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今夜12時、誰かが眠る。  作者: 下之森茂


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鬼の居た国

かつてこの国には鬼と呼ばれる妖怪が居た。


二足歩行でヒトの姿に似ているが、

赤や青の肌をして、額には角があり、

牙をむき出しにした醜悪な容貌であったとされる。


全身が毛深く骨太でいて筋肉質の怪力で、

性格は残虐極まりなくて集落を荒らす為に

朝廷は鬼の討伐を武家に命じた。


大嶽丸(おおたけまる)を退治した坂上田村麻呂、

酒呑童子(しゅてんどうじ)に酒を振る舞い罠にはめた

源頼光らの活躍が後世に伝えられている。


きび団子を食べたイヌやサル、果ては

キジにまで負ける鬼のおとぎ話もある。


ヒトや食料を求めて都市に現れるが、

刀や銃が発展すると鬼は簡単に狩られた。

酒にも弱く罠にも引っかかりやすい。


人里離れた山や森、洞窟などに棲息し、

農民が遭遇することも少なくはなかった。


言葉は通じず凶暴で、

被害を被るのは決まって女や子ども、

老人などの非力な相手である。


出没の報を受ければ猟師たちが集まり、

鬼を退治するべく山狩りを行った。


鬼は次第にその頭数を減らし、

姿を目撃にするヒトも少なくなった。


今では生物や植物の名称にオニを冠したり、

近年ではその尖った性質を、商品名や

パッケージに添えることも少なくはない。


ヨーロッパではオーガと呼ばれる近縁種もある。


宮殿や城などでヒトに化けて生活するなど、

その生態はこの国の鬼と大きく異なった。


鬼の頭数は減少して、現在では過去の悪行を

知るヒトも減り、絶滅危惧種となった。


そうなると今度は保護しようする団体が現れた。


団体は動物愛護や環境保全活動など、

慈善事業として捉えて後先を考えなかった。


団体メンバー個人が鬼を違法に匿ったが、

鬼に襲われる事件が発生したことで

結局退治を免れることはなかった。


事件によって団体を離れるヒトは増え、

鬼の保護活動への関心は薄れた。


鬼はさらに減り続け、

発見や退治の報告もされなくなると

間もなく絶滅が宣言された。


鬼の絶滅を惜しむ声は

国内外から大なり小なりあったが、

ヨーロッパからオーガを輸入する

鬼の代替案は当然却下された。


ヒトに化ける鬼など、まさに

疑心暗鬼になりかねないからだ。


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