第18話 ミリサのお願い
サク。パンの耳はサクサクで甘い。それを一かじりして、食べ掛けを見つめミリサは語り出す。
「私はいわゆるお転婆娘だったんだ。なのにある日、女、女、しやがって、って喧嘩した時に言われてね。あ、小さい時の話よ。今から想像もつかないでしょう? 昔は、ルナードも普通の子供だったのよね。でも、私にとっては違ったの」
懐かしむような目で、食べ掛けを見つめている。
「さっきも言ったように、男顔負けのお転婆だったから女の子として見られていた事に驚いたわ。幼心にズキューンよ。それから気になっちゃって。ずーと片思いよ」
そう言うと、パクッと食べ掛けを口へ放り込む。
「わかっていたけど、去年告白したのよ。私をお嫁さんにしてって。彼が誰とも結婚する気がないとわかっていたけど、伝えたかった。思った通り振られたわ。でも、初めてのキスはルナードとしたいとお願いしたらしてくれたわ」
え!?
危なくディアルディは、声を出すところだった。
「といっても、ここね」
そう言ってディアルディを見上げるミリサの指は、おでこを差していた。
「キザよね。ここで許してだって……」
確かにキザだな。想像がつかない。
「彼の精一杯だったんだと思う。別れ際にこれ買ってくれたんだ。私には、女友達がミリサしかいないからこれからも友達でいてほしいって。本当に乙女心わかってないわよね」
「………」
「これ見る度、ルナードを思い出しちゃうじゃない。その度に……」
そう言ってミリサは、おでこに手を持って行った。
「彼を幸せにしないと許さないからね! 私が出来なかった事、あなたがするんだから!」
ミリサは、涙目だった。彼女の想いに応えてあげたいが、ディアルディでは女としてルナードを幸せにはしてあげられない。
答えられずに、ディアルディは俯いた。
「ごめん。意地悪だったわ。でも私もルナードの事は思い出にして、旦那様に尽くすつもりだからあなたもそうして欲しいの! わかってる身勝手だって」
もしかして俺が、ルナードに思ったように、18まで婚約も結婚もしていないのは、そういう想い人がいたからと思ったのか?
『私の人生を捧げるつもりです』
そう書いてミリサに見せた。
ミリサは、驚いた顔をしたが、彼女は「ありがとう」と微笑んだ。
「はい、これ」
戻ったミリサは、食べ掛けのパンの耳をルナードに渡した。
「もしかして、二人で半分食べたの!?」
「食べたいのなら帰りに買って帰ればいいじゃない」
「帰りだとなくなるかも! 買って来るから待っていて!」
三人を置いて、ルナードは駆けて行った。驚いてルナードを見つめるディアルディにミリサは言う。
「彼の好物だから機嫌を取りたい時に、買って帰りな」
そうすると、ディアルディは頷いた。




