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美少年に転生しまして。〜元喪女の精霊と魔王に愛され日々!〜  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
◆序章◆

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8/13

08 引っ越し。




 予想通り。冒険者団体の『ドムステイワズ』のホームから引っ越しをすると言えば、リーダーのタイリースさんが号泣してしまった。


「なんでだぁああ、ノークス!? あの家に戻るのは、結婚してからだと思っていたのに!! なんでだぁああ!?」


 家族を持ってからあの家に戻るとばかり思い込んでいたようだ。

 結婚か。全然想像つかないや。

 相手誰だろう。むしろ性別はどっちなんだ。

 私はどっちを好きになるのだろうか。

 そんな疑問を覚えつつも、私はタイリースさんを宥めた。

 呑んでもいないのに、号泣しだしたタイリースさんの元にメンバーが集まってきて、原因を聞く。すごく驚かれてしまった。


「え? ホームを出て行く!? なんでだよ!?」

「あたし達のせい!? こき使ったから!!」


 シルバーランクのレベル1のメンバー達が騒ぎ出す。私とパーティーを組んでくれたシャロンさん達だ。


「違いますよ。オレはただ……」


 オレは事情を話して、それから三体目の精霊のリーデを紹介した。


「リーデなのー。よろしくー」


 くるりん、スピンをして登場したリーデを見て、一同は固まる。

 それから怒涛のような文句が、私にぶつけられた。


「精霊三体持ちだと!? ふざけんな!!」

「心配して損した!!」

「三体持ちとか、聞いたことねーし!!」

「ずるすぎるだろ!! お前!!」


 ゴッと拳骨が落とされてしまい、私は涙目で頭を押さえる。


「皆ひどっ!! 痛いよジョーさん!!」

「自分だけ精霊と契約するからだ!」

「精霊からオレと契約したいって言うから!」

「もう一回殴られたいのか!? このモテ男!!」


 まだ拳骨を落とそうとするジョーさんから、離れる。


「ノークスが昔の家に戻るって言うんだ、皆も悲しみなさいな。寂しいよ、ノークス。でもいつでもご飯を食べにおいで」

「リリンさん……!」

「そうだ! ここもお前の家だ!! ノークス!!」


 リリンさんが涙ぐみながらに言ってくれたあと、タイリースさんが私を苦しいほどきつく抱き締めてきた。痛いけれど、気持ちが嬉しいから受け入れる。

 そのあと、パーティーだったリーダーのウォンさんやシャロンさん、それからエイブさんとウィルさんが、私の引っ越し祝いをしてくれた。ただの乾杯なのだけれども。

 冒険者になった時のようにお酒を勧められたけれど、それはちゃんと遠慮した。




 一日休ませてもらい、引っ越しをする。

 元々、荷物は大してなかった。服に生活用品くらい。だから自分で抱えて運ぶのは、往復三回くらいで済んだ。ローズとルーヴァとリーデも、少し手伝ってくれた。

 冒険者団体の『ドムステイワズ』のホームから、あまり遠くない。歩いて、五分くらいの距離だ。

 アルジスの街によく馴染む薄茶色の屋根。一階建てで、ダイニングルームとキッチンとバスルーム以外に、部屋が四部屋ある。精霊にそれぞれ部屋を与えようとしたけれど、私と一緒の部屋がいいと言われた。

 なので、ローズとルーヴァのベッドを、私の部屋に運んだ。


「よし、ここが我が家だ」


 ただいまって、気持ちが大きい。

 またここに住めるとは、嬉しい限りである。

 私達の寝室は、昔からある私の部屋。十歳まで遊んでいた積み木などのおもちゃは、物置にしまった。代わりに、ベビーベッドを取り出す。それをリーデのベッドにした。ちょうどいいサイズで、気に入ってくれる。


「まぁ、皆の家だと思っていいよ。好きに寛いでね」

「そうさせてもらいます」

「そうするなの!」

「家が出来て嬉しいー」


 ベッドに飛び込めば、ローズ達は私の上に乗った。

 精霊はあまり重さを感じないから、軽い軽い。


「でもこれからが大変なんだよなぁー」


 掃除をする暇はあるだろうか。食事をする体力や時間がないなら、ホームに行けばいい。バスルームはあるけど、やっぱり掃除だな。

 快適に住むには、掃除する時間も設けなければいけない。


「一人暮らしは結構大変なんだよなぁ」

「一人暮らしの経験はないはずでは?」


 私のお腹に座ったルーヴァが問う。


「あ。話してなかったけど、オレ、前世の記憶があるんだ。わかるかな? 生まれる前の人生。まぁはっきり全部あるわけじゃないんだけどさ、その前世で一人暮らしをした経験があるんだよ」


