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今夜12時、誰かが眠る。  作者: 下之森茂


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自縄自縛の例

ヒトはそれを地縛霊と呼ぶ。


地縛霊という言葉は近年できた造語であるが、

その存在は世界的に古くから知られている。


突然訪れた自身の不幸を受け入れられずに

死んだ者や、恨みや憎しみなどの感情が死後、

オバケになってもなお生前の強い妄執によって

土地に魂を縛りつける――というものだ。


交通事故だけではなく、戦争や災害、

事件によって何十年、何百年と

その場所にとどまることになる。


地縛霊は時代や昼夜を問わない。


古戦場で、深夜のバス停で、廃駅、廃病院など、

決まって好事家からの報告は多い。


――土地、などという線引きも

ヒトの都合に違いなく、実に曖昧ではある。


しかしながら現代においてそんな地縛霊は、

やや住みづらい時代となったと言えよう。


不動産や建設バブルの影響で

土地や建物は常に変化を続け、

オバケがひとつの場所に留まるには

時代の流れが早すぎた。


寿命が長くても居場所が無い。


納骨堂さえも近代化が進み、

骨壷はマンションのような建物に収容され

機械によって運ばれる様子を見て、

インターネットで参拝が可能となった。


お墓が七色に光る時代までやってきた。

ゲーミング墓石とさえ呼ばれるそうだ。


どれも化けて出るには雰囲気が冴えない。


バブル崩壊後には建物の老朽化、

人口集中と過疎化が進んだ近年では

路上生活を送るホームレスなオバケも多い。

不景気で若者が一軒家を買わないからではない。


建物や土地などには関係無く、

ただひとつの妄執が、ヒトをオバケへと変える。

成り立ちは至極一般的で、単純なものであった。


今日もまたひとり、前を見ずに路上を飛び出し、

ひとつの妄執によってオバケが誕生した。


生前大事に握っていたのはスマホであった。


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