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鞍馬莉奈 3

うわー、また時間より遅れしまいました!!すみません。学校での勇者グランの活躍をご覧ください!!

鞍馬莉奈 3


 2か月前まで圭祐が通っていた2年3組は、校舎の2階中央辺りにある教室だった。俺達は校門から校庭に入り、先代の校長先生の胸像の横を通り、200メートル程先の下駄箱のある生徒玄関口に向った。

胸像の真横に差し掛かった時、いきなり胸像が俺に向って倒れ掛って来たのだ。

 今までの危険発生のパターンから、常に気を緩めていなかった俺は像の倒壊を難なく交わす事が出来た。崩壊のタイミングは絶妙だったのだが。

40年ほど前にその場所に建造された像だけに土台の老朽化が激しかったのだろうと思った。


 俺はその場に立ち止まる事はせず、そのまま何事も無かったように歩き続けて行った。

 校庭を見ると、始業前に運動場で朝連をしている運動クラブが幾つかあった。その何処かが体育館の用具室から運動器具を持ちだそうとしている様だった。

 俺はその光景を左手側に見て、右手側の校舎に向かった。素早くその用具室の前を通り抜け、下駄箱に辿り着いた。

 その途端、さっきチラッと見た用具室が轟音を上げて大爆発を起こしたのだ。

 爆風で用具室のドアが空中に舞い、窓と言う窓のガラスが弾け飛んだ。

 その爆風で、俺のいる校舎の生徒口、下駄箱の横の窓ガラスの何枚かが内側に向ってはじけ飛ばされた。割れたガラスの破片が下駄箱の周りに散乱する。俺は爆発音とほぼ同時に爆発と反対方向の廊下に向かってダイブした。その体勢で両手で頭を庇って、床に伏せた。

 危なかった。粉々になった硝子の破片が俺に突き刺さるところだった。

 此処もなんとか凌ぎ切った。

 学校は俺にとってあたかも戦場の様になっていた。

(体育用具室で爆発とは、一体……さっきあそこで何が起こったんだ……)

 俺は咄嗟に爆発の原因まで想像出来かねていた。それに圭祐が答えてくれた。

『おそらく粉塵爆発だろう。用具室の方を爆発直前に、ちらっと見たけど校庭にラインを引く石灰の粉がドアの外まで溢れてたみたいだったから……』

(それだけで、爆発は無いだろう……)

『それに何かの偶然が重なったんだろうね。普通では到底起りえない何かの偶然が』

 圭祐はそう言った。原因は良く分からないが、兎に角ここでも俺達はしっかりと生き残ってている。

 校内中に火災警報が鳴り響いていた。さっき倒れた胸像に校門から緊急通報を受けて飛び込んで来た消防車が接触して横転事故を起こした様だ。

 2次災害が止め度も無く広がっていく。

 俺は後ろを振り返らず、俺は下駄箱でスニーカーを脱ぎ、上履きに履き替え、外の事故は考えない様にして始業前に自分のクラスに辿り着こうと、廊下を階段に向けて歩きだした。

「村雨君!!村雨君!!」

 そう言って俺に向って走って来たのは、先月電話をくれた担任の白澤みどり先生だ。俺はやっと先生に会えると思うと、多少顔がほころんで来るのが自分でも分かった。

「白澤先生、おはようございます」

「あなた、一体何をやったの?」

「先生、俺は何もやってません」

「貴方が校門から入った直後に、先代の校長先生の像が壊れたって校庭にいた生徒が言ってるのよ」

「その学生も状況をはっきり見てたんなら、分かるはずです。俺の方が倒れて来る胸像で自分も危なかったんです。先生」

「その後、先生も教務員室の窓から見てたけど、村雨君が生徒口の玄関に飛び込むと、体育用具室が爆発したわよね」

「それだって、俺から用具室は20メートルは離れてましたよ。俺はむしろ被害者で……」

「そうかもしれない、そうかも知れないけど、村雨君が登校してきたのは2カ月半ぶりでしょう」

「はい」 

「うちの学校ではこんな大事故は今まで、開校以来起った事は一度もないのよ!!」

「俺も初めて……」

「分かったから村雨君、校長室にこのまま来て頂戴。先生方がまず君から事情を聞きたいと言っているの。来て、来て」

「あっはい……」

 俺は白澤先生に手を取られて、引っ張って行かれた。

(なんか、めんどくさい事態になってきたな。圭祐)

『登校していきなり呼び出しかい……』

 俺は白澤先生の後を速足で付いて行った。

 校長室には校長先生、教頭先生ほか3人の先生が俺の到着を待っていた。俺と白澤先生が到着すると、先生たちは立ちあがって一斉にこちらを見た。メチャヤバい雰囲気だ。

(俺の話とかに人数割くんなら、被害の手配に先生を回した方が……)

