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ゆめ喰いびと  作者: いぬ
2/2

おはなしのプロローグ



──*──*──*──



2人は、緑一色の丘の上にいました。


東を見れば、その丘を囲んでいる森の木々を一望できました。


振り返れば、大きな木が3本分はありそうな、とても高いガケがそそりたっていました。


そんな緑一色の丘に、2人は寝転がっていました。


1人は、長く、透き通った透明の髪をもつ、8歳ぐらいの少女でした。

頭に、ピンク色の綺麗な花を一本、刺していました。


もう1人は、少女と同じく透明の、肩まである髪をもつ少年でした。年齢も、少女と同じくらいに見えました。

頭に、純白の綺麗な鳥の羽を一本、刺していました。




「ねぇ、クリス……ぼくたちは、生きていたらいけない存在なのかな……」


少年が、蒼い空を見つめながら、少女に尋ねました。


その声はまるで、森の木々をそよがす、風の()のようでした。



クリスと呼ばれた少女は、目をつぶったまま、こたえました。


「……いいえ、タル、そんなことはありませんよ……。」


その声は、まるで鈴の音のような、小さく澄んだ声でした。


「だって私たちふたりは、お互いにとって、なくてはならない存在なのですから。


私が生きているから、タルが生きている。


そしてタルが生きているからこそ、私が生きているんですよ。」



しばらくの間をおいて、タルと呼ばれた少年がこたえました。


「……だけれどね、ぼくは思うんだよ。」



「なんですか?」


クリスは、横に寝転がっているタルを、ちらっと見ながら尋ねました。



タルは、相変わらず空を見つめたままで、言いました。


「やっぱりぼくたちは、生きていたらいけない存在なんじゃないかなって……。


だから、いつか生まれ変わったら、ぼくは誰にも迷惑をかけないような、小さな生き物にうまれたい……。」



クリスは、すこし寂しげにため息をついて言いました。


「ですが……

タル、死んだ後に生まれ変わるなんてコトは、できるのでしょうか……」



タルは正直にこたえました。


「……わからない。だけど、それでもぼくは、そう信じたい。生まれ変われると、信じていたい」



クリスは、哀しそうに目をふせました。そして言いました。


「……人間の夢を食らって生きている私たちが、夢などみていいのでしょうかね……」








遠くの木々が、ざわざわと揺れはじめました。



そして、緑一色の丘に、一陣の風が吹きました。







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