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ピクサー・グラント 5

昨日、今日から秋の連休なので3日分ほど予約を設定して、安心して休みました。今日起きてみると予約が消えている。ショック!!どうしようもないので、再度「ピクサー・グラント5」から上げ始めます。圭祐のクラスの担任セクシィーな白澤みどり先生登場です。また謎の幼馴染、若槻揚羽の登場。圭祐の幼馴染なのに、なんで謎なんだ?それはグランにとって謎なのです。

  ピクサー・グラント 5


『ドアはもう一回紐で縛ろう。そしてさっき飛び込んで来た雀の手当てをしよう』

(うん、わかった)

 俺は床の上に寝ている雀を手に取り、テーブルの上のダンボールの小箱の中にティシュを数枚敷いてそっと寝かせてやった。テッシュを敷いたのは何となくだ。良く見ると雀の羽の怪我はそんなに酷くはないようだ。羽の先が少しやられてしまっている様だが、傷らしい箇所は無い。俺は雀に話しかけた。

「おいオマエ、ビックリしたぞ。安心しろよ 少し休んだら飛べる様になるかもしれないなぁ」

『それは、不幸中の幸いだ』

 圭祐は俺が手慣れた感じで雀に話しかけながら、羽のダメージの様子を見ているのを、驚いていた。

『グラン、君は動物の気持が分かるのか?』

(分かるって程じゃないけど、多少は……小さい頃鳥も犬も飼っていた。みんな友達として一緒に育ってきたんだ……)

 ……あの魔道士の軍団に、俺の育った村が何もかもめちゃめちゃにされるまでは……俺はその事は今は考えない様にした。

 雀の方を見て圭祐が言った。

『雀もなにかキミに伝えたいみたいだけど』

ダンボールの箱の中で首を擡げて俺の方を見ている。そして、どうだ出来るぞと言わんばかりに小さな羽をいっぱいに広げて見せてくれた。

(たぶん、空に帰りたいって言ってるんだろう。自分の羽で空を飛ぶのって最高だろうから……まだ僕は飛べるんだって)

 雀の様子を見てほっとしたのか、圭祐が俺に改まって聞いて来た。

『グラン、宗教の勧誘の外人2人組を帰して、雀を助け、鳶を追いだし、隣のおばさんには帰っていただき、注文と全く違う宅配を受け取ると言う、立て続けの騒ぎを僕達は何とか収めたのだよね』

(そうだ)

『ただ、部屋にいるだけでもこんなに立て続けて騒ぎが勃発して来たのだ。これで、僕達がもし外出でもしたら……、外にはいろいろな災難の起る可能性はこの部屋の中とはケタ違いに増えて行くと思わないかい?

 果たして外出したら、僕達はその事態に適切に対応出来るのだろうか? こんな事が起こり続けたら僕達だけでは無くて、その時に周囲にいる人達にも迷惑を掛けちゃうかも知れない?』

(確かにな……)

『これでは僕はとても気楽に外出とかする気にならないよ』

 そう圭祐はため息混じりに俺にそう告げた。


(外出には相当な覚悟が必要だな。でも圭祐、少し神経質になり過ぎて無いか? 考えすぎると何も行動出来なくなる)

『そうだ。それはグランの言う通りかも……でも僕はそう考えちゃうんだ、いっつも……』

(俺は先の道が見えなくても、何時も無鉄砲に次の一歩踏み出してきた。俺の人生はそんな事の連続だった気がする)

『それはグランが勇敢だったから出来たんだよ。とても僕には……』

(俺は考えなしだっただけさ。バカなんだよ所詮。今思いだしても、今まで良く生きてこれたって思うよ。運が良かったんだ。逆に裏目に出て酷い目にあった事が幾つも思いだせる……)

『すごいなぁ、さすが勇者だよ。やっぱり僕には真似が出来ない』

 圭祐は素直に俺の言葉を聞いてくれている。良いヤツだ。

(そんな無鉄砲な俺から、とうとう偶然と幸運を奪い取りやがった……あの魔道士ウルフガング・リガルディの野郎は……)

『グラン……』

 俺も圭祐と同じように思っていた。

 今の俺には強運なんて無縁のものだろう。余程の事情が在り、外出する事になったとしても、かなり用心しないと外の世界に出た途端に、命の保証は到底出来なさそうだ。

 ウルフガング・リガルディが俺に掛けた「カーマナイト・スピリッツ【KS】」って呪文は此処に来て、もしかしてとてつもなくやっかいな術式かも知れないと言う事が少しずつ分かって来たのだ。

(なあ圭祐、俺は体を無くして異世界に飛び込んだ呪われた勇者、そしてお前は引き籠った高校生、その2人が合体したって……崖っぷちコンビの誕生ってことか……)

『あはっはっはっはっ……ほんとそうだね、気が合いそうだね』

(確かに……はっはっはっはっはっはっはっ)

 俺は圭祐の口で思いっきり笑っていた。



 翌朝、俺は圭祐の持っている携帯の呼び出し音で眼が覚めた。彼の性格からそう多くの友人に自分の携帯の番号を教えたりしていない。しかも今 俺を呼んでいる番号を見ると未登録だ。

 仕方なく俺はその電話を受信してみることにした。

「もしもし」

「あら、村雨君、村雨圭祐君ね。貴方の担任の白澤みどりです。あなた携帯には出るのね」

なんと掛って来たのは圭祐のクラスの担任の女性教師みどり先生からだった。

「せ……先生」

「あなた、何時まで学校に来ないつもりなの? もう自宅に引き籠ってから2ヵ月以上になるわよ。そんなんでこの後どうするの? 勉強分かんなくなっちゃうでしょう。追いつけないわよ」

 これは圭祐にとってかなりキツイコールだ。彼が心の準備なしで一人でこの電話を受けていたら、クリティカルヒット状態必至かも。この表示されている電話番号は学校の教務室の番号だ。

 俺は彼に成りきった声色で、その電話に対応する演技をしようと心掛けた。幸い、声が同じなので先生が聞いても、応答にはこれと言った違和感は感じないかも知れない。

「あ、……はい」

「ねぇねぇ何かあったのなら先生に相談して頂戴、お願い。力になってあげられると思うから」

「い……いや、いいです。自分の事だから……」

 俺はこの優しい声のお姉さんの様な女性教師に一声で魅かれてしまったようだ。きっと美人に違いない。

(おい圭祐、この先生優しそうだぞ、圭祐このままここで引き籠ってないで、ここは一丁みどり先生を頼ってみたらどうなんだ。俺はそれが良いと思うのだが……)

 俺は圭祐の記憶の中から、みどり先生の面影を必死になって探しだそうと試みて見た。

 そこにはすらっとした女性の後ろ姿がそこにあったのだが、振り返った彼女の顔が何だかぼやけて思いだせない。しっかりしてくれよ、圭祐!! こんな素敵な声の主に全く関心無しかよ。

『先生に相談なんて……それはとっても出来ないよ、グラン……』

圭祐は困った様にそう言った。

(なに言ってんだ。とにかく次の一歩をだな……これはチャンスだぞ!!)

『グラン、それじゃぁ、みどり先生にまで迷惑掛っちゃうよ。学校の問題だけでなくって、グランに掛けられた【KS】の事もあるし……』

 そう言われると、俺には返す言葉が無い。

(そうだよな……)

「あの、先生、俺まだ考える時間が欲しくって」

 俺は仕方なく、みどり先生のお誘いを断る方向に話を向けることにした。

「なに言ってんのよ。そんな事言ってると、村雨君タダのコミショウのヒッキーになっちゃうぞ」

「あ、でも……ホント先生には迷惑掛けて悪いと思ってます。すいません!!」

「こらっ済まないと思うんなら。学校来なさい。先生は村雨君に会いたいぞ」

(……ああっ俺も先生に会ってみたい!!……)

 俺は心中そう叫んだ。

「すいません。もう少ししたら、必ず学校行きます。必ず!!」

 俺はついみどり先生にそう答えていた。

『おい、グラン無理言うなよ。何言ってんだ』

 圭祐が俺の言葉を制止しようとする。どうやら肉体操作の主導権は常に俺の方が持っているようで、圭祐は俺を制止しようとしても今はただ、心中で文句を言う程度しか出来ないようだ。

(大丈夫!!)

 俺は圭祐を安心させようとした。

『大丈夫なものかぁ!!』


「もう少しって何時よ?」

 みどり先生は俺の歯にモノが挟まった様な、回答を聞いてもとても満足出来てないようだ。

「気持ちの整理が付いたらです」

「もたもたしてると、うちの学校、私立だから出席日数不足で村雨君は退学になっちゃうんだよ。校長がそう決めたら私がその後、何を言ってもダメなんだから。分かる?」

 みどり先生はグイグイ押してくる。

「はい!!」

「はいだけなの?」

「今は……ハイだけです!!」

「そう、次には良い返事を聞かせてね」

「気持ちの整理をつけます!!」

「それじゃぁ、先生待ってるから」

「はい!!」

 俺がそう答えると、先生は少し納得してくれたみたいだ。

 やっと電話がを切ってくれた。


(俺はこのみどり先生は信じて良いと思う)

 そう圭祐に伝えると……

『僕はみどり先生の事をどうとか思ってないよ。良い先生だと思うよ。そんな事より、高校2年生にもなってクラスで苛めとかに遭ってる僕自身がいけないんだよ!! そんな事ぐらい自分でもわかってるんだ』

圭祐は吐き捨てる様にそう言った。

 俺は、分かっていたつもりなのだが、まだ圭祐の悩みの深さを理解出来ていなかったんだと思った。

(ごめん、圭祐、もっと圭祐の気持を考えて先生と話すべきだったよ……)

『良いんだ、グラン……』

(なんか、突破口を考えよう)

 そう言って俺はベットに横になった。


 俺は何時もの様にベットの上で目が覚めた。

 時計を見るともう、9時30分になろうとしている。

(あれ、良い臭いがするぞ?)

自分で作るインスタント食品以外この部屋で料理の匂いを嗅いだ事はない。

『ご飯を作っている臭いじゃないか?

みそ汁の匂い、油で炒める臭いもだ。これって今日は僕の母さんが来たんだろう。母さんはこの部屋の鍵を持っているから、自由にこの部屋に出入り出来るんだ』

(そうなんだ。この臭いは圭祐のお母さんが手料理を作ってくれている臭いなんだね)

 俺は圭祐の説明で理解した。

『起きよう、グラン』

(わかったよ)

 俺はベットから起きあがって、2LDKのキッチンに向った。

キッチンからは実宝イパンや鍋が掠れる音、お湯が沸き立つ音など、匂いだけじゃなく美味しそうな音がいろいろと聞こえて来る。

 キッチンにいたのは、圭祐のお母さんではなかった。

「起きたの、圭祐」

 背中越しに俺に向って声を掛けて来たのは、圭祐の母親ではない。その女性が圭祐の母親だとしたらあまりにも幼く見える少女の姿だった。俺は焦った。

(おい圭祐、お前 女兄弟っていたのか?)

『そんなのはいないよ。僕は一人っ子だ』

(それなら特別親しい間柄の女性とか……俺に今まで隠してたんじゃないの?)

『僕達の間で、そんな隠し事なんて出来ない事くらいグランは分かってるだろう』

(そう……そうだよなぁ。だとしたらここのキッチンに立っているのは一体誰なんだよ?)

「知らない。僕は自分の母にしかこのマンションの鍵を渡してないんだ……」

 その時キッチンに立つエプロン姿の女性が俺の方に振り返った

 その時分かった。


――――俺はこの子を知っている―――――――。

 

「鍵空いてたし、それに玄関のドアも全開だったから、勝手にはいっちゃったよ」

そう言って俺の方を振り返った女の子に俺は確かに見覚えがあった。

この世界に来て俺は圭祐のマンションから今まで一歩も外出していない。それなのにここにいる少女を知っている。可能性はたった一つしかない。

 彼女の名は若槻揚羽、圭祐が夢の中でデートした少女だ。夢の中の彼女は中学卒業直後だったせいか髪の毛を後ろで一つに縛って、化粧も薄く素朴な感じだった。今の彼女はどっから見てもギャルって感じだ。女の子ってこうも変わるのかって俺は感心した。

 髪の毛は脱色している様な茶髪で、それを一か所大きめのピンで留めている。化粧はファンデーションの上にはっきりと眉毛を濃い目に描いて、ド派手な付け睫毛を付けている。

 兎に角、全身コギャルファッションの娘だ。

 ツンと口を尖らせて怒った感じの表情は外見だけ見ていると可愛い子にも見えると圭祐の記憶では彼のクラスメートの誰かが噂していたが……。

『揚羽……』

 圭祐は、振り返った彼女を見た時、心の中で揚羽の名前を呼んだ。その声は、「彼女がここに来てくれて嬉しい」様に素直に喜んでいる声音には聞こえなかった。不安を押し殺したような感情が伝わってくる。

 でも圭祐がそれでも何故か嬉しそうなのは感じ取れた。不思議な感情だ。

(圭祐、揚羽とは前からの知り合いなんだろう?今日はご飯を作りに来てくれたみたいじゃないか。良かったな。自分で礼を言うかい?)

『良かぁない。グラン彼女に直ぐに帰ってもらってくれないか。』

(えええええぇっ!!

 何でなんだよ?

せっかく朝から来て料理まで作ってくれてるのに、拗ねるなんておかしいよ、圭祐)

『グラン聞いてくれ。僕がこうして、引き籠ってしまった原因の一つは彼女のせいなんだよ。

分かったら帰ってもらって』

(困ったなぁせっかく作ってもらっている手料理、どうするんだよ?

 圭祐の為にここまでやってくれている子を追い返す訳にはいかないだろう)

『しかたないなぁ……僕は彼女がここにいる間は心の表面には出ないから、グラン一人で相手してよ。僕は全く話したくないんだ」

(そこまで圭祐に言われちゃったら俺一人で対応するしかない。どうしちゃったんだよ圭祐は……)

 俺は圭祐の考えを急いで必死に読み取ろうとした。揚羽を嫌厭しているのは分かるが、それ以上の感情が複雑に絡み合って読み取れない。俺の世界では女の子を好きは好き、嫌いは嫌いなのだがここでは勝手が違うようだ。

「突然来てくれて……、どうしたの? 揚羽」

 俺は圭祐が学校とかで、彼女にどんな話掛け方をしているのか全く分からないので、仕方なく適当にアドリブで会話を繋げて行こうとした。

「なによ、突然って……突然学校に来なくなっちゃったのは圭祐の方じゃん」

「あっあっあっあっあっ――――そうだよな」

「家に引き籠ったりしてると、食べるもんも食べなくなるでしょう。痩せたんじゃない?」

 俺の腹辺りに視線を走らせて揚羽はそう言った。


揚羽との会話が続きます。

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