その女性ははにかむ。
そのおかげで、体の力が軽く抜けた。
「えっとね!私はキャニーよっ!アリアさまの従者をしているの。アリア様を守っているの。」
そこからキャニーさんはたくさん喋った。昼間はありがとうだとか、もう一人の女の人はもう大丈夫そうだとか、うちのバカがごめんね、とかとか。おしゃべりな性格なようだ。
その勢いにおされ、コクコクと頷いていると、それを見かねたアリアさんがキャニーをたしなめてくれた。
それを受けてキャニーさんは三角眉を八の字にする。
やらかしてしまった。という顔だ。
(こういうの、なんて言うんだっけ。バズーカートーク?だったっけ。)
なんて思い、頬がゆるむ。
キャニーさんはそんな私の顔を見て、顔をパァっと明るめた。
それに気づき、赤面してしまう。
「あらあら。」
アリアさんにまで笑われた。
2人のそんな視線に耐えられず、私は話し始めた。
「えっと……お昼……逃げちゃって……ごめんなさい……」
「あぁ、良いのよ!気にしないで!あんのバカが悪いのよ。」
「他の人……今、どこ……いる、の?」
「そいつらなら、ここよりもちょっと遠い所にいるわ!」
そっか……ともじもじする。キャニーさんはアリアさんに子供の前で言葉遣いが悪いと注意されていた。
頭上で2人の会話が続く。
主従という関係だが、仲は相当良さそうだ。
そんなことを思いながら、思考は別のところに沈んで行った。
そうか、あの声を荒らげた男性は、ここにいないのか。
それにしても、
(どっかで聞いた声だったなぁ………)
私はそのまま、うーん、うーんと頭を悩ませていた。




