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【惜しくもランキング外】こちらもオススメ乱歩作品

※注意点※

・作者(真波)は短編作品を中心に乱歩を読み進めていますので、ランキングのほとんどを短編および中編作品が占めております。悪しからず。

・ネタバレ厳禁のルールに則り、結末やトリックが判らない程度で作品を紹介しています。


 前回まで四部にわけて江戸川乱歩の作品をランキング形式で紹介しました。が、正直なところ順位をつけるのも恐れ多いほど、乱歩作品はいずれもにも語るべき魅力があります。

 というわけで、ランキングにこそ並ばなかったものの、まだまだおすすめしたい乱歩先生の作品をここで三つほど挙げたいと思います。



【二銭銅貨】乱歩作品の代表的な暗号もの


 シャーロック・ホームズ作品の暗号ものといえば『踊る人形』。では江戸川乱歩作品の暗号ものといえば?

 恐らく、多くのファンが『二銭銅貨』と答えるのではないでしょうか。ミステリには欠かせない題材ですよね。暗号はロマンです。


 語り手の「私」とその友人の松村が、下駄屋の二階の部屋で話をしています。話題は、巷を騒がせている紳士泥棒の件。ある工場に新聞記者のふりをして訪れ、職工たちの給料を盗んだのです。ほどなくして犯人は逮捕されますが、泥棒は犯行こそ認めたものの盗んだ金の在処を一切白状しません。警察も手を焼いていたその頃、下駄屋の「私」と松村の間では驚くべき会話が繰り広げられていて――。


 題名にもある、たった一枚の二銭銅貨から展開される暗号ミステリ。本作品では松村という男が暗号を解いていくのですが、その解読法が実に凝っています。そして最後には、解読者の松村も読者もあっと驚く仕掛けが待ち受けている!


 余談ですが、『二銭銅貨』は乱歩先生の処女作だそうです。ここから作家乱歩のすべてが始まったのかと思うと、読了後の感慨もひとしおですね。乱歩生誕を記念して読むのにふさわしい一作といえそうです。



【黒手組】名探偵の粋な計らいが印象的な短編


 明智小五郎シリーズの一作です。正直、他の有名作品と比べると地味な印象が拭えませんが、個人的には結構お気に入りの明智ものだったりします。


 ある家の娘が、黒手組という世間を騒がせている強盗に誘拐された、という場面から物語は始まります。黒手組は娘の家に脅迫状を送りつけ、身代金と引き換えに娘を返すと持ちかけるのです。そこで、探偵の明智が事件解明に乗り出し、賊から娘を無事助けようと奮闘するのですが――。


 思い出しましたが、実は『黒手組』にも暗号が登場します。『二銭銅貨』のように暗号が主眼の話ではないので、すっかり忘れていました。ですが真波がここで主張したいのは、トリックの妙とか予想外の犯人とかそういうことではありません。


 この作品において最も印象深いところ、それは物語の終盤で明智が垣間見せた人柄です。「どういうこと?」と思われた方はぜひ本作を読んでみましょう。「クールで冷静沈着に謎を解く」探偵像とは少し離れた、チャーミングな探偵明智が拝める一作となっています。


 蛇足ですが、『黒手組』という題名も何気に好きです。真っ黒な手袋が賊の一味である証、みたいな集団なのかしら。そう考えながら読むと、そこはかとない不気味さが作品に漂います。乱歩作品はネーミングセンスも秀逸なんですよね。



【何者】ストレートな推理ものを楽しみたい方に


 江戸川乱歩作品の中でも、とりわけストレートな本格推理作品です。巧妙な謎解きを楽しみたい方にぜひおすすめしたい一作です。


 語り部の「私」こと松村とその友人の甲田が、共通の友人である結城弘一という男の家に行くところから物語は幕を開けます。三人は学生として最後の夏を、弘一の父が所有する屋敷で過ごす計画でした。ですがその屋敷内で、弘一が盗賊に襲われピストルで撃たれるという事件が起き――。


 本作には、探偵役を担う人物が二人登場します。一人は、何と被害者である結城弘一。被害者自ら探偵役を務めるのは珍しいパターンですね。そしてもう一人は、結城の屋敷をたびたび訪れる赤井という男。こちらも中々のクセモノですが、最後には意外な正体が明かされます。


 弘一青年は松村が集めてくる情報をもとに、実に論理的な推理を組み立てていきます。本作で押さえておきたいのは、これは物語内でも松村が指摘していますが、一見どうでもよさそうに見える手がかりが実は推理を構築する上で重要な材料になっている点。弘一青年が事件の細かいパーツを組み合わせてロジカルな推理を展開していく場面は、ミステリファンの血を騒がせることでしょう。そして最後には、赤井による逆転推理も待ち受けています。


「何者」という簡潔な題名が、またいいですね。犯人への挑戦的な言葉にも聞こえますし、最後まで読むと犯人以外の()()()()への問いかけとも考えられそうです。

 手がかりをじっくり探しながら、犯人が「何者」なのか推理してみてください。


だいぶ期間が空きましたが、いよいよ次回が乱歩エッセイ最終回です。最後は、乱歩の長編作品を紹介します。

実を言いますと、真波は乱歩の長編をまだひとつしか読んでいないので、それをじっくり解説(?)します。どの長編が紹介されるか、ぜひ首を長くして待ってほしいと思います。

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