 とか俺は内心思ったのだが、ここではさすがに何も言わない方が良いと思った。

「君が村雨君か、白澤みどり先生のクラスの」

「はい」

「君が数か月振りに学校に来たと思ったら、1限目の授業が始まる前から、大騒ぎになっているじゃないか!!これは一体何がどうなっているのかね?説明してくれないか?」

「それを俺に聞かれてもですね……」

『グラン、やっぱり僕達は学校には来てはいけなかったんじゃないのか……。部屋で危惧してた通り、学校や回り中の人達みんなに迷惑が掛ってるよ』

 心配そうに圭祐が言った。

(ここまで来ちまったんだから、いまさらそれを言っても仕方ないだろう、圭祐。俺に任せろって)

『でも、グラン……』

「校長先生、私 職員室の窓から校庭を見てました。村雨君は今回事故に巻き込まれただけです。胸像とか、体育用具室には指一本触れてませんし……」

「そう言われてもだねぇ、それじゃぁこの大惨事は何が原因だというのかね?」

「そ、それは……」

 白澤先生は答えられない。

「村雨君、君なら何か知ってるんじゃ」

 教頭先生が俺に向ってそう言った。他の先生も一斉に俺の方を見つめている。

「俺は……」

 俺だって、ここで何を喋ったらいいのか……。

『圭祐、こんな場所で【KS】の事とか話したら……

(ダメだよ、そんなことしたら、僕達が犯人だと思われても仕方ない事になっちゃうよ)

(そうだよなぁ)

「皆さん聞いて下さい、村雨君は今の事故には一切……」

 白澤先生が俺を庇ってくれようと、もう一回先生方に話し始め様とした時だった。

 いきなり校長室の天井に左右から亀裂が走ったのだ。

 俺は校長室の出入口のすぐ近くに立っていた。その亀裂が走る音を聞いた途端、俺のすぐ横に立って校長先生に向って話していた白澤先生の脇腹を横抱きにして、そのまま校長室入り口空いていたドアから廊下に飛び出したのだ。

 その直後、校長室の天井が落下した。

まるで時代劇に出て来る将軍暗殺の為に作られた吊り天井の様に……。

 落下原因は校舎の老朽化だと後で判明したのだが……。

 俺と白澤先生は間一髪部屋から飛び出して無事だったのだが、校長室の中にいた、校長先生、教頭先生、以下3名の先生は落ちてきた天井の下敷きに成り、酷い重軽傷を負ってしまった。

 白澤先生は、その惨状を見て、俺にこう言った。

「村雨君、貴方のせいじゃない事は先生は十分解かってるつもりよ……でもね、貴方はこのまま何処にも立ち寄らないで真っ直ぐ家に帰りなさい!! それが今君のすべき最善の事だと先生思うの」

 先生は眉間にちょっとしわを寄せて、上目使いで俺のほうを見た。わかってと言わんばかりだ。

「先生……」

「良いから先生の言う通りにして頂戴、分かった?村雨君」

「はい……」

「貴方の出席日数とか、先生が後で考えるから……。

 とりあえず今言える事は、村雨君は自宅学習の通信講座で出席日数はカバーします。いや、先生がそう職員会で後日全ての決定を貰うから、お家にすぐに帰って頂戴!!」

「はい」

「分かったわね」

「はい」

「今日は良く来てくれたわ。先生嬉しかった。でも村雨君が登校を躊躇っていた理由は良く分かったつもり……」

「先生……そんなんじゃぁ」

「良いから、これ以上の大惨事が続いたら、学校は崩壊するから」

「分かりました。村雨圭祐、本日ただちに下校します」

 俺は校長室の前の廊下に座りこんでいる白澤先生を残して、ダッシュで学校を出て行こうとした。

(なんてこった。これじゃあ、学校指定の引き籠り学生になっちまったよ)

 俺は圭祐に話しかけた。

(学校には申し訳なかったけど、我々ではどうしようも無かった事だからね……)

『それにしても、先生達大丈夫かな』

(天井がそれ程重たいモノじゃな事を祈るよ)

『そうだね……』

 何か圭祐が元気がないと思った俺は、良い話をしようと思った。

(でもさ、やったグラン圭祐、これで俺達が退学とか放校になる事は無くなったんだ。さすが白澤先生は頼りになんグラン)

『そうだな、グラン……』

(なんだい、あんまり嬉しそうじゃないな?)

