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【ノンシリーズ編】江戸川乱歩短編作品ミステリベスト3

※注意点※

・作者(真波)は短編作品を中心に乱歩を読み進めていますので、ランキングのほとんどを短編および中編作品が占めております。悪しからず。

・ネタバレ厳禁のルールに則り、結末やトリックが判らない程度で作品を紹介しています。


 明智もの以外にも乱歩先生は多くのミステリ作品を残していますが、今回はその中でも甲乙つけ難いノンシリーズミステリ短編のトップ3を発表します。

 前頁の明智ランキングに劣らず、強烈な個性を放つ作品たちがランクインしています。



【第1位】人間椅子


 突然ですが、真波には「名前惚れ」という妙な性癖があります。人の名前や物の名前で、好みにグサリと刺さるものに時々出会うのです。そういう意味では、『人間椅子』のインパクトは本ランキングに多大な貢献をしました。『人間椅子』……何度口にしても飽きない響きではありませんか。


 あらすじとしては、ある女流作家のもとに届いたファンレターから物語が展開します。「私は今、あなたの前に、私の犯してきました世にも不思議な罪悪を告白しようとしているのでございます」という文章で始まる手紙。そこには、女流作家の驚愕する内容が綴られていて――。


 冒頭で読者を一気に物語に引き込ませます。そして最後に待ち受ける結末は、さすがミステリの大作家というだけあり、女流作家も我々読者も鮮やかに騙してくれるのです。読後、改めて「題名は『人間椅子』でしかありえない」と納得する秀逸なネーミングです。


 殺人の起きない本作、ミステリに属するのか今一つ判断しかねますがどうでしょう。ちなみにウィキペディアには「スリラー小説」と説明されていますが、個人的には内容の変態性も考慮して「ミステリとエロの混合小説」ぐらいの認識でいます。


 ミステリだけでなく刺激的な要素も欲する方に、本作はぜひおすすめです。



【第2位】赤い部屋


 シンプルな題名が映える一作。異常な興奮を求めて、7人の男が「赤い部屋」に集まった――という魅力的な書き出しから始まります。シチュエーションは、個人的にはアシモフの『黒後家蜘蛛の会』を連想しますが、内容はもっと驚くべきもの。新参者であるT氏が、自らの犯した恐るべき犯罪について語り出すのです。


 自身の重ねてきた悪行の数々を、淡々と語るT氏。固唾を呑んでT氏の語りに聞き入る他の参加者。そんな場面が脳裏に浮かびます。毒々しい真っ赤な部屋の中は、まさに異常な興奮に包まれるのです。


 T氏の独白は物語の後半まで続くのですが、その衝撃的な内容にページを捲る手が止まりません。そして、罪の告白を終えたT氏が最後に起こした予想外の行動とは?


 本作は、乱歩作品の中でも「〇〇〇〇〇〇〇〇の犯罪(ネタバレ禁止につき伏字使用)」をテーマとしたものとして有名。実は、谷崎潤一郎の短編作品『途上』に影響を受け執筆したのだそう。併せて読むと犯罪小説の勉強にもなりそうです。


 血を連想させる不吉な空間を想像しながら、ぜひ『赤い部屋』の物語を堪能してください。

 


【第3位】二癈人


 同じ「二」から始まる『二銭銅貨』と迷いましたが、真波の好みで『二癈人』を選出。殺人事件が起きる歴としたミステリです。


 斎藤と井原という二人の男が、温泉宿の中で歓談しています。斎藤氏が自身の戦争体験をドラマチックに語った後、井原氏は「夢遊病」という自分の特殊な性質が起こしたある悲劇を話し出すのです。昔話が終わったとき、井原氏はあるとんでもない可能性に思い至る――というあらすじ。


 夢遊病、つまり夢の中で殺人を犯すトリックは、個人的にはよほど上手く扱わないと駄作になりがちな題材、という印象です。多重人格ものも同様ですね。そこをしっかり料理して仕上げている点は、さすが乱歩先生というべきでしょうか。夢の中の犯罪という設定もあり、幻想ミステリのような風味にもなっていると思います。


 上位2作品と比べるとややインパクトに欠けますが、「人間のあくどさ」が浮き彫りになった興味深い物語でもあると思います。読後、真波の頭を真っ先によぎったのは「正直者は馬鹿をみる」という教訓でした。



 なお、2位と3位の話にはオマージュ作品があります。推理・ホラー作家の三津田信三による『犯罪乱歩幻想』という著作の中に、『赤過ぎる部屋』『夢遊病者の手』が収録されています。こちらも併せて読むと乱歩ワールドをより一層楽しむことができるでしょう。

本ランキングもまた、江戸川乱歩を語るなら把握しておきたい作品群。特に栄えある1位の『人間椅子』は、エログロナンセンスものを得意とする乱歩先生の代表作でもあります。その独特すぎる世界観は、蟻地獄のごとく一度嵌ってしまうと抜け出すのは至難の業。そこを覚悟の上、乱歩沼に足を踏み入れてほしいと思います。

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