第7話 婚約者と知られたくない理由って?
「行ってまいります。ディアルディさん、くれぐれも家から出ないで下さいね。散歩もダメです」
次の日の朝、ルナードは朝食を追えると、ディアルディはそう言って家を出て行った。
そんなに俺が婚約者だと知られたくなにのか。
ディアルディは、何となくむしゃくしゃした。
うん? まさかと思うがもしかして想い人でもいるのか?
ディアルディは、それなら納得できた。神官でありながらと思っていた所にディアルディがきた。好きな相手がいると言うタイミングを逃した。そして勿論、その相手には、ディアルディの存在は知られたくない。
悪いけど、俺の噂を広めなくちゃな。
結婚なんてどうでもいいと思っているのなら隠す必要はない。隠さないといけない理由がそれしか思い当たらないディアルディは、ラルーが買い物に出かけた隙に、そっと抜け出した。
街へと繰り出し、迷子にならない程度に歩く。昨日歩いた道なら大丈夫だろうと歩いていると、昨日の少女に出会った。
「こんにちは!」
明るく挨拶をされたので、軽く会釈する。
「今日はお一人ですか?」
こくんと頷く。彼女は、不思議そうにディアルディを見つめている。そして、ディアルディも見つめ返す。
まさかこの子というわけじゃないよな?
出会った女性が彼女だけなのでわからない。かと言っても聞く手段もないのだ。
紙とペンを持ってくればよかった。
言葉が話せないという事さえ伝えられない事に、ディアルディは気がついた。
「あ、もしかして迷子ですか? 神殿に行きますか?」
いやそこは、まずい。
ふるふると、首を横にふる。
「ディアルディさんは、話せないんだよ」
驚いて振り返れば、ダンザルだった。近づくなと言われていたのに、出会ってしまったと、ディアルディは焦る。
それに直感的にディアルディは、この男は手を出して来るタイプだと思ったのだ。
「俺が送るよ」
「そうですか。では、お願いします。気を付けて帰ってくださいね」
少女は、軽く頭を下げると行ってしまった。
「お散歩かな? 俺が案内するよ」
結構だとふるふると首も横に振るも、遠慮するなとガシッと手を掴まれてしまう。
「見晴らしがいいところがあるんだ。連れて行ってやるよ」
どうしたらいい? ここで暴れたらマカリーさんに迷惑がかかるかもしれない。
襲われてから反撃しようと、大人しくついていく事にしてディアルディは頷いた。
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「あ、こんにちは。さっき昨日の女性にあいましたよ」
そう声を掛けられたルナードは驚く。
「どこで?」
「昨日、お会いした場所辺りです。大丈夫ですよ。ダンザル様が送り届けてくれるようですので」
「ありがとう」
大丈夫なんかいじゃない!
「少し出て来ます」
「あぁ、いいけど、どこへ?」
「人探しです!」
そう言うと、昨日の場所へとルナードは走る。
「あのバカ! 何出歩いているんだ! ダンザルの気配探せるか?」
『えぇ。向こうよ。何かあったの?』
「わからないけど。ディアルディと一緒ならやばい!」
人通りがない場所へ連れて行かれている可能性がある! のこのこついて行っていなければいいけど!
ルナードは、全力疾走でダンザルがいる場所へと向かった。