070 手島祐治 4日目①
手島は考えていた。
もっと効率的に稼ぐ方法はないものか、と。
できれば皆で協力して稼げる方法がいい。
果物の乱獲みたいな武藤のワンマンは望ましくない。
武藤が機能しなくなったらおしまいだからだ。
「というわけで、今日から漁を行う」
4日目の朝食後、手島が言った。
「漁って、魚を捕まえるアレ?」と里桜。
「そう、その漁だ」
手島は頷くと、右の人差し指を立てた。
「本来、漁業とは大変な重労働になるが、俺達の場合は事情が異なる。捕獲すれば勝手に消えてお金になるからだ。よって、大変なのは最初だけだ。もし上手くいけば、一気に大金を稼ぐことができるはず」
「でも漁をするなら漁船が必要なんじゃないか?」と重村。
「たしかに漁船はある方がいい。だが、なくても問題ないさ。昨日、海の中を調べた限りだと、この島の周辺には魚がうようよいる。数千・数万匹の魚を獲りたいなら話は別だが、数十・数百匹で十分な俺達にとっては泳いでいける範囲で大丈夫だろう」
「なるほど」
「それより問題は漁が成功するかどうかだ。この中に沿岸漁業の経験者はいるか?」
「「「…………」」」
「そうなると、ググールで調べて出てきた方法を試していくことになる。失敗したら一文の収益にもならない可能性があるけれど、それでもかまわないか?」
「俺は手島さんに任せるよ」
いの一番に重村が答える。
「私も」「俺も」
それに里桜と武藤も続く。
「なら今日は漁に挑戦するとしよう。全員で海に行くぞ」
「「「おー」」」
◇
「さて、これから俺達の行う漁法についてだが――」
海に到着すると、手島は具体的な計画を説明した。
「――ずばり〈定置網漁法〉だ」
「なんかそれ聞いたことあるー!」と里桜。
「文字通り定位置に網を張って魚群を漁獲する漁法だ」
「網を張るだけで勝手に魚がやってくるの? 餌とかも不要?」
「不要だ。魚の進路に障壁となる網を設置すると、それに当たった魚は網に沿って進路を曲げる。あとはその先に待ち構えている円状のフロアに入って終了だ。俺達はそのフロアに集まった魚を根こそぎ漁獲するって寸法だ」
「天才じゃん!」
「上手くいけばの話だがな」と笑う手島。
定置網漁で大変なのは、網を設置する最初の作業だ。
設置に問題がなければ、以降はサクサクと漁獲することができる。
「したり顔で説明しておいてなんだが、俺も詳しいことはよく分かっていない。とりあえずググールを参考に網を張っていこう」
手島達は購入した水着に着替える。
まずは男子から着替え、その後に里桜だ。
「絶対にこっち見ないでよ!」
里桜の視界には手島達の背中が映っている。
「俺は別に見てもいいだろ」と手島。
「今回はダメ!」
「意味がわからん。ま、なんでもいいから早く着替えろ」
「もうちょっと待って!」
里桜がそそくさと着替えていく。
脱ぎ捨てられる衣服の音を聞くだけで、重村は興奮した。
「重村、お前、分かりやすいな」
武藤が笑う。
「な、なんのことだか」
「とぼけたって無駄だぜ」と手島も笑った。
重村は顔面を真っ赤にして俯く。
「着替えたよー!」
里桜が振り向いていいと言うので、3人は振り向く。
「あのさぁ……」
里桜の姿を見て、手島は呆れ笑いを浮かべた。
「俺達は今から定置網漁業をするんだぞ」
「うん、網を設置するんでしょ?」
里桜がきょとんとした様子で答える。
「それが分かっていてなんでそんな水着を選んだんだよ!」
里桜の水着は、細い紐が特徴的なピンクのビキニだった。
作業中にうっかり、いや、なにもなくても切れそうな程に細い。
それに、水着の面積が狭くて、ギリギリまで露出している。
重村は直視することができなかった。
「えー、この水着だめ? 可愛いと思ったんだけど」
「実用性重視で選べよ! 可愛さなんてどうでもいいんだよ、今は!」
「可愛い水着のほうが作業も楽しいもん!」
不満そうに頬を膨らませる里桜。
手島は「なんて女だ」と再度の呆れ笑いを浮かべた。
「まぁいい。皆、スマホを水着と繋げたな? 作業を始めるぞ」
手島達は水泳用のゴーグルを装着して海に入った。














