断罪プロローグ
やる気がすぐなくなってしまう。からいものです。完結させることが偉いんだってきいたんで完結させるのが目標です。
「ロミティ・ラクフィス!貴様を大罪人とし、処刑する」
…まぁ、わかってたことなんだけどね!
跪き淡々と事の沙汰をきいている私の名はロミティ・ラクフィス。ラクフィス侯爵家の令嬢である。
大罪を犯した事で現在、この世界の国王から粛々とこれからについて伺っている所である。
周りの貴族連中や、発端となった連中がニマニマと私を見ているのを視界の端で感じる。
顔を伏せ、雪崩れている私に「自業自得」だとヒソヒソというい声が聞こえるが、私の心境はこうである。
(計画通りだな…)
猫の様な顔がニタニタと歪になるのをを見られなくてよかったと、サイドに垂れる髪の感謝していた。
(やってられっかっつーの!!!こんな状態の世界情勢で!)
ロミティは正直この世界が最初から嫌いであった。
前世不慮の事故で死亡したロミティは過去、平成で働く日本人としての記憶を所持したままこの世界に転生した。
だが、この世界は【麗しく散る。戦乱のマリアローズ】という誰向けにつくられたかわからない。様々な要素が加わった恋愛趣味レーションMMORPGである。
恋愛シュミレーションを軸にしたMMORPGという前代未聞さに世間は沸いた。
だが、このゲームとにかく難しいのである。
ヘラヘラした女子が「このイケメンちょうかっこいい」とかいいながら安易に手を出すと、プレイヤーにサクっとキルされてしまうのだ。
「いや、オフラインでやればいいじゃん?」って思うかもしれないが、このゲームは恋愛趣味レーションRPGのの癖になぜかオンライン専用なのだ。
イケメンたちはNPCなのにだ。
イベントに至るまでの攻略が難しすぎるのだ。
イケメンを攻略したい女ヲタとVSイケメンは死ね!日頃の恨みガチキルプレイヤーVS恋愛RPGの枠組みを越えた世界観に魅力を感じ盛り立てたいと真面目に取り組む集団VS世紀末希望!殺戮しまくるぜ!皆殺しじゃぃ!っていうやつらが群雄割拠する事体。
そしてロミティはこのオンラインゲームで最初のイベントの口火を切る悪役令嬢である。
そして今、断罪イベントの最中である。
勿論ロミティは頑張った。
だが、考えてもみてほしい。
恋愛という不確定要素を織り込んでいるNPCと最早統率の取れないゲーム世界で好き勝手するオンラインプレイヤーである。
ロミティはNPCという肩書(実際は転生者だが)なりに色々、自分を鍛えたり、情勢に手を回そうとしたりし、処刑イベントをなんとかかんとか回避するえ立ち回ってみた。
オンライン開始前の赤子時代からスタートしたロミティの数ある策は普通にイベントとして消化された。
ロミティが講じた様々な対策はオンラインプレイヤーたちは情報を瞬時に共有し、掲示板で対策を練って、このNPCめっちゃ頭いいじゃん。もはや人間かな?って感じで話題を呼んだが、自身の運命は変わることなくここにきたのである。
途中からロミティは投げた。
もう無理だと。自分にとってはまぎれもない現実となっているこの世界も、所詮この世界に招かれたオンラインプレイヤーにとっては娯楽だ。
なのでロミティは保身に走った。
考えて考えて考えた。
自分にできること。
オンラインプレイヤーに出来ない事。
それは運命に縛られる代わりに、運営に縛られないという事だ。
この世界の理を正しく理解し、さらにその理が生み出した世界の歪を導き出した。
ロミティはゲームでの処罰後の消息が定かではない。
今、断罪されているこの瞬間、このあと連れ出されていくその場所までが、ロミティの確約された運命である。
その先はロミティの自由だったのだ。
だからロミティは強くなった。強くなって強くなって…断罪の後の未来が輝かしいものだと信じ、この日を迎えたのだ。
「世界追放とする」
(は?)
世界追放…
この世界からの完全抹消である。
ゲーム的にはデータクリアという事であろう。
いや、そういう事ではない。
(そんなのきいたことがない!!!)
貴族達も、この場所に紛れ込んでいる。プレイヤー達もざわざわとし始めている。
「なんだそれは?」「わからない」と、首をかしげている。
視界の端に移しておいた自分は関わる事ができないただ情報としての掲示板にもこの処罰の意味に騒然としている。
ロミティが犯した(実際には犯してないが)罪は幸せに暮らす本編の主人公。マリアローズが王子と恋に堕ちそれの邪魔をしていたというものである。
ロミティは侯爵令嬢として、婚約者として王子と主人公の邪魔をするというテンプレの令嬢であったが、そんな暇はなかったロミティは普通にこの流れを放置。
勝手に動くロミティに対し運営はこのロミティという存在を処刑と共に完全に抹消しようと考えた。その上手い方法が世界追放である。
(で、データの完全削除…?いや、今の私はたとえ、プレイヤー総出の討伐イベントが起こったとしても撃退しながら逃げる自身がある。NPCなら尚更、だから死を前提とした処刑イベントに備える事ができたんだ…なのに、追放?この世界から?そんなのできるわけがない)
この世界がデータではなく存在している世界だというのをプレイヤーという存在に邪魔され、助けられながらも確信した。
この世界の歴史においてそんな処刑方法は確率していない。
ありえない。絶対にありえないのだ。
だから、ロミティは叫んだ。
勿論、国王にではない。その向こう側の神に成り下がった人間共に対して。
「ふざけるな!!!婚約者は私で、奪ったのはそこの女だ!!私はせいぜい、国外追放、幽閉等の罰であるはず…っ!世界追放等きいたことがない!!」
「仮にも侯爵令嬢であったその身に相応しくないその物言い、やはり我らの思った通りだ。其方は我らの理の外側にいる。ならばそこへと還してやろうというのだ。むしろ温情ととってくれても構わぬのだぞ」
「なっ…」
国王は鷲色の瞳をガラスの様に煌かせ微笑みながら事も無げに言うと、王杖をトンと鳴らした。
突如自分の周りに現れる見た事がない幾何学模様。
一本一本の線からオーロラの様にが揺蕩いロミティを包み込む。
(に、逃げられねぇ!!)
逃げられないと察したロミティは目の前でガラス色の愉悦に歪む国王と、イベントの顛末を窺っているであろう、すべての人間に恨みを残した。
「許さない!私の全てを踏みにじった世界が、お前らが、プレイヤーが!!この恨み、次の世界があったなら、次があたなら、絶対、絶対晴らしてみせよう…絶対だぁあああああ!!!!」
泣き叫びながら光の中へと姿を消した。ロミティ。
そして…
バタンッ
「国王陛下?!?」
倒れ伏した国王陛下。駆け寄る臣下と貴族、暗躍するプレイヤー、炎上する掲示板。
後に、この悪役令嬢追放イベントはNPCの鬼気迫る迫真のプログラミングが世間を沸かせ、社会現象を起こした。
だが、このロミティのイベント後、杜撰な運営姿勢が目立ち、徐々にゲーム人口は減少。
RPG上最も重要な分岐点を迎える筈のマリアローズが戦場で散ったその最期を看取るころにはプレイヤー人口は残り僅かとなり、そのままサービスを終了した。
時と共に人々の記憶から消されるこの前代未聞のMMORPG。
僅かな人間しか見守らなかった。散りゆくマリアローズ、その最期はガラス色に光る瞳を細め満足そうであったという。
よみくかったらごめんね
サクッと終わらなかったらごめんね