クラスのイケメン一匹狼の悩みは友達と上手く関われないこと
俺はいつものように学校に楓真と一緒に行く。
今日も校門に一輝先輩が立っていた。
「一輝先輩。おはようございます」
「おはよう!使い魔!」
「友達の名前も呼べないんですか?」
「そんなわけないだろう!」
「じゃあ呼んでみてください」
「は、悠」
「正解です!」
一輝先輩がしっかりと覚えていた事に嬉しさを感じる。
楓真が不機嫌そうに「早く行くぞ」と俺の手を引っ張って教室に向かう。
教室に着くと銀杏田が声を掛けてきた。
「佐倉君おはようございます」
「おはよう。銀杏田、俺の事は名前で呼んでくれていいんだぜ?」
「!?恐れ多いですよ」
「なんで?」
「…悠さん」
どうしてさん付けなのかなと思いつつ聞く。
「俺も響生って名前で呼んでもいいか?」
「もちろんです!」
相変わらず丁寧語で話している銀杏田じゃなくて響生。
悠さんって初めて言われたな。
だって大体周りは俺の事、バカにしているから。
俺はスキップしながら自分の席に座った。
放課後になり部室で皆、好きな事をしていた。
その時、トントントンとドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
俺がそう言うとドアがガラガラと開いた。
見ると…クラスのイケメン一匹狼が居た。
白井 玲央だ。
「相談?」
そう俺が尋ねると彼は頷いた。
クラスのイケメンの悩みって何だろうなとふと思う。
「どうぞ好きな所に座りなよ」
また俺が声を掛ける。
彼は無言で座る。
「それで相談って?」
「・・・友達とその、上手く関われないんだ」
下を向きながら彼は静かにそう告げた。
へー一匹狼なのじゃなく、上手く関われなかったのか。
「白井ならきっと皆と仲良くなれると俺は思うけど」
「そうか…?」
「そうだよ!イケメンだし!皆、話したがっているよ?」
「そうなのか?」
「知らなかったの⁉」
「あぁ」
白井って意外と鈍感なのかもな。
まぁいいや!
「まずは俺と話してみるか?」
俺がそう提案すると彼は緊張しながらも頷いてくれた。
そうして不思議な会話が始まる。
「…えっと、佐倉は好きな色とかあるのか?」
「俺の好きな色は水色だよ!」
「そうか」
「白井は?」
「黒」
「黒ってカッコいいよね」
「まぁな」
沈黙が続く。
俺は思う、白井って会話の基本がおかしくない?って。
これでは話が続かない。
「白井って普段、休み時間なにしてんの?」
「何も」
「好きな教科は?」
「国語」
「好きな曲は?」
「特にない」
そんな会話が続き…
「これじゃあ会話にならないよっ⁉」
俺はとうとうツッコむ。
だって、白井の奴。一言、言ってすぐ会話が終わるし!
ここに来る奴は変人しかいないのか⁉
「会話の仕方をこれから一緒に学ぼうな?」
呆れながら白井にそう言うと彼はパッと笑顔になった。
なぜ?
「佐倉、これからよろしくな」
白井の笑顔は眩しすぎた。
ずるいと思う。
そんな風に笑いかけられたら助けたくなるから。