【戦後】とある修学旅行生と、博物館案内AIの音声ログ
タグ“最重要人物・孫娘”A『わあ! 見て見て! リヴァイアサンだよ!』
『おお、すっげえ!』
『あれが人類連合軍宇宙艦隊総旗艦かあ』
『ひょっとしたらセンターに到着するときに見れるかもと思ったけどラッキーだったな』
『なあケビン、お前の父ちゃん議員だろ? リヴァイアサンの中を覗けるように頼めたりしないか?』
『馬鹿言え。メルの議員なんてセンターじゃ豆粒みたいなもんだ』
A『リヴァイアサンに関われる人なんてメルにいないよ』
『分かんねえぞ。誰かとんでもない人脈を持ってるかもしれねえ』
『それより降りる準備をしよう』
A『センターかあ。やっぱり凄い都会なんだろうなあ』
◆
『ひ、人が多すぎるわね』
A『ねー。メルとは大違い』
『では皆さん、荷物を預けた後に戦争博物館へ行きますが、修学旅行は遊びじゃないことを肝に銘じてください』
A『はい先生』
◆
私『本日、この班の戦争博物館案内を担当する博物館AI、端末番号一です。一とでも呼んでください。班長さんは必ず、絶対に端末を肌身離さず持ってくださいね。トイレに置き忘れるということがよくあるので、気を付けてください』
A『は、はい』
『博物館に案内AIの端末が幾つもあるとかすげえよな』
『予算が潤沢なんだろう』
『ねー』
私『流石に入場者全員は無理なので、基本的には皆さんのような修学旅行の学生用です。ではまず初めに、避難経路を説明するので端末の画面をご覧ください。特に班長さんは頭に叩き込んでくださいね。皆さんは学生ですから、なにかあれば親御さんたちや親族の方が心配するので、こういったことは大事ですよ。本当に』
A『分かりました』
タグ私『地震や突発的な事故が起こった場合、戦車か小型船の中にでも逃げ込んでください。実物ですので建物が崩落しても何とかなります。最悪を突き抜けた場合は……起こらないことを祈りましょう』
A『最悪を突き抜けた?』
タグ私『未確認の敵生命体による奇襲攻撃、並びにセンター陥落。そして人類滅亡。と言ったところでしょうか』
『いや、それは流石に』
『いきなりセンター陥落は急すぎるかなーって』
私『おや、戦争前は宇宙人が攻めてくることもないと思われてましたよ? 宇宙人はいない。いても我々より劣っていなければならない。これが当時の常識でした』
『……』
私『では改めて。貴方達が生まれる前に訪れた死、破壊、滅び。それらに抗い、死に物狂いで押しのけ、そして勝利した記録の場、戦争博物館へようこそ』
◆
私『まずは……』
おい馬鹿止めろ、死人が出る『戦争博物館へようこそ。こちら入隊のパンフレットになりますので、帰りにゆっくり見てください』
『あ、ありがとうございます』
『どうも』
A『は、はい』
私『……軍が全面協力している場所ですから、最初の展示は入隊案内とか言われることもありますね。まあ、これに関してはご家族とよく話し合ってください。としか言いようがありません』
A『なるほどー』
『あ、おいあれ! あの奥にある足みたいなのってひょっとして!』
私『有名ですから知ってますよね。戦争中に鹵獲したガル星人の多脚戦車、カブトムシのものになります』
『確か登れるんですよね?』
私『はい、体験できますよ。修学旅行生は優先してくれるので、待つ必要はないでしょう。あそこに到着すればチャレンジしてみては?』
A『特務大尉はあれに登れたんだ……本当かなあ?』
私『ええ、はい。疑わしいですが本当ですよ』
◆
私『おっほん。まともに案内をしていると日が暮れるどころの話ではないので、大事なところだけの案内になります。俗に言う学生コースですね。まずは宇宙船関連、特にリヴァイアサンが目玉のコーナーになります』
『おおお! 模型がいっぱいだ!』
『男の子ってああいうのが好きだよね』
A『うちのお爺ちゃんも古い車の模型が好きなんだ』
私『正式には、そう、正式には人類連合軍宇宙艦隊総旗艦、リヴァイアサン。元はガル星人の兵器を鹵獲して運用。全長9㎞。どこか海洋生物を思わせるデザイン。口を模したかのような主砲と、全体を覆うバリアは強力無比の一言で、今現在も人類の科学力では再現不可能。単独で人類連合軍の全宇宙艦隊を相手取れる、まさに至宝です』
A『非公式があるんですか?』
私『特務艦隊旗艦。特務の愛車。そんなところです』
A『愛車って……これをです?』
私『ガレージにでも入れるつもりだったんでしょう』
A『あはは。少なくともうちじゃ無理だなー』
私『そうでしょうとも』
『中はどんな感じなんだ?』
私『最高機密中の最高機密ですよ。軽率な人間は関わることすら……まあ、うん……関わることすら出来ません。はい。本当ですよ? ですので中の情報が漏れることはありません』
『やっぱり中の人も凄いんだな』
私『戦時中から今現在まで艦橋、陸戦隊、その他全ての部署が全人類から選び抜かれた人材ばかりです。なにかの拍子で彼らが全滅すると、人類にとって大打撃になるようなレベルの話です。想定されている運用は基本的にセンターの防衛ですが、その中にはガル星人主力艦隊レベルの戦力を殲滅後、陸戦による周辺惑星の制圧も含まれています。後者に関しては名高い第一主力艦隊、通称特務艦隊の役割をそのまま引き継いだ形ですね』
『これに乗った特務大尉が、その人員と艦隊を率いて戦ってたのか……』
私『むだn。おほん。そうです』
A『なにか言いました?』
私『いえ? さて、次に行きましょうか次に。次は……元帥かあ』




