4:確信
連投。行ってこい!
「早馬…剣道部に入ってくれ」
わらにもすがる気持ちだった。斉藤を選択肢に入れてた時点でどうかしてたのかもしれないが
僕は部室の入り口に立っていた早馬に突然こう言ったのだ。
「先輩告白してるみたいですよ」進はなんか言ってたがそんなことはどうでもよかった。
「あ…ええ」と早馬は戸惑いながらも答えた。
「ええ!」部長と進は歓喜なのか驚きなのか良くわからない声を上げた。
「えっホントに入ってくれるの?」僕は今更ながら自分でも間抜けだと思うような声で聞いた。
「ええ。別にかまわない」早馬は朝とは別人のようなはっきりとした声で答えた。
「ところでこの人誰すか?」進が少しうわずった声で聞いてきた。
「この…いや彼女はうちのクラスに今日転校してきた早馬凛さんだ」
「はぁ転校生ですか。どおりで俺…っうん」進は何かを言いかけたがわざとらしく咳き込んだ。
「てことは二年生か。これは明日の会議もらったな!がははは」何をもらったのか知らないが部長が笑顔で言った。
「でもなんでこんな所に?」ふと僕は気になった「た…たまたま覗いただけ」と彼女は返した。
まあそんなことはどうでもいいか。とにかくこれで会計は確保できた。ああ今日はなんていい日なんだ。
あれ?そうかな?まあこの際細かいことは気にしないどこう。
「よーし祝いだ飲むぞ!」そういうと部長は瓶を取り出した。よく見るとその瓶の中心に鎮座されている『百寿』の文字。え??
「細かいことは気にするな飲むぞ!がははは」「えーーーー!」
かくしてその日の部活は新歓コンパとなったのであった。
部活(?)も終わり各自家路についた。といっても僕は明日の会議に備えて去年までの成績表やら領収書やらを整理しながら一人明日の作戦を立てていた。しかし頭が痛い。やっぱり部長曰くあの元気の出る水がいけなかったのだ。
部長と進は飲み慣れてるのかケロッとした顔で帰って行った。まったく頭と足が痛いなんて今日はやっぱりついてない。しかも酔いが冷めるまで家に帰れないし。ブツクサ言いながら資料をまとめていた。
コチコチ
もう時計はゆうに六時半を回っていた。そろそろ守衛さんが見回りにくる頃だ。酔いも冷めたしそろそろ帰ろうかな。
僕は荷物をまとめ、帰り支度を整えた。「電気よし」部室の電源を確認し、鍵を閉め外に出た。
春とはいえまだ日は短い。あたりはもう薄暗く街頭の明かりが目立つ。
「さて鍵を守衛室へ…」その時あの感覚がまた襲った。
そう彼女…早馬凛を初めて見たあの感覚…。いや、それよりもはるかに強い「恐怖」が僕を襲った。
「!っこれは!」僕の手のひらから信じられないくらい大量の汗が出ていた。
「はあ、はあ、」心拍数が上がり、血液の音が静寂の中、まるで体の外にあるものかの様に耳元で鳴っている。
ドク、ドク、誰か…俺の側に…ダレカガ…
ザザー、と突然風に木が揺れた。
目には見えない何かが確実にそばにいるように思えた。どこだ…そしてだれが…
次の瞬間脳裏には早馬の姿がよぎった。
偶然なんかじゃない、彼女は何かを探しにここへ来た。そんな考えが、なぜか確信に変わった時
ソレは現れた。
ありふれた日常。そして今日もそんな当たり前の一日がおわる。はずだった。
次回へ続く