2/7
第2話:無口な騎士様は、安全な距離を保つ
レオンは、本当に距離を守る人だった。
私が立ち止まれば止まり、
一歩進めば一歩遅れて進む。
触れない。
見つめすぎない。
でも、視界の端から消えない。
「……騎士様」
「何だ」
「近すぎませんか」
「近いと危険だろう」
「今の距離も、十分近いです」
彼は少し考えてから、半歩だけ下がった。
「これでどうだ」
……調整が細かい。
城の医師は言っていた。
心拍数が上がると死ぬ。
だから私は、感情を殺す訓練をしてきた。
嬉しい時も、悲しい時も、平らに。
なのに。
レオンが差し出す水。
黙って用意された上着。
誰にも聞こえない声での「足元に段差がある」。
そういう“何でもない優しさ”が、
一番心拍に悪い。
「……騎士様は、誰にでもこうなんですか」
「任務だ」
「任務で、ここまでします?」
「……する」
嘘じゃない。
でも全部じゃない。
私はそれ以上聞かなかった。
聞いたら、何かが壊れそうだったから。




