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一輝先輩の弟

放課後になり部室に着くとドアの前に誰かが突っ立っていた。


「誰ですか?」


明らかに目が合ったし声も聞こえているようだった。


だが、彼はサーと去って行った。地味に傷つく‼


それにあの目つきなんか知っている気がする…。


しばらく考えていたが思い出せず、部室に入った。


中には空しか居ない…。なんでだよ⁉俺、朝の事もあって気まずいのに!


溜息を吐きながら部室の椅子に座る。


その時「悠。今日も可愛いな」と言って頬に空の唇が触れた。


「ひえー」


そう小さな声で呟く俺に空は笑いかけて来る。


兄さんがやって来て「悠君!大丈夫?」


優しく声を掛けて来るがお前が空を放置するからこうなったのだろ?


そういう抗議の目を向けるとニコっと笑い返された。無責任な裏切り者。


兄さんにはきっとこの言葉が似合うと思う。


空は雰囲気は爽やかだがその裏はそこしれないから闇ゴリラかな?


一輝先輩は人を使い魔…呼ばわりするし変人魔王かな。


「あっ!思い出した」


そう立ちあがった俺に二人が「なんだ?」と言いたげな顔を向けて来る。


さらっと無視しながら考える。


先程のドアの前に居た人、一輝先輩と目つきが似ていたんだよな。


髪の色も一緒だったし…瞳の色も一緒だった。きっと兄弟だと思う。


そこに変人魔王がやって来た。俺は早速だが尋ねる事にする。


「一輝先輩の兄弟ってこの学園に居ますか?」


「あぁ居るぞ!今は中二である」と答えてくれる。


そうか。やっぱりあの人は一輝先輩の兄弟であったか。


溜息を吐き「一輝先輩の弟様に今度会いたいと言ってくれませぬか?」


そう言った瞬間、一輝先輩が「あいつに何か用があるのか?」と問われる。


「えーまぁ少し」


そう答えた瞬間、一輝先輩が「放送室に行って来よう!」と言い出した。


えっ?と思っていると兄さんが「黒木は放送委員長なんだ」と溜息交じりに言う。


つまりどういう事だ?と考えていると


『中等部二年六組の黒木くろき 一翔かずと至急相談部に来い』


スピーカーから流れて来る音を聞いている間に俺は鳥肌が立った。


一輝先輩のありがた迷惑に落胆している。


しばらくその放送は流れていた。


そして鳴りやんだ直後の事だった。


ガラガラ‼と凄く強くドアを開ける音が聞こえて来た。


目の前には冷酷な顔をして立っている一翔先輩が居る。


申し訳なくなって俺は頭を下げる。


すると「何の用だ?」と聞いて来る。


「えっと…一輝先輩の弟様ですよね」


「それがどうした?」


「今日、部室の前に居たから何か相談があるとか?」


「ない」


「じゃあ、なんであそこで突っ立って—」


「お前と話してみたかっただけと言ったらどうする?」


一翔先輩の表情が強張っている。本心なのかもしれない。


きっとわざと冗談っぽく言ったのだろう。声が震えていた。


「俺も一翔先輩と話したいですよ!」


彼を勇気づけたくて精一杯、笑いかけてみる。


その瞬間、冷酷な表情は柔らかくなり彼が俺に笑いかけて来た。


不覚にもキュンとしてしまった。黒木兄弟恐るべし!


頭の中で色々な事が混ざりに混ざってしまう。


俺はこれからどうすればいいのだろうか?


ドヤ顔で帰って来た一輝先輩を俺は叱った。


「放送を私的に使用しないでください!」


「なぜだ?我は放送委員長なのだぞ?」


「なぜだ?っじゃねぇっつーの…です!」


「無理やり丁寧語にしなくてもよいのだぞ?」


「いくらなんでも先輩ですからね」


「そうか。真面目なのだな」


「俺の事、そこまでバカにしていたんですね?」


「そうじゃない。なにせ我の使い魔だからな!」


そう言ってハハハ!と高笑いする一輝先輩に俺は内心、呆れていた。


一翔先輩も「バカ兄貴がごめんな」と声を掛けてくれる。


「いえ。変わっていますが面白い方ですので」


そう答える俺を変人魔王以外の三人が心配そうに見つめて来る。


バカにしやがって!


そうして放課後になり俺はさっさと帰っていた。


一翔先輩もなぜか着いて来ている。


「家がこちらなのですか?」


「さぁな」


「ならなぜ俺の家の方向に来るんですか?」


「自意識過剰だ」


「じゃあ、なんで俺の家の前で止まるのですか?」


「見間違いじゃないか?」と言う不思議な会話をしている。


一翔先輩って一輝先輩とは違うけど変人だ。


今度あだ名を考えようかな。


氷使いのメリーさんとか。


だって、家の前まで後ろから付いて来るなんて都市伝説のメリーさんみたいだ。


あっ!氷使いのストーカーとかもどうだろうか。


メリーさんだと思うのは他にも理由がある。


今日、部室の前に最初いたからだ。


でも、冷酷ストーカーの方が似合うかもな。


にこりと一翔先輩に微笑みかけると彼は不思議そうに首を傾げた。


まぁいいや。


一翔先輩を放って家に入ろうと門を開ける。


すると後ろから手を掴まれた。


いきなり手を掴むな!


そういう意味で振り返ると「なぁ俺も…相談部に入ってもいいか?」と聞いてきた。


不安げな顔でそんなこと言われたらこの手も振りほどけないではないか。


「いいよ」


そう言った瞬間、彼はよかったーと息を吐き手を放し去って行った。


離れた手がやけに寂しく感じたのは俺の勘違いだろう。

悠が皆に付けた名前が面白すぎて俺が笑っちまう。


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