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今夜12時、誰かが眠る。  作者: 下之森茂
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ぬるま湯で眠るなかれ

体外離脱という用語がある。


用語の呼称は様々だが、総じて

肉体の眼球以外で何かを見る経験を示す。


生霊、幽体離脱、臨死体験、スピリットウォーク、

アストラル投射、エーテル体…。


その歴史は古く、世界中で複数に存在し、

実際に大勢の人間が自らの体験を語っている。


生きている人間が寝たまま、

自分自身の体を空中から見ることができる、

自己像幻視。


また移動の手間もなく、

遠くのヒトに会いに行くことができた。


薄暗がりの中で体温に近い高濃度の塩水に浮かび、

脳波を検出して科学的にメカニズムの解明を行う

実験もかつてはあったが、体外離脱の

証明には至らなかった。


しかし薬学の発展と共に、

『体外離脱薬』が発明されたのは

つい先日のことである。


法的認可はまだこれからの段階ではあるが

体外離脱薬は麻酔の薬理作用に近く、

それでいて肉体への悪影響は無いとされた。


体外離脱は時間や場所の束縛を受けず、

壁などの物体や、肉体の障害を受けることもない。


画期的な薬の発明によって、ヒトとヒトとの

新たなコミュニケーションの発展を担うであろう

と、大きな注目を浴びた。


――肉体は魂の束縛に過ぎない。


この薬を使えば、肉体の苦痛も、

魂が証明されれば、将来への憂いがなくなる。


薬の研究が進めばガンや精神疾患などの難病にも

将来的には効果が期待できるとして、

元医者はこれを自著にて絶賛した。


体外離脱薬を服用すると温かな魂を感じられ、

温水プールに浮かぶような浮遊感と快楽を得る。


その薬効に製法を求める声は増え、

薬の横流しが横行した。


認可を待たずして、若者たちに

広く氾濫したのも時間の問題であった。


だが肉体はやがて耐性を持つ。


最初は1回1錠で済んだ薬も、

浮遊感の持続時間は減少し、

薬の量は日増しになる。


薬を求める声は大きくなり、値段は高騰した。


ヒトは快楽に溺れ、依存する。


そして、溺れたヒトの魂が

帰って来ることはなかった。


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