第31話 おびき寄せられた二人
「ふう、ついた」
そう言ったのはディアルディだ。場所は、ルナードが目指していた岩場。ディアルディにとって嫌な思い出の場所だ。しかし、彼もまたルナードと同じく火を消しにここに来ていた。
ディアルディは、ラルーと一緒に偶然、街に来ていたのだ。逃げるフリをしてここまで来た。
「きて……」
遠ざけていた精霊を呼ぶ。
「お願いがあるんだ……」
『ディア、誰か来る……』
え? こんな所に誰が! 追って?
『あ、あの時の人だよ』
ルナードか! なんで……って、火を消しにきたのか?
咄嗟にディアルディは、岩陰に隠れる。気を付けないと落ちそうだ。
隠れて見ていると、ルナードはためらいなく、森の方面の岩壁に登り立った。
風もあり、神官の制服が音を立ててパタパタとなびいている。
おいおい。危ないって。
ハラハラしてディアルディは見ていた。
「まず、状況を教えて」
ルナードが、森を見つめつつ精霊に聞く。
『誰かが火をつけたのよ! 広がらない様に抑えてるけど。森を守って!』
「大丈夫。私がなんとかするから」
森には精霊達が住んでいる。木に宿るのだ。
「まずは、街側に結界を。辺りの水分を森に集めて!」
『うん。みんなにお願いするけど、魔力大丈夫?』
ルナードは頷いた。
精霊に自分の魔力を分け与え、お願いごとを実行してもらう。契約上そうなってはいるが、今回は契約していない精霊達が自分達の住処を守る為に、動いてくれる。
暫くすると、煙は少なくなった。
『ルナード! 火は鎮火しわ! ありがとう!』
「よかった……」
ルナードはふらついた。と、その時、ぐいっと後ろに引っ張られる感覚があり、見るとディアルディだった。彼に受け止められ、森には落ちずにすんだ。
ディアルディは、ルナードを抱きしめたまま、倒れ込みそして安堵する。
「なんで、ディアルディさんが……」
『ディア!』
突然、精霊の焦った声で顔を上げると、切り裂く程の疾風が二人を襲った!
ディアルディは、咄嗟に何もできなかったが、それで切り刻まれる事はなかった。
「ほう。さすがマカリーの孫。命令しなくても精霊に守ってもらってるとはな」
「……誰だ! ゴロツキをよこした奴か?」
ルナードは、ふらつきながら上半身を起こし、岩壁に立つフードを被る男を睨み付けた。
「あやつ、上手い事考えたもんだ。女装させるとはな!」
「!」
ディアルディは、ぎょっとする。だがルナードの方は驚く素振りを見せず、男を睨み付けている。
「森に火をつけたのは、あなたですか? 精霊を扱うと言うのに!」
男の言葉を無視して、ルナードは叫ぶ。
「あぁ、おびき寄せる為にな。精霊で火を消しに来ると思った」
私がターゲット?
そう驚くルナードだが、次の言葉でディアルディだと確信する。
「街に買い物に来たのでな。あの女がじゃまでな」
「彼女には、手出しさせない! 私の婚約者だ!」
スーッと、ディアルディの前にルナードは出た。




