初めての相談者は変人
初めての相談者、どんな人なんだろうな。
それにどんな相談なんだろうか
次の日になり、相談部は幕を開けた。
さっそく相談に来る奴なんて居るわけがないとお絵描きをしていると
「我が相談に来た。皆の者、跪け!」
目つきが鋭い変な人が来た。誰?という目でその変人を見ると
「黒木 一輝」と心底嫌そうに兄さんと空が言った。
有名人か?と思いながら「えっと…黒木さんは何年生ですか?」と聞く。
「三年生である」と高らかに言う。
俺は段々と面倒くさくなって来る。
「用件は?」と言うと「使い魔がなかなか手に入らない!」
…冗談か?それとも何かの隠語?もう意味不明だ。
「使い魔とは?」と聞くと「お前たちはトモダチと呼ぶらしい」と答えて来る。
なぜにカタコトであった?こいつは相当なバカなのだろうか。
「つまり、友達が出来なくて相談に来たんですね?」と問うと
「あぁ、そういう事だ。早く我にも使い魔が欲しい」と言う。
友達を使い魔と呼ぶ時点でそりゃ出来ないと思う。
兄さんと空は気づけば無視して二人で会話している。
お前らと黒木先輩の間には何があったのだ?と聞きたくなるほどだ。
俺は長い溜息を吐き「黒木先輩はこれからどうしたいんですか?」と聞く。
「使い魔を手に入れる」と答えられる。
俺は「わかりました。考えておきます」と言って追い出そうとすると
「よし!お前、我と一緒に使い魔を探すぞ」と言って連れていかれた。
な、なんという馬鹿力。腕が痛い。
その時、後ろからも俺の腕を引っ張てくるものが居た。
空だ。両方の腕を引っ張られた俺は引きちぎられるかと思った。
二人とも馬鹿力じゃないか。心の中でまるでゴリラだと思った。
それに兄さんは非力の裏切り者だ。
俺をこのまま見捨てるってか?
空も人間なら引っ張るのではなく話し合ってくれ!
黒木先輩はとにかく一旦落ち着いてくれ!
お前らは会話というものを忘れた暴力人間かよ⁉
その間で困っている俺を誰か助けてくれ!
痛くて声が出ない!
その時、「先輩方!佐倉君から離れてください」という声が廊下に響いた。
誰だ?と思い救世主の正体を見ると
「銀杏田⁉」
そう彼はクラスの優等生の評議委員。
銀杏田 響生だった。
彼はすたすたと俺の傍に来ると
「大丈夫ですか?」と聞いて来る。
「サンキュー!マジで助かった」と言うと彼は満足そうに去って行った。
黒木先輩が「なんだあいつ?」と言っている。
空は彼が去って行った方向を睨んでいる。
「クラスの優等生だよ」と俺が説明する。
黒木先輩は「そうか」と言い「じゃあ行くか」と言っている。
この人から逃げるのは相当、困難な事なのだと知った。
というかどこに行くのだろうか?
「あの黒木先輩、どこに向かっているんですか?」と俺は問う。
なのに返事してくれない。「僕はもう帰ってもいいですか?」と聞いてみる。
あっ!つい昔のくせで僕と言ってしまった。
まぁいいや。丁寧語には僕が合うし。
黒木先輩は「ダメに決まっているだろ」と言って手首を掴まれる。
はぁ…俺はいつまでこの人に付き合わなければいけないのだろうか?
ふと、淡い初恋を思い出した。
小学校が一緒で仲が良かった奴だ。
…男が男を好きになったら悪いだろうか?
そんな疑問をずっと抱きながら生きて来た。
その友達は普通の公立の中学に入ったから話す事が減った。
「黒木先輩は恋をした事はありますか?」
そう聞いた瞬間、彼は振り返り「恋とはなんだ?」と聞き返された。
仕方なく「そばにずっと一緒に居たいと思う事ですかね」と答える。
すると黒木先輩は「使い魔よりも凄いのか?」と聞いて来る。
「人それぞれですかね」と俺は答える。
黒木先輩は見た目はとてもカッコいい。
だが、口調が面白かったり世間知らずであるという事を今日、知った。
結局、帰る時間になるまで黒木先輩とくだらない会話をして終わった。
校門に向かっていると黒木先輩が「お前は今日から俺の使い魔だ」と言った。
は?と彼を見つめると「嫌か?」と寂しそうに聞いて来る。
「別に、いいですけど」と答えるとパッと嬉しそうに笑っている。
不意打ちの笑顔に不覚にもキュンとしてしまった俺はバカだ。
昔からすぐに人を好きになってしまう癖がある。
家族にも軽いとなんども言われて育った。
ふと頭の上に黒木先輩の大きな手が乗っていた。
驚いて彼を見ると「可愛いな」と呟くように彼が零した。
は?はぁ⁉今度は何なんだ!
彼が「家まで送ろう」と言ってくれる。
一瞬、断ろうと思ったが断わっても着いて来そうだと思い止めた。
「黒木先輩。悩みは解決したんですか?」
そう俺が聞いた瞬間「あぁ。お前が居てくれたからな」と彼は答える。
罪な男と心の中で呟きながら「それは良かったですね」と俺は平然と言う。
照れてなんかいないんだからな!
黒木先輩が「使い魔なのだから我の事は一輝様と呼んでくれ」と言い出す。
溜息を吐きながら「一輝先輩」と俺は答える。
様なんて絶対、付けないんだからな!
他愛もない話をしていたらもう家に着いていた。
もう五時半かと心の中で驚いている。
「一輝先輩。今日は送って頂きありがとうございました」
そう言った俺に彼はフッと笑い片手を上げて帰って行った。
カッコつけかよ‼
でも、まぁ一輝先輩は悪い人では無さそうだったな。変人だけど!
家に帰ると兄さんと空が心配そうに話しかけてきたのだった。
それと親友の楓真は明日からはまた一緒に行ける事になった。
一輝先輩の事を思い出しながら俺は眠りについた。
あんたはトモダチが出来なくて悩んだことはあるか?
俺はある!
っていうか今も…?
あんたの悩みもよければ聞かせてな!