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【書籍化】完結&番外編更新中 宇宙戦争掲示板ー1人なんかおかしいのがいるけどー  作者: 福郎


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博物館 元帥

私『次のコーナー。あの時の元帥。いつもの元帥。例の元帥。元帥。そう呼ばれている方のコーナーです。人生を丸ごと解説してたら、絶対に最後へ到着できないので、大事なところだけにしますよ。さて、教科書、テレビ、書籍等で見ない日はないでしょう?』


A『学校にいたらどこかで見ます』

『なにかしらで見るよなー』

『ねー』

『ただもう、ご本人はあまり表に出てこないようだ』


私『退役したので、ゆっくり趣味のお茶を楽しむのも許されるでしょう。なにせ若い兵ではなく、元々がいい歳でしたからね。では説明しましょうか。まず開戦直前の元帥は、その地位に就いたばかりで、著書で語ったところによると、毎日ぶっ倒れて無理矢理起きるという生活を送っていました』


A『え⁉』

『そんなに⁉』


私『広大な宇宙に配備された宇宙軍において、どれほど多くの部署、予算、部隊、派閥があったと思います? それこそ星の数ですよ。軍の頂点。確固たる指揮系統。言葉の響きはいいですが、成り立ての元帥が一人で掌握できるものではありません。冗談ながらも、歴代元帥の死因は全員が過労死だと言われる立場です』


『過労死って……』

『議員をやってる父も忙しいは忙しいが』


私『センターの中で人類が争っていた時期すら軍は複雑怪奇を極めているのに、宇宙規模に肥大したなど、考えただけで身震いが起こります。ですが元帥の掌握速度はかなり異常ですね。元々生まれが良い人物で、当時の大統領が軍にいたころに、元帥が上司、大統領が部下だった背景もありますが、それ抜きに考えても凄まじい速度で軍を制御下に置きました』


A『わあ……』


私『そんな様々な派閥を纏めた政治力お化けの元帥ですが、残念ながらどれほど尽力しても、どれほど軍が必死に抵抗しても、ガル星人の奇襲攻撃には対処できませんでした。ありとあらゆるシミュレーションが行われましたが、ガル星人の奇襲攻撃を防ぐ手段は皆無と結論付けられています。これは当時の軍、政府の擁護のために作られたものではありません。特務大尉がリヴァイアサンを引っ張り出し続けたのに、数年間も戦争を成立させた勢力なのですから、人類が生きている筈がないレベルの戦いだったのです』


『俺のところの爺ちゃんと婆ちゃんは、あんまり当時の話はしねえ』

『うちもだ』

『うちも』

A『私のお爺ちゃんとお婆ちゃんも』


私『どこもかしこも死戦場で、失陥した惑星の名前が次々に発表される日々ですからね。宇宙にまで進出した知的生命体が碌な文化を持たず、全ての生物を殺すためだけに行動していると想像した人間はいたでしょう。しかし、現実にそれが襲い掛かってくると想定した人間はいない世代ですから、混乱も酷かった』


『当時はみんなそう思ってたのか?』


私『若い皆さんはガル星人や星系連合の存在を知っていますが、当時の人間は元帥を含め、人類以外の知的生命体がいるとは思っていませんでした』


私『おっと。少し時間を圧縮しなければ。元帥はセンター近郊の戦いで、艦隊戦が巧みなことを証明し、その後に幾つか行われた大会戦も直接指揮を執って全て勝利しているため、政治力よりも指揮能力に注目されがちですね。実際のところは、軍内の政治力と軍人としての能力を兼ね揃えたパーフェクト元帥です。よかったですね彼が戦時の元帥で』


A『す、すごい』

『元帥にも会ってみたいなあ。誰かなんとか出来ねえか?』

『無茶言うな。今のあの方に会うのは、現役大統領より難しいぞ』

『そんな伝手ないしー』


私『ところで元帥の最も偉大な功績は何だと思います?』


『戦争に勝ったこと!』

『軍を纏めたこと』

『艦隊戦で強い』

A『えーっと……特務大尉との関係が良かったこと?』


私『なるほどなるほど……私は特務大尉の全てを許容して後ろ盾になったことを挙げます』


A『あ、私と似てる』


私『元帥が偉大なる英雄、特務大尉を信じた。後世がそう語るのは簡単ですけれど、足を引っ張らず彼の邪魔をしなかったのは、最も称賛されるべき偉業なのですよ。例え……そう、例え話ですが、元帥すら一発で首が飛びかねないやらかしを特務大尉が実行しても、それでも彼に事実上の全権を与え続けたでしょう。例え話ですからね?』


私『特務大尉と言えども、軍の頂点が非協力的であるならば選択肢が狭まった筈です。しかし現実は幸いなことに、狭まるどころかなんの妨害もなかった。これは戦時の軍において、本来あってはならない独断専行の許可でしたが、元帥は勝利のために割り切った』


私『同じようなことを言いますが、本当に元帥が彼であったことは明確に勝利の一因です。特務大尉を信じた。技術部への予算を惜しまなかった。新兵器開発部に、特務大尉専用機の開発を命じた。兵站部の意見を重要視し続けた。軍と政府で密接に連携した。そして、ありとあらゆる清濁を併せて吞み続け、ついにはガル星人との戦いに勝利しました』


私『飽きる程に見た顔の一人かもしれませんが、こういった歴史を知った上で元帥の展示物をどうかご確認ください。以上、当コーナーでの解説でした。若い頃の写真。本人が着用していた実物の元帥服と杖。当時の幕僚長たちが記した元帥の評価。当博物館にいらっしゃった時の映像もありますよ』


A『は、はい!』

『わ、わかった』

この博物館にはこいつの足があるんだ(^O^)

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
軍曹と兵站部と開発部と並んで可哀そうな方よねえ(明後日の方を見ながら
全て知ってるはずの一さんが茶化すことなく全力で讃えている…特務大尉は戦場の英雄、元帥は戦争の英雄かな
>私『特務大尉と言えども、軍の頂点が非協力的であるならば選択肢が狭まった筈です。しかし現実は幸いなことに、狭まるどころかなんの妨害もなかった。これは戦時の軍において、本来あってはならない独断専行の許可…
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