 胸の上に突っ伏していたローズも、太ももに貼り付いていたリーデも、顔を上げて、私を見る。


「前世、ですか……」

「やっぱりこの世界でも珍しいことなの?」

「いえ、本人が話さないだけで、いると思われます」


 ルーヴァはそう答えた。


「オレは前世から生まれ変わりたい願望を持っていたけれど、まさか男の子になるとは思わなかったなぁ」

「え!? 前世は女の子だったなの!?」

「うん」


 ローズが驚きで声を上げる。

 女の子というか、喪女だけれど、そこまで言わなくていいだろう。


「なんだ? ローズ。元女の子のオレは嫌か?」


 起き上がって、首を傾げてローズを見た。


「なっ! 嫌だなんて言ってないなの! ノークスはノークスなの! 好きなの!!」

「わたちも好きなのー!」


 ローズとリーデに飛び付かれた私は、ベッドに倒れ込む。


「あはは、ありがとう」


 抱き締めるのはちょっとローズが柔らかすぎて不安なので、頬擦りで留めておく。


「ノークス。一人暮らしではありません。精霊三体がついています。一緒に生活していきましょう」


 ルーヴァが冷静な態度で告げた。


「そうだね、うん、一人じゃなかった。これからもよろしくな? 皆!」

「よろしくなの!」

「よろしくー」

「よろしくお願いします」


 両親と暮らしていた家で、精霊達と新しい生活を始める。


「早速ですが、冒険者業について確認をしましょう。ブロンズランクだからといって、油断はいけませんよ」


 片眼鏡をくいっと上げたルーヴァ。


「うん、わかってるよ。ルーヴァ」

「リーデは光の魔法を使うのですよね?」

「あとねー、鼻がきくのー」

「「鼻?」」


 ルーヴァと私は声を重ねた。

 リーデは自分の黒い鼻を、ぽむっと押す。


「犬みたいに嗅覚が鋭いってこと? じゃあ魔獣の捜索に役立つね! 探し回る手間が省けるよ!」

「役に立つのー」

「後ろは任せるなの!」


 リーデに魔獣の捜索をしてもらい、ローズには後ろを見張ってもらう。それで決定だ。


「よし。明日に備えて寝よう!」


 それぞれベッドがあるというのに、何故か私と同じベッドで寝ることにする精霊達。寝返りで潰してしまうことが心配だから、寝返りしないようにしよう。

 翌朝起きたら、顔を洗って髪を整えた。

 着替えて、腰にナイフ二つを装備したら、冒険者団体『ドムステイワズ』のホームに行くために家を出る。


「いってきます!」


 亡き両親がいると思って、出掛ける挨拶をした。

 冒険者として、この家から出掛けるって、なんか最高な気分だ。

 まるで、冒険者の初日の気分。

 ホームでしっかり朝の挨拶をして、朝食をもらってから、また「いってきます」を言う。

 ギルド会館までルーヴァを送り、街を出てブロンズランクの森に直行した。

 リーデの鼻は、結構便利だと思う。

 リーデは街の外に出ることが初めてらしく、興奮で小さな尻尾を激しくプイプイと振っていたけれど、ちゃんと仕事をしてくれた。


「あっちから兎っぽい匂いがするー!」


 そうリーデが言えば、一角ツノの兎型の魔獣がいたので狩る。


「こっちから猪っぽい匂いがするー!」


 そうリーデが言えば、猪型の魔獣がいたので、それも狩った。

 そんな調子で森を駆け回り、魔獣の討伐はスムーズに済んだ。

 普段の二倍近くは狩った気がする。ポーチがパンパンに膨れた。

 正午になって、ギルドに出勤。換金を任せたルーヴァに、上々だってことを嬉々として話した。基本、自分で換金しない。ズルなどを疑われないためだ。


「それはよかったです。本当ですね、二倍の金額になってます」

「でしょでしょ?」

「わたちの鼻すごいー」


 のほほんとしているリーデを、ローズと一緒になって撫でた。もふもこである。

 換金専用窓口をギルドの経営時間まで担当して、ホームの方に帰った。夕食のためだ。皆に「おやすみなさい!」と言って、次は自分の家に帰る。

 水の魔法で水を出す。宙にまとめた水に火の魔法を纏わせて熱湯に変えてから、浴槽にジャバンと落とす。それで、まったりとお風呂に浸かった。

 銭湯代が浮くし、誰の目も気にせず、一人でお風呂って気兼ねしなくていい。あ。精霊が一緒だった。

 ほっこりしたあとは、寝室に行く。


「今日もお疲れ様。ローズ、ルーヴァ、リーデ。おやすみ」

「おやすみなの! ノークス!」

「おやすみなさい」

「おやすみー」


 それぞれが自分のベッドに潜ったことを確認してから、ぐっすりと眠った。



 

20190904

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