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序章 前編

 村雨圭祐むらさめ けいすけは承徳高校2年生、17歳。繊細で優しい妄想力逞しい青年だ。高校に入学し1年で自分が不良グループから酷い苛めの対象にされてしまったと感じる。その重圧から親に借りて貰った1人住まいの自宅のマンションに不登校で引き籠ってしまう。以前から好きだった同人誌を作って漫画家を目指して行こうかとか気楽に考え日々を過ごしていた。

 そんな彼しかいないはずのマンションのバスルームに突然、若い女性が入浴していることに気が付いた。「そんな馬鹿な。いやいや、ありえないでしょう、ドア鍵かかってるし」そんなことを考えて混乱する圭祐だったがとりあえずバスルームのドアの隙間から女性の正体を探るべくそっと中を覗いてみた。玄関のチャイムの音に振り返った途端、彼女の姿は…。

 圭祐は、学校に再度向かう日は嵐が起こると思っていた。不良グループと対決の日になるからだ。自分に力が欲しい、RPGの勇者にでもなれれば…そう思って寝た圭祐は、起きるとなんと勇者になっていた。いや、正確には彼の肉体に異世界からの勇者が入り込んできていたのだ。

魂だけの逆転生が起こった。それは奇跡の瞬間だった。



 序章


 この世界は、以前は大地の恵みを人と自然の中に生きるもの達が分け与えて住む、素朴だが平和な世界だった。それが何処からか現れた魔族と呼ばれている凶悪な種族によって浸食され大地は荒廃し、食物だけでなく光さえも奪われて行った。人々、この世界に生きる全てのもの達は次第に追い詰められ、殺され、そして世界の半分は闇に覆われて行った。


 俺の名はピクサー・グラント。

 

 俺は、騎士だった父が魔物たちとの戦いで無残に殺されるのを見て、父の意思を継いでヤツらを殲滅しようと決心し剣を取った。8歳の時だった。それから人間達を守るため戦いの中に身を投じた。逃げだしたくなるような辛い修業を続けて剣の技を磨き続けた。そして少しずつだが経験値を積んで、力を付けて魔物たちを倒せるようになり、彼等の巣食う魔王城に向けて旅立ったのだ。

 魔王城に近づくにつれて、ヤツらの眷族の中でも強大な化物が次々と俺の前に立ち塞がった。俺は戦いで右腕を骨折し、肋骨を数本やられた。しかし体の回復を待っている暇などない。せっかく魔物を倒して作った突破口も俺の傷が癒える頃にはまた堅固な要塞に復元されてしまうだろうから。だから俺は化け物を踏み越えて進み続けた。

 小高い丘の上に立ち、仰ぎ見るともう目前に魔王城エイビルゲイルが迫って来た。

 

 ここは大魔王が住まう天空の魔王城エイビルゲイルへと続く【水晶の谷】。俺はその谷底のクレパスの奥を岩肌に隠れながら少しずつ魔王城に向っている。

 俺の右手にはこの世界【セレンティウス・グランド】で手に入れる事の出来る最強の鉱物ホーリー・クリスタルから精製され、伝説の鍛冶屋ソウイ・G・ナックの手で完璧に鍛え挙げられた聖剣セイクリッド・ライトニングが握られている。

 185センチの長身に実戦で鍛えられた筋肉質の身体には、神聖な色とされる白と青で彩られた衣服アブソリュート・プロヴィデンスと最強の防御力を誇る甲冑ディヴァイン・プロテクションを装備し、額には深紅に染まった《誓いのバンダナ》を巻いて長髪を一つにまとめている。

 僕の対面に20メルトー程の距離で立ち塞がっているのは、見るからにおぞましい顔をした四天王だか八大将軍だかの魔王の眷族『ウルフガング・リガルディ』と呼ばれている魔導士だ。ヤツは俺に隙さえあれば、今にも僕に襲いかかろうと言う形相でこちらをガン見して来ている。そのため唯でさえおぞましいヤツの顔は、余計に醜く歪んでいる。

戦いはまさにクライマックスに達しようとしていた。

 此処まで来てこんな化物にむざむざくれてやる命なんぞはない。俺はゆっくりと抜身の剣を隙を見せずにヤツに向けながら、じりじりと間合いを詰めて行った。


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