『だって、そうだろう。なんか厄介払いされたみたいで……』

 こうして、俺の勇気ある再登校の試みは1日で終わりを告げた。


 俺が校門から帰ろうとした時、校門に立ってじっと俺の到着を待っている一人の少女がいた。風紀委員の鞍馬莉奈さんだ。

「昨日はどうも」

「あっどうも先輩、約束どうり登校して来たんですけど、担任から今日から自宅学習をおおせつかいまして、早々に家に帰ろうかな……なんて」

 俺は頭を掻きながら、苦笑いうを浮かべていた。

「私、大きな間違いを犯してしまったようだわ」

「間違いって……なんですか?」

「3カ月前、キミがまだ学校にいた時は何とも思わなかったんだけど、昨日キミに何かが憑いてる事は感じたのよ。あそこでなんとかしておけば……登校しなさいって言わなければ……こんな強力な悪霊が憑いていたなんて……【心外無別法しんげむべっぽう】この言葉の意味は……」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい。何の話ですか?訳が分かりませんよ、悪霊なんて……俺はこの通り何ともないですから、それじゃあさようなら!!」

「ちょっと待ちなさい、待ちなさいってば!!意味を聞いて行けぇ」

 俺は仕方なく足を止め、振り返った。

「分かりません」

「ウオッホン、では説明しましょう」

 その時、校門にサイレンを鳴らして5台の救急車が飛び込んで来た。

「キミは一体何をしたの?」

 莉奈先輩はその列を校門の脇に避けながら、焦って俺に向ってそう詰問してきた。

「俺は何にも……無実ですって……指一本触れてませんから」

「それって如何にも真犯人が言いだしそうなセリフじゃない」

そう言って先輩は腰に手を当てて空を見上げて、深く溜息を吐いた。

「君、今何で救急車両が立て続けに校内に走りこんで来たの?」

 先輩は、校門に飛び出してきた一般学生の一人を掴まえてそう聞いた。

「救急車……あれは先生達を運び出す為でしょう。何が起こったか知らないけど、校長先生、教頭先生、他の先生が10人くらい大怪我を負ったみたい……」

(先生の人数がサバ読んでるな……)

 と思った。なんか話がどんどん大きく成ってる気がする。

『グラン、そうでなくても大きい話だよこれは……』

 圭祐が言った。 

「そっそうなの……」

 先輩は、茫然とした表情でそう言って、今掴まえた学生の腕を離した。

「な、何かあったみたいですよね、俺関係ないんで……」

そう言って俺はその場から退散しようとした。

「待ちなさい、待ちなさいってば」

「俺、帰んないと……」

「こら、待てって!!」

俺は莉奈先輩の制止は一切耳を傾けずに、校門から走り去った。こんなところでもたもたしていたら、またろくな【KS】が発生しかねないと思ったからだ……。


 校門での俺達2人のやり取りを校舎の2階の窓から見ている生徒達がいた。佐藤隼人とその一派だ。

「おい、校門で、風紀委員とやり合ってるの、あれって村雨?ケー坊じゃねぇ?」

「あっそうだよ、あいつ2年3組うちのクラスを休んでるケー坊だよ。引き籠りにクラスチェンジしたんじゃあなかったっけ?」

「さっきさぁ、校長室に教師が集まっててその中にケー坊がいたって話だグラン」

「うっそうーなんでぇなんでそんなとこにあいつがいるんだよ。到って小者なヤツだっただろう?」

「それが、教師3人、校長に教頭まで集まってたらしいから……」

「なんかドでかい事仕出かしたんじゃないんじゃない?」

「超信じらんねぇマジかよぅあの小心なケー坊が?」

「隼人さん、あいつもう触んない方が良いんじゃないですか?なんかあいつ教師に完全に眼付けられてるって感じしますよ」

 その生徒の発言に別の生徒が言葉を繋げる。

「俺もそう思う。あいつの近くに行くとこっちが呼び出し喰らいそうだよ」

 そこにグループの別の生徒が走り込んで来た。

「今、校庭に来た救急車、教師が10人ばっかし担ぎ込まれてんぞ」

「うっそー誰にやられたんだ、それって出入り?寄○獣?」

「佐藤さん、もうヤバい、ケー坊に関わり合う事は御免ですって」

「俺は別に……ケー坊なんて興味ねえよ」

 隼人は、気まずそうにそう言った。

「ですよねぇ、はっはっはっめんどくさい事御免ですよね」

「揚羽のヤツがさぁ……絡んでたからなぁ」

「隼人、揚羽の事そんな良いんかぁ?」

「ウッセイ!!」

 隼人は悔しそうに親指の爪を咬み始めた。救急車に搬送されて行く担架の列をじっと見つめていた。


 同じ時刻、階段の窓から2人を見ていた人物がいた。今噂されていた若槻揚羽だ。

「圭祐……来たんだ。来てくれたんだね。なんか前見た圭祐より精悍な感じがするのは、気のせい?でも、どうして?帰っちゃうの?」


鞍馬莉奈 4 に続く。

続きは本日20時までに、アップします